阪神・岡田監督の喜怒哀楽 パインアメの話題は「喜」「楽」 DeNA戦で「怒」「哀」のプレー【21】

 阪神の優勝マジックが「26」になった。「あれ」が現実味を帯びてきた。「まだまだ、普通にやるだけよ」と岡田彰布監督は繰り返す。喜怒哀楽に揺れた1週間だった。

 タイガースの監督は、一挙手一投足が大きな影響を与える。ネット時代になってなおさら、何げない言動が拡散してしまう。「あんなん、よう知らんよ」と苦笑いするしかない。

 広島に負けた翌日、デイリーの1面。ベンチでパインの形をした飴(あめ)を、口にする写真が大きく掲載された。岡田監督がこの飴を、特段好んでいたという記憶はわたしにはない。

 以前の阪神ベンチには、大きな缶に入ったのど飴が置かれていた。選手は好きなときに手を突っ込んで、口に放り込んだ。「コロナ禍よ。いまは個包装してないとあかんからなあ」。岡田監督の言う理由で袋に入ったパイン型になった。

 「山ほど送って来たよ。新聞が製品名書くと、ものすごい宣伝になってしまうからなあ。おれはそんなつもりはないし、使っているもんとか何でも不用意に言われへんやん」

 ほかの理由も重なって実際、一部ではこの飴が売り切れたとか、ネットで話題になっている。特定の商品を宣伝するような使われ方は、岡田監督の意思ではない。

 飴玉の話題はそれでも喜怒哀楽の「喜」か「楽」の部類だろう。一方で「怒」と「哀」に属するプレーもあった。

 古代スポーツ、そして近代スポーツへとスポーツそのものの意義は時代とともに変化している。現代のスポーツでは政治や国家、そして人種の区別や差別につながるスポーツの利用は、断固として受け入れられない。

 加えて現代スポーツの骨格となる精神は「安全最優先」である。練習や指導も含めて、ましてや試合中の「危険なプレー」を許してはならない。ルールの解釈ではなく、精神やスタンスの問題だ。

ラグビーでは首から上へのタックルが一発退場になる。サッカーなら相手に飛びかかって倒せばレッドカード。柔道でも両足を刈るような技は禁止された。ボクシングは下半身へのパンチや、指で目を狙ったりできない。すべてのスポーツで危険な行為は禁止されている。

 高校野球ではクーリングタイムを設けた。プロ野球でも頭部への危険球は退場。本塁のクロスプレーでは捕手がベースを空け、体当たりのブロックはできない。すべてのスポーツの審判は、危険なプレーに対して厳しく対処することが求められている。

 「故意ではない」とか「互いに懸命なプレーをした」とかは関係ない。ましてやどちらが得か損かなど、考慮外である。ジャッジの原則として最優先すべきは「危険を避ける」ことだ。

 野球では本塁だけでなく、どのベースでも走塁線上を空けるようにするべきだ。送球を捕りに行く、あるいはタッチに行くときに完全に体がベースを塞(ふさ)ぐのなら、捕りに行ってはならない。ベース寸前でスライディング態勢の走者には、避けようがない。激突すれば大事故につながる。

 DeNA戦での盗塁判定。審判団は「ベースに触れていないからアウト」と説明した。岡田監督は厳しい表情で、審判団に説明を求めた。勝ち負け以前の問題だ。プロとして避けるべき危険なプレーを許してはいけない。

阪神側の意見書は理にかなっていた。受け取ったNPBも迅速に対応し、正面から受け止めた。一度は審判団との握手を拒否した岡田監督も、翌日には笑顔で手を握った。「怒」が「喜」に変わった。阪神の監督は、何かと大変だ。(特別顧問・改発博明)

 ◇改発 博明(かいはつ・ひろあき)デイリースポーツ特別顧問。1957年生まれ、兵庫県出身。80年にデイリースポーツに入社し、85年の阪神日本一をトラ番として取材。報道部長、編集局長を経て2016年から株式会社デイリースポーツ代表取締役社長を務め、今年2月に退任した。

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