大和が18歳の大和に伝えたい事

 【12月4日】

 はれやかだった。キラキラ輝いていた。タイガースの新入団選手たちが大阪の高級ホテルで登壇した午後1時半ごろ。僕は横浜でブルーのタテジマに袖を通す大和にカメラを向けていた。関内駅近くの球団事務所で1時から始まったDeNA入団会見。ハマの番記者から古巣について聞かれた大和は「もう、敵ですから…」。決意を込めて、はっきりそう語った。

 あらかじめ、大和には伝えていた。4日、横浜へ行くから、と。会見場に入ってきた大和とすぐに目が合うと、何だかこっちが緊張した。決意表明、質疑応答、フォトセッション…。同席したGMの高田繁は「ウチは彼に何度も安打性をアウトにされた。本人は守備だけでいいとは思ってないでしょうけど、2割5分打ってくれれば十分価値のある選手」と語った。

 阪神に限らず、新入団会見は年に一度の大きなイベントである。かぶるか~とは思ったが、迷わず横浜へ行こうと決めた。FA宣言し、移籍を決めた大和の言葉は阪神広報を通じて伝わってきたが、直接本人に聞いておきたいことがあった。会見後、大和が所用を済ませるのを待って、車を駐めた横浜スタジアムまで一緒に歩いた。

 「この期間は正直…やっぱり、辛かったです。毎日、気持ちは行ったり、来たりでしたから。残ったほうがいいのか、出たほうがいいのか…その繰り返しでした。12年間の思いというのは…なんだろう…。すごく思い入れもあるだけに、そんなに簡単には判断できないし、簡単には決められないという気持ちがあったので…。本当にいろんな葛藤がありました」

 チームメートや首脳陣、球団スタッフ、阪神ファン、そして家族…。苦悩が過ぎて、心身のバランスを失いかけたこともあった。

 「プロ野球選手は、輝ける時間というのが本当に少ないので…」

 残りの野球人生で最も輝ける場所。これが、尊く、大切な決断の理由だったことは察しがつく。

 05年12月8日の新入団会見…当時、背番号66でプロ入りした18歳は1カ月前に30歳を迎えた。大和に聞いてみた。もし今、12年前の自分に何か伝えることができるとすれば掛けたい言葉はあるか…。

 「ありますね。とにかく、できる限り練習を積んで、早いうちに1軍に上がること、そこで1軍に定着して、それを絶対に逃すなよと言ってあげたいです。実際、僕は何度も逃してきたので。そこで掴んでおけば、色々と考えることも少なかっただろうし…。12年前の自分にそれは言ってあげたい」

 関内の道すがら、熱心なDeNAファンから写真撮影をせがまれた。快く応じていると、隣を歩くまだ幼い長男はハマスタのポスターを見つけ、「パパ!」と呼び掛ける。決断に時間はかかったが、大和はもう横浜の人間である。

 「一緒に野球をやってきた仲間は永遠に仲間です。ただ、試合になれば人を変えてチームが勝つためにやる。そこの気持ちの切り替えだけはしっかりやります」。大和が輝いて甲子園にがい旋する日を楽しみに待ちたい。=敬称略=

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