内野手阿部の脅威

 【4月22日】

 巨人の4番が伝統の一戦をお休みした。先発オーダーを見て「え?」と思った。打率・371、5本塁打、23打点の阿部慎之助が先発オーダーから消えた。試合前の打撃練習も回避していたので、デイリースポーツのG担当に確認したところ「休養だそうです」という。福留孝介がそうであるように、長丁場でベテランが本領発揮するための起用法はチームそれぞれに思慮がうかがえる。しかし、深刻な故障のない阿部がベンチに座っていてくれる。助かるなあ…。これが紛れもない阪神サイドの本音である。

 「そりゃ全然、違う。ホームランも打点も得点圏(打率・455)もチームで一番数字のいいバッターなわけだから。(投手の)右左も関係ない選手だし、いなければもちろん怖さは減る。巨人側からすれば、こういう試合を取ればムードは良くなると思う。村田も使えるし、チームとして機能していく形になるでしょ。だから、こちらとしては逆に機能させないようにしないといけない。今後もあると思うけど、阿部のいない試合を勝っておくのは大事だと思う」

 試合後、作戦兼バッテリーコーチの矢野燿大はそう語った。矢野の言葉を借りれば、巨人にとって「飛車落ち」で取ったこの日の1勝はただの1勝じゃない。一方阪神にとっては宿敵を勢いづかせる1敗。そう捉えることもできる。

 小林誠司が正捕手を担い、阿部が一塁に専念するようになって2年目。今季の背番号10は打撃絶好調でチームを支えている。捕手時代から阿部の猛打に虎は何度も泣かされてきた。阪神戦の通算成績は打率・287、52本塁打、164打点。不安をあおるわけじゃないけれど、司令塔の重荷が取れた阿部の脅威は今後間違いなく増していく。選手としては下り坂を迎えるアラフォー、38歳。それでもそう書き切ってしまうのは、こんな証言を聞いたから…でもある。

 2013年、夏のこと。札幌ドームで開催されたオールスター第1戦、セ・リーグのベンチ内で阪神の藤井彰人と阿部はこんな雑談を交わしたという。

 藤井「捕手を10だとしたら、一塁はどんなものなの?」

 阿部「1…ないですね」

 これは攻守における負担の話。正捕手だった同年、阿部は一塁手として5試合出場していた。一塁どうこうではなく、捕手というポジションがそれだけ神経を費やし、過酷だということを阿部なりに表現したかったのだと思う。

 なるほど、そう考えれば梅野隆太郎の打撃不振もうなずける。23打席連続無安打の梅野について矢野は「そこまで(守備負担が打撃に)影響してないと思う」と復調を期待する。ただ、やはり梅野(・172)や小林誠司(・118)の低打率は正捕手の負担と無関係とは言えないようにも感じる。

 今季から阿部の登録は内野手になった。捕手復帰はもうない。9割超の負担(?)が完全に消えた阿部の攻撃力は破壊力を増す。だから、たとえ1試合でも鬼の居ぬ間に虎は勝っておかなければ…。=敬称略=

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