与し「難い」チーム

 【9月21日】

 マツダスタジアムで何人ものカープ関係者、選手から声を掛けられた。「きょうから、ウチを取材するんですよね」。確かに昨日の当コラムで書かせてもらった。しばらくカープを追いたいと思っている、と。ただ、カープ1軍の本隊にベッタリ、というつもりはない。取材先は2軍であったり、或いは、大野のカープ練習場であったり…。昔世話になった広島の治療院を取材するかもしれない。

 長い間勝てなかったカープが「黄金時代」を築こうとしている。僕が広島に駐在した90年代後半だって、名だたる選手がいた。打線の迫力だけでいえば、今のカープ以上かもしれない。でも、勝てなかった。今、なぜこんなに勝てるようになったのか。その根拠を追っ掛けてみたくなったのだ。

 試合前、カープOBの大野豊と会った。こちらが「おめでとうございます」と声を掛けると、少し返事に困ったように「2位、おめでとう」と返してくれた。雑談レベルだけど、大野は話していた。「カープはベイスターズに分が悪いから…」。CSファイナルステージの話である。DeNAが巨人をしのいで3位に入り、CSで勝ち抜いてくれば厄介…そんなニュアンスだ。では、カープにとって阪神は「与(くみ)し易(やす)い」のか。大野は「どうだろう」と笑っていた。カープのベンチ裏で取材してみると、内野守備走塁コーチの玉木朋孝は「いえいえ、阪神は嫌ですよ」と言った。果たして玉木の言葉は本音だろうか。

 この夜、阪神はカープとの全日程を逆転勝利で終えた。それでもここマツダでは3勝8敗1分けである。虎がCSで勝ち上がれば、カープは「イヤな相手がきた」と思ってくれるのか。与し易いか、そうでないか…。敵陣に、与し“難い”と思わせるモノとは何か。 打撃コーチの東出輝裕に聞いてみた。自慢の強力打線を挙げるかと思いきや、違った。「そりゃ足だと思います。ウチの選手、見てください。みんな、走れるでしょ」。逆転のカープ-。今年の勝ち方を象徴する呼称である。41回の逆転勝利はダントツでセ・リーグ最多。終盤に「まくる」カープ…その原動力はセ最強の「打」というより「足」だと、東出は語る。

 「終盤に出てくるような、相手の(リリーフ)投手から、ガンガン打って点取れます?そこの考え方だと思うんですよ」。各球団、「逃げ切りの方程式」をシーズン中に固めていく。今年の阪神なら桑原謙太朗やラファエル・ドリスらがそうだが、カープは強力なリリーフ陣を“打ち崩してやろう”とは考えていなかった。「そこで(鈴木)誠也とかがバーンと大きいのを打つこともあるけど、それはラッキー。簡単に打てない中で1点を取りにいく野球をできるかどうか」。東出はそう言う。

 試合後の優勝セレモニーでカープ監督の緒方孝市は胸を張った。「選手はカープの目指す野球をやってくれました」。ちなみに…カープの盗塁数108は圧倒的な数字である。なぜこれだけ走れたのか。取材を続けたい。=敬称略=

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