【阪神新人紹介】ドラフト1位・佐藤輝明【2】

 10月のドラフト会議で阪神から指名を受けた9選手の連載をお届けする。初回はドラフト1位・佐藤輝明内野手(21)=近大。プロへの扉を開くまでの道のりを振り返る。

  ◇  ◇

 二人三脚ならぬ“三人四脚”で取り組んだ陰の努力が、佐藤の礎を作った。それは甲東ブルーサンダースに所属していた小学4年。少年野球の練習以外でも打撃ができる方法はないかと考えた父・博信さんが、自宅でもできる特訓を編み出した。

 新聞紙を丸め、ガムテープで覆った特製球を作成。「家の中でカーテンをネット代わりにして、そのボールをトスする打撃練習をやり始めました」。100球から200球、博信さんと妻の晶子さんが交代でトス役を務める。小学6年時に右肘痛を負うまで毎日、佐藤は欠かさずティー打撃を行った。

 なぜ、この練習が生まれたのか。宿敵のバットマンの考えを、博信さんが本で触れたことがきっかけだった。元巨人で現役時代、1696安打を刻んだ篠塚和典氏がこのように提言していたという。

 「どんなボールでも小さい頃にボールを捉える練習をしておくことが大事」

 博信さんは、同じく巨人で名球会入りを果たした阿部慎之助(現2軍監督)を過去に指導した人物と直接話した際も同様の助言を受けたという。「素振りだけではどうしても限界があるというか、よくないのではと思っていました」。一つでも上のレベルを目指すために、親子による連日の特訓は続いた。

 自宅での秘密の時間が実を結び、「ボール(打球)の質がどんどん良くなっている」と親子で実感。そこから大きな成長曲線を描いていく佐藤は、小学6年の時に公式戦で23本塁打を放つなど、大器の片りんを感じさせるほどの打者となった。

 幼い頃から佐藤の胸に強く刻まれる言葉がある。「克己(こっき)」。自分の欲望、邪念に打ち勝つことを意味するが、元々、柔道家として講道館杯を優勝した博信さんだからこそ、伝えられる重みのある言葉だ。

 「普段から自分に負けていたら、日常生活もうまくいかず勝負どころでも負けてしまう。自分のやるべきことをやる、自分に勝つために『克己』という言葉を言い続けてきました」

 佐藤がプロの世界へ飛び込もうとしている。まだ見ぬプロ野球、必ず『己』との戦いを強いられる時が来るはずだ。無心で白球を追いかけた日々がある。野球の上達を目指す中でサポートしてくれた家族の支え、陰の努力も忘れない。克己心でプロの荒波に立ち向かう。

 ◆佐藤 輝明(さとう・てるあき)1999年3月13日生まれ、21歳。兵庫県西宮市出身。187センチ、94キロ。右投げ左打ち。内野手。小学1年から軟式の甲東ブルーサンダースで野球を始める。小学6年でタイガースジュニアに選出。甲陵中では軟式野球部、仁川学院では硬式野球部に所属も甲子園出場経験はなし。近大進学後は1年春からリーグ戦に出場し、18年春に外野手でベストナイン。同年に大学日本代表に選出。19年春は三塁手でベストナイン。20年秋には最優秀選手。

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