4番が決めた!ゴメス執念の千金打

 「阪神1-0巨人」(20日、甲子園)

 最終回、守備固めで退いた阪神・ゴメスは強まった雨脚をベンチから眺めていた。藤浪が完封勝利を決めるとポンと手をたたき、ぬかるんだグラウンドに飛び出した。「フジナミがナイスピッチングをしていたからね。打てたことは良かったよ」。試合後、両軍唯一のスコアを刻んだ打の殊勲者に笑顔はなかった。

 4番が均衡を破った。西岡、マートンの連打で整った六回のお膳立て。カウント1-1から外角低めのチェンジアップに腕を伸ばし、体勢を崩しながら左翼へ引っ張った。

 「第1打席ではチャンスで打てなかったから、この打席ではランナーをかえすという仕事を果たせて良かった。ボール球だったかもしれないけどね…。ラッキーだったよ」

 初回1死一、二塁の先制機ではカウント2-2から外角のスライダーに空を切った。2度目の好機は同じようなコースを逃すまいと食らいついた。17日の中日戦で福谷から83打席ぶりに3号を放ったが、適時打となれば5日以来、11試合ぶりだ。値千金の決勝打ながら、控えめになる理由はそこにあった。

 ロッカーを美しく整頓するタイプではない。マートンのように大量のデータを駆使する緻密さもない…かもしれない。そんなラテン気質のドミニカンがこれだけは!と大切にしているフィーリングがある。

 「バットはメーカーの刻印を投手方向に見せずに構えるんだ。これは米国でプレーしている時代からずっとそうしている。技術的にどうこうはないよ。どう説明すればいいのか…そうやって持ったほうが感覚がいいんだ」

 チーム4戦ぶり適時打となった主砲の今季22打点目が巻き返しの号砲となるか。「首位とのゲーム差?まだ100試合以上残っているからね。1試合1試合、自分のできることをやっていくよ」。笑みを封印した4番が静かに逆襲を誓った。

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