新井どやっ!起死回生の代打同点2ラン

 「オリックス6‐7阪神」(21日、京セラ)

 阪神・新井がギュッと奥歯をかんで、初球をたたきつぶした。目力のこもった表情でフルスイングしたバットを放り投げた。インパクトの瞬間、打球の行方を追う必要はなくなった。

 お兄ちゃんが起死回生のアーチを架けた。3点を追う六回。敵失に安打を絡め、好機が広がった。1死一、三塁から坂の遊ゴロの間に1点を返し、2点差。2死一塁で代打のコールを受けた新井が、比嘉の変化球を左翼席へたたきこんだ。

 「どんどん振っていこうと思っていた。積極的にいかないと、気付いたら終わっている。代打は難しいから」

 阪神移籍後初の代打本塁打が試合を振り出しに戻し、壮絶な再逆転劇の起点になった。

 開幕から46試合。ようやく2号を放った新井は心の中でまだレギュラー争いをしている。全試合ベンチスタートでも、だ。ゲームに出ない分、試合前の練習で「動く時間」を意識的に増やしたが、変わったことと言えば、それくらいだという。

 「これから代打に専念する気持ちなら、いろいろやり方はある。1打席にかけるという意味で、もっとバットを短く持つ方法だってある。でも、これからもそうするつもりはない。いろいろ言う人がいるかもしれないけど、僕は僕のやり方で結果を残したい」

 桧山引退後、関本とともに「代打の神様」役を担うが、新井は主砲だったかつてのスタイルを貫く。そして和田監督はその気概を感じている。「去年までとポジションが違うけど、その分、1打席にかける思いがスイングに見て取れる」と、新井の気持ちを推し量るようにたたえた。

 試合後、ヒーローインタビューを待つ左翼席から「新井コール」が鳴りやまなかった。虎党はこの夜の殊勲者を知っていた。「うれしいですね」。新井は照れくさそうに笑って、球場を後にした。

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