野球とフィギュアの競技人口

 【2月20日】

 僕の通った中学、高校の運動会では「クラブ対抗リレー」があった。優勝争いは決まって野球部とサッカー部。サッカー部だった僕は「今年は野球部に勝つぞ」と息巻いていたことを思い出す。陸上部にも速い子はいたけれど、学年で短距離を競うと野球部とサッカー部が上位を独占。4人で対抗するリレーは総合力で陸上部に勝ってしまう。何を言いたいか。僕らの時代は身体能力の高い子は大半が野球かサッカーをやっていたということ。これはおそらくその世代の競技人口の多さに起因する。 金本知憲が「運動できるヤツは野球部よ。俺らの時代はサッカーじゃなかったな」と振り返るように、プロ野球人気が絶頂だった「昭和」はそんな流れがあった。では、今の時代はどうだろう…。

 この日は朝から宜野座のメイン球場で野手が一塁に集められ、盗塁へのアプローチに時間が割かれていた。馬場皐輔がクイックで投球し、梅野隆太郎ら捕手陣は強肩を競うように二塁へ送球。走者はスタートもさることながら、白線を引いた一塁から二塁へ、いかに最短で到達できるか。そんな試みが繰り返されていた。

 江越大賀、植田海、島田海吏…高山俊も速い。当然ながら皆、身体能力が高い。特に島田にいたっては中学3年で出場したジュニア五輪100メートルであの桐生祥秀に先着した経歴を持つ。この光景を見ていると、「野球人」の運動神経には改めて惚れ惚れしてしまう。

 実は、近年ジュニア世代の野球人口減少を嘆く高校野球関係者が少なくない。少子化で絶対数が減っているとはいえ、他競技に流れる傾向も多分にあるそうだ。

 当連載では連日フィギュアスケートの話題に触れている。偉そうに「羽生結弦が…」なんて書いているが、正直スケートには疎い。でも爆発的な人気だから、やはり注目してしまう。これからは野球人口がフィギュアに食われる??実はそんな心配もしていたり…。

 ジュニア世代のスケート人口が気になったので少し調べてみた。

 参加資格が13歳から19歳までの全国大会「全日本フィギュアスケートジュニア選手権」は、例えば昨年のエントリー数は東京予選の男子で5人。近畿予選で11人。そこで勝ち上がった30人で日本一を争うシステムだ。スケートリンクや指導者の数がまだまだ追いつかず、羽生らの活躍で競技人口が増加傾向とはいえ、急増まではいかないという。仮に競技人口が野球並みになれば……羽生クラスの天才が沢山生まれるかもしれない。 ひるがえって「野球人口」を考えてみると、昨夏の甲子園では花咲徳栄が全国3839校の頂点に立ったわけだ。これほど大規模な10代の競技大会は世界中どこを探してもない。そういう意味ではジュニア世代に世界一過酷なサバイバルを乗り越えてきたのが日本のプロ野球選手ということになる。野球が発展するためには、現世代のプロ選手が魅力を体現していくしかないし、僕らはもっともっとその魅力を世間に伝えていく必要があると感じる。  =敬称略=

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