プラス1122人の条件

 【2月4日】

 小雨の宜野座、そのスタンドを彩る七色の雨がっぱ…。ここにいると野球人気の陰りなんて、まったく感じられない。とくに土日は人口6000人に満たない小村とは思えない人だかり。年々拡張される駐車スペースにひしめくレンタカーの往来…。今更ながら阪神という球団は幸せだなと感じる。

 ここ数年カープ人気が凄い。キャンプ地は日南も沖縄も虎に負けない熱気がある。けれど、僕が担当した90年代は特に沖縄市コザのキャンプ地は閑散としていた。当時赤ヘルの主軸だった金本知憲が練習の合間、僕ら取材陣におどけて言っていたことを思い出す。

 「新聞にキャンプ地の観客数載るよな。あれ、テキトーだろ?絶対、数えてないわ。きょうは何人にするん?ほらあそこ、外野席にいる犬2匹も数に入れといてよ」

 じゃ、犬を入れて100人!いや、ちょっとサバ読み過ぎか…。

 そんな良き時代(?)を経験してきた金本だからなおさら、阪神人気にありがたみを感じている。

 第1クール最終日、昼前に「かりゆしホテルズボールパーク宜野座」(今年からこれが球場の正式名称)の監督室にスーツ姿の来客があった。正確には来「客」ではないか…。昨季まで阪神球団常務だった粟井一夫が大阪から金本を激励(!)にやってきたのだ。

 粟井「今年も頼みますよ」

 金本「はい、頑張ります」

 粟井「そうそう。今年は去年より1試合少ないですからね…」

 金本「あまりプレッシャーかけないでくださいよ~(笑)」

 和やかに、二人の間でそんな感じのやり取りがあったようだ。

 粟井は昨年末の人事異動で電鉄本社(親会社)へ戻り、現在はスポーツ・エンタテインメント事業本部で責任ある立場にいる。今回は諸々の業務で来沖したそうだが「明日、朝から会議やから」と、夕方の便で慌ただしく帰阪した。

 昨年まで球団の営業部門を統括していた粟井が「今年も!」と金本に切願したのは年間の観客動員数である。17年シーズンは阪神がセ・パ12球団で唯一、主催試合で300万人を突破。7年ぶりの大台で、295万8890人だった巨人(動員数2位)を上回った。

 「シーズンシートの売り上げが順調でね。去年凄く良かったんやけど、この時期で比べると今年は去年より更に4%ほど良いんよ」

 粟井は2年連続の大台に自信ありげだ。ただし…今季は注釈が必要になる。実は昨季より主催が1試合少ないのだ。17年は主催72試合目の甲子園最終戦で3万5748人を集め、計303万4626人。仮に71試合だったら299万8878人…大台までわずか1122人届かなかったことになる。

 「去年がそうだったけど、スタートダッシュが良かったら数字は伸びる…。監督に数字(お金)の話ばっかりして悪いことしたかな(笑)。確かに1試合の差は大きい。全てうまくいかないときついよ。でも、300万人いくで!」

 粟井の悲願。金本に託した大台突破の条件はもちろん…いうまでもない。=敬称略=

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス