反攻の秋に向け…

 DeNA戦の3つ目は誰が投げるのか。「松田遼馬」と聞いて驚いたファンも多かったと思う。リリーフが持ち場のプロ6年目にとって初の先発マウンドである。先発ローテの台所事情が厳しくなったので、場当たり的な起用?僕が取材した限り、そうではない。

 藤浪晋太郎がウエスタン・リーグ広島戦(倉敷)で先発した10日の夜、試合前に本紙の虎番記者がこんなことを話していた。「もしこの試合で藤浪が思うような結果を残せなければ、上のローテーションはどうなるんでしょう」。このコラムでも触れたように、1軍復帰をかけた藤浪の投球には内容が伴っていた。だから、問題なく今週の広島戦(京セラドーム)での戦列復帰が決まったわけだが、仮に倉敷で崩れていれば?当然ながら金本知憲ら首脳陣は早々にシミュレーションを済ませていた。

 「遼馬でいきましょう」

 投手コーチの香田勲男は松田を推薦し、金本も同意した。翌日は月曜だからリリーフ陣もつぎ込める。そんな算段で臨んだが、結果は2回4安打3失点。アンラッキーも重なった登板は虎番の原稿を読んでもらうとして…本人にとっては悔しいマウンドになってしまった。

 試合前、横浜スタジアムのベンチで球団常務の谷本修は話していた。「松田は逆境に強いピッチャーですから」。その通りである。記憶に新しいのは5日のヤクルト戦。右足の張りで緊急降板した秋山拓巳に代わって好救援し、今季初勝利。さらに遡れば、あの9点差逆転勝利の広島戦も2番手は松田だった。あれはルーキー福永春吾が4回10安打6失点と炎上した後を受けたマウンド。五回は3失点したものの、六回は粘投で無安打に封じ、歴史的大逆転を呼びこんだ。そんな「逆境に強い遼馬」で3タテをもくろんだが、なかなか思うようにはいかない。

 序盤から劣勢を強いられると、つい試合中も相手方の戦況が気になってしまう。カープは?また、勝っとる…。谷本は「今年は例年と違って8月反攻といきたいですよね」と、明日からの広島戦(京セラD)を見据えたが、どうやらカープの新星が手ごわそうだ。この夜、巨人から主導権を奪ったのは西川龍馬の一撃だ。金本が「西川…あいつはいいものを持っとるよ」と警戒していた2年目のスラッガーが本領発揮。あっちの龍馬は、阿部慎之助のメモリアル試合で存在感ありありだったとか…。

 夏場に失速する虎。ここ数年、ファンの方はそんなイメージをお持ちかもしれない。確かに昨季も8月は負け越したけれど、記録を確認すると、阪神は最近10シーズン、8月に勝ち越したシーズンは6度あり、悪いとも言えない。それより、問題は秋である。ここ10シーズン、9月に月間の勝ち越しを決めたのは、09年のたった1度しかないのだ。ロードを終え、ホームに帰る秋に勝てない…虎。だから、余計に思ってしまう。8月はできるだけ勝っておこう、と。

 これで8月は7勝4敗1分け。カープとのゲーム差は再び8・5に開いた。反攻の秋へ、逆境に強い虎になれ…。=敬称略=

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