元気ハツラツ!

 【8月4日】

 朝8時過ぎの新幹線で広島から帰ってきた。新神戸から三ノ宮で乗り継ぎ、高槻行きの普通列車で甲子園口へ。京セラドームへ行く前にウエスタンの取材で鳴尾浜へ向かったのだが、JR車中で何だか気になる女性とでくわした。

 見たところ、30代前半のキャリアウーマン。向かいの座席で右手に綾鷹(あやたか=緑茶)左手にオロナミンC…。二つを交互に飲んでいる。喉が渇いているならお茶だけでいいし、疲れているなら…。昔から人を観察してしまうタチで、なんでやろ?と考え出したらずっと気になってしまう。ググってみると、オロナミンCは「疲れている部下に差し入れしたい栄養ドリンク」第3位(ジャストシステム調査)なのだとか。なんじゃそりゃ…と思いながら、見知らぬ女性に取材などできないので、気になったまま鳴尾浜で藤浪晋太郎の登板を見ることになった。

 気になったら、まず取材する。ここでは気兼ねなく聞ける…。この日、藤浪はウエスタン中日戦に先発し、5回を投げた。本塁打も浴び、2失点(自責1)。それでも内容はこれまでより充実していた。いつも技術的なことばかり聞きたくなるけれど、それ以上に気になったことをぶつけてみた。

 ひと月前と比べて、投げているときの顔つきが明らかに変わったと思うのだけど、どうかな?

 自分が質問しておいて書くのもなんだけど、あまり褒められた取材じゃない。投げているときの表情なんて、本人が分かるはずもないのだから…。帰路へつく藤浪の顔を見ながらそんなふうに考えていると、彼はこう返してくれた。

 「ああ…。そうですかね。以前と比べて気持ち的な余裕ができているので、きょうは、それが顔に出ていたのかもしれません」

 僕は藤浪が出場登録を抹消されてから、このコラムで勝手なことを書かせてもらってきた。技術のこと、メンタルのこと…。仮に制球の乱れが心の病に起因しているとすれば、少し時間がかかるかもしれない。そう感じていたので、彼の口から「気持ち的な余裕」という言葉が出てきて安心した。

 くしくも、育成コーチ福原忍が語ったことが裏付けになった。

 「いい顔で投げていたでしょ。投げているときの顔が変わってきましたから。キャッチボールをしていても以前とは明らかにボールが違う。捕っていて、しっかりと向かってくる感覚というものがあるので…。自信を取り戻せば、もう大丈夫かな、と思いますよ」

 この期間、藤浪を指導してきた福原は、当初「(復調まで)どれくらい時間がかかるか今はまだ分かりません」と話していたが、この日の登板後は手応えがあったのだろう。何だか嬉しそうだった。

 5月末の出場登録抹消から70日が経った。福原にとっては、どこか「疲れている部下」のように映っていた背番号19に心の「余裕」が戻ってきた。まだまだ、元気ハツラツ…とまではいかなくとも、一番大切なもの…「自信」を取り戻しつつある藤浪を見るのは、僕も嬉しい。

=敬称略=

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