【とらものがたり・大竹耕太郎投手編(3)】好循環生んだ感情の解放「投手のムードは大事だと思う」

 7回、近本の先制適時打で歓喜する大竹(中央)ら=5月27日
 マウンドで雄たけびを上げる大竹=11月2日
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 阪神選手の野球人生に迫る新企画「とらものがたり」。現役ドラフトで加入し、12勝を挙げて大ブレークを果たした大竹耕太郎投手(28)の第3回は、好循環を生んだ感情の解放にスポットを当てる。

  ◇  ◇

 マウンド上で喜怒哀楽を表現することについては、賛否両論の意見がある。今季の大竹は昨年までの感情を表に出さないスタイルではなく、ピンチなどで抑えた時にはガッツポーズを繰り出し、感情をむき出しにするようなシーンが多かった。

 「今までピッチャーって感情を出したらダメと固定概念が自分の中であったから。だけど、もちろん感情を出さないようにしようと思っていても心の内には感情があるわけで。それを、今年は表現しただけで思いは同じ」

 大竹の感情が色濃く表れたのは5月27日・巨人戦(甲子園)。自身に代打が送られた直後に近本の先制打が飛び出し、一塁ベンチ最前列で力強いガッツポーズを見せてほえた。後方のベンチに腰かけると、人目もはばからず大号泣した。

 ヒーローインタビューでも「一人はみんなのために、みんなは一人のためというか…。チームプレーを感じたので思わず泣きました」とコメントしたが、登板を重ねるごとに感じたことがある。

 「ちょっとデータを見てほしいんだよね」。それは援護率についてで、今年は4・87と高い数字だった。ソフトバンクで先発として回った19年は3・62。登板数の関係で単純比較はできないが21、22年は0・00だった。

 援護率向上には、投手の立ち居振る舞いも関わっているのでは、と考える。「意外とこういう部分も関係しているんじゃないかなと思うんだよね」。例えば自身の状態が明らかに悪い時や余裕がない時は、味方の守備にミスが生まれることがあり、調子が良い時、自信を持って投球する時は味方の好守につながる。その良いリズムのまま打線が得点するパターンも増えることで、援護率も向上する。

 中国春秋戦国時代の激動を描いた人気漫画で、映画化もされた「キングダム」を例に出し独自の意見を示す。

 「キングダムって作品を見てたら分かると思うんだけど、急に武将が出てきたら周囲の士気が高まるということがあって。それと同じ感覚のように、試合の中で選手がやりやすい雰囲気をつくるのは投手だし、投手のムードは大事だと思う」

 ガッツポーズ、雄たけびなどで良い雰囲気をナインに伝染させていく。来季もこのスタイルで戦うつもりだ。

 ◆援護率とは 投手がどれだけ打線の援護を受けたかを示す指標。登板中に味方打線が挙げた得点を、1試合あたり(9イニング)相当で表した数値。

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