新井良太が引退 ファンの記憶刻んだ“兄弟鷹” 10日最後の勇姿
阪神の新井良太内野手(34)が、今季限りで現役を引退することが9日、分かった。12年目の今季は若返りを図るチーム状況もあって、ここまでの1軍出場はわずか16試合で1安打。来季去就を熟考する中で、ユニホームを脱ぐ決断を下した。今後については未定だが、10日・中日戦が現役最後のユニホーム姿になる。近日中に正式発表され、11日にも会見を開く。
移り行く季節の中で現役生活の終止符を決めた。まだできる、もうできない…。熟考の末、新井良がレギュラーシーズン最終戦を前に引退を決断した。プロ12年目の34歳。開幕1軍入りした今季は、2度の抹消などでわずか16試合の出場。若返るチームの中、出場機会も減っていた。
記憶に残るプレーヤーだった。「新井の弟」として、2005年度の大学・社会人ドラフト4巡目で中日に入団。10年オフに水田との交換トレードで、兄・貴浩も在籍する阪神に移籍した。11年にプロ野球史上初めて同一年に同一チーム所属の兄弟でサヨナラ安打。翌12年には史上3組目の兄弟アベック本塁打も記録した。
13年には4番で開幕スタメン。自己最多の119試合に出場し、自己最高の14本塁打&51打点をマーク。「もう後がない」と背水覚悟で臨んだ今季は、なかなか出場機会に恵まれなかった。それでも4月22日には出場選手登録が8年に達し、国内FA権の資格取得条件を満たした。
長距離打者であり、ムードメーカー。歴代監督が「良太の声も戦力」と評したように、懸命な姿でチームを鼓舞してきた。「俺はそういうプレースタイルだから。(試合に)出なくてもやることはあるよ」。今季は2軍生活が長かったが、安藤、狩野らと必死に練習に励んだ。若手のお手本になる姿で、生きざまを背中で伝えてきた。
幼き日、憧れたのはキング・カズこと三浦知良だった。9歳のときにJリーグが開幕。サッカーボールを追い掛けた少年は、中学入学と同時に野球に専念した。「野球をやれ」-。絶対的な存在だった兄の一言だ。それは父の夢でもあった。だが同時に、どこに行っても「新井弟」の看板は付いて回った。
広陵進学と同時に、兄が広島に入団。宿命との戦いでもあった。「活躍もしてないのに取材されて。辱めを受けたような気持ちで、当時は本当に嫌だった」。そんな色眼鏡は野球に取り組む姿勢、誰からも愛される人柄で変えた。「周りの人を大事にするんだ。運や、いい気が集まってくる」。兄の愛情も受けながら、懸命に生きたプロ人生だ。
10日・中日戦が現役最終戦で、11日にも引退会見を開く予定だ。記録以上に、ファンの記憶に刻んだ12年間。静かに、だが潔く、幕を下ろす。新井良太として-。