「阪神タイガース４－１広島東洋カープ」（８日、甲子園球場）

　何度も苦しめられた甲子園の風が味方した。１点リードの二回。スコアボードの上にある球団旗はいつもの右から左ではなく、中堅方向へなびく。バックスクリーンの右に吸い込まれた打球を、しっかりと見届けた阪神・佐藤輝明内野手。ガッツポーズするでもない。淡々とダイヤモンドを一周する姿に貫禄が漂っていた。

　「いい風が吹いていたのでよかった」

　先頭で立った第１打席。左腕・床田が投じた真ん中付近への直球を完璧に捉えた。高々と舞い上がった打球は、失速することなくスタンドに到達。初回に先制ソロを放った森下とのアベック弾で貴重な追加点を奪った。

　３試合ぶりの１８号ソロは、今季の甲子園で自身１０本目。阪神の生え抜き左打者でシーズン甲子園２桁本塁打到達は、１９８５年の掛布雅之以来３８年ぶりの快挙だ。さらに入団３年間での通算６２本塁打は田淵幸一が記録した球団記録の６１本を超えた。

　確かな成長を示す若き主砲。右翼から左翼方向へ吹く甲子園の浜風は、左打者にとって難敵と言われる。それだけに「去年は（甲子園で）５本しか打てていない。その倍を打てたのはうれしい」と笑みを浮かべた。

　強打者らしい一発で新人から３年連続となる１００安打を達成した。同期の中野は、すでに１００安打に到達しており、これで新人コンビではプロ野球史上初の３年連続１００安打の快挙。低迷していた打棒は確かな手応えをつかみつつある。勝負の９月。佐藤輝のバットが火を噴き、歓喜へ向けてさらに勢いを加速させる。

　◆甲子園２桁弾　佐藤輝がシーズン甲子園２桁本塁打。阪神生え抜き左打者では８５年の掛布雅之（１７本）以来でラッキーゾーンが撤去された９２年以降では初。

　◆新人から３年連続１００安打　佐藤輝が１００安打。中野もすでに到達しており、ＮＰＢ史上初の同一球団２選手が新人から３年連続１００安打。