阪神サヨナラ勝ち 負傷交代した仲間のために 満塁男・木浪が劇打「勝つことがやっぱりいい報告」
「阪神1-0オリックス」(6日、甲子園球場)
不測の事態に襲われた仲間のためにも負けられなかった。阪神は延長十回に木浪の適時打で今季2度目のサヨナラ勝ち。今季最多の貯金12とした。九回には頭部にライナーが直撃した石井が、担架で緊急搬送されるアクシデントがあった。選手にもファンにも動揺が広がる展開でつかんだ価値ある1勝。試合を決めたヒーローは「大智のために」と右腕を思いやると、聖地は大歓声に包まれた。
歓喜のウオーターシャワーを浴びながらも、喜びを大爆発とはいかなかった。木浪の頭の中にあったのは石井のこと。「いつもが10(の喜び)だったら、10までは絶対にいけない。病院に行ってるということなので、結果はいいようになることを願っています」。どうしても勝ちたかった。チームメートを思い、気持ちをバットに乗せた。
両軍無得点の延長十回1死満塁。目の前で坂本が申告敬遠され、自分に回ってきた。「もういくしかないって腹くくってたんで」。追い込まれたが、低めのボール球に食らいついた。一塁線を破って、自身2度目のサヨナラ打。びしょぬれになりながら、坂本や近本らと抱き合った。
両チームとも中盤まで安打すら出ない展開だった。そんな中、九回に広岡の強烈なライナーが石井の頭部を直撃。跳ね返った打球を必死で拾いに走ったのが木浪だった。右腕は担架で運ばれ、マウンド付近には心配そうに見守るナインの姿があった。
「目の前で当たっているところを見たので、本当に大丈夫かなっていう思いだった。勝つことがやっぱりいい報告だと思っているので、そこだけを考えてやってました」
常にチームのために自分ができることを考えている。小幡が復帰し、プロ2度目の三塁での先発出場も「自分の出るところでやるだけ」。だから石井の負傷交代にも報いたかった。「それまでにみんながつないでくれたので、それが自分の打てる原動力になった」。その人柄を知るからこそ、木浪を中心とした輪の中では自分のことのようにうれしそうな選手が何人もいた。
この日は「トラフェス」のイベントに親交のある、湘南乃風の若旦那も来場した。試合中には応援歌を熱唱して、背中を押してくれた。偶数打席の登場曲には若旦那の「愛してる」を使用。「(目の前で)本当に打てて良かった」。4打席目の快音で勝利を届けた。
チームは連勝で今季最多の貯金12。交流戦もソフトバンクとDeNAに並び、首位タイに躍り出た。「勝ったことが一番良かったんで、すごくホッとしました」。うまくいく日もあれば、いかない日もある。でも木浪の心は変わらない。勝利のために己ができることに全力を尽くす。
◆木浪、満塁で無類の勝負強さ 木浪がまたも満塁の場面で勝負強さを発揮した。この日のサヨナラ打で、19年のプロ1年目から満塁での打撃成績は63打数24安打55打点、打率.381と驚異的な数字をマークしている。また、自身のサヨナラ打は23年5月3日の中日戦以来。このときも無死満塁で打席に立ち、マルティネスの156キロ直球を右前にはじき返してチームの勝利を呼び込んだ。
◆阪神、今季2度目のサヨナラ勝ち 阪神は5月27日のDeNA戦(倉敷)に次いで今季2度目のサヨナラ勝ち。この時も両チーム無得点のまま延長戦に入り、十一回裏に糸原、近本の連打でチャンスをつくり、さらに申告敬遠で無死満塁となり、森下がフルカウントから四球を選んで押し出しで決勝点が入り接戦を制した。
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