奨学金を借りず、実家から国公立大に通った同期 「そういう選択肢もあったのか」地方から上京し私大へ進学した20代会社員の後悔【FPが解説】

奨学金を返済しながら働く社会人は少なくありません。社会人5年目のAさん(20代)は、地方から上京し、私立大学に進学しました。

進学先を決めた高校3年生の春、両親からは「行きたいところに行っていいから」とだけ言われ、学費の総額や家計の状況について具体的な話をされた記憶はありません。奨学金を借りることも、当たり前の手続きの1つとして進めただけでした。

社会人になり毎月の返済が始まってから、職場の同期が「実家から国公立に通っていたから、奨学金は借りていない」と話しているのを聞き、Aさんは初めて「そういう選択肢もあったのか」と気づいたといいます。このときから「もっと早く知っていれば、進路の選び方も変わっていたかもしれない」という思いは募り、返済を続ける今も消えません。

このように、「奨学金は自己責任」という一般論と、「そもそも選択肢が示されなかった」という当事者の実感には、どのようなズレがあるのでしょうか。また奨学金以外でも学費を軽減させる方法はあるのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの前田菜緒さんに聞きました。

■収入の確立と、返還の仕組みを知ることが後悔を防ぐ 

-進学の選択肢を十分に示されないまま奨学金を借りることになった場合、後からできることはあるのでしょうか。

当然と言えば当然ですが、奨学金を返還しながらでも生活が成り立つ仕事に就くことです。選択肢を示されたかどうかにかかわらずですが、自分の収入を確立させることが最も重要です。この点、Aさんは問題ないかと思います。

その上で、返還の仕組みや支援制度を返還前に知っておくことも大切です。

奨学金には、利率が変わらない「利率固定方式」と、おおむね5年ごとに利率が見直される「利率見直し方式」があります。それぞれの特徴を理解した上で選択し、初任給から毎月いくら返還するのかイメージしておくと計画的に返還できます。

また、就職先の企業が本人に代わって返還を支援する「代理返還」を導入する企業や若者の地方定着を目的とした地方公共団体の奨学金返還支援制度もあります。「選べなかった」過去は変えられませんが、無理のない返還計画があれば、自分の生活を守りながら責任を持って返還していくことができます。 

-将来子どもの進学費用で同じ思いをさせないために、親が今からできる準備にはどのようなものがあるでしょうか。

早い段階から、教育費を全額準備しておくことです。大学や専門学校などに進学するなら、学校によって金額は異なりますが、目安は500万円です。自宅外通学の場合はここに仕送りが上乗せされます。多額ですから、時間をかけて無理なく貯めていきましょう。

また、進路を決める際は、学費も合わせて確認することが大切です。奨学金を利用することになるなら、制度の内容を調べ、いくら借りるのか、卒業後に毎月いくら返還するのかを親子で確認することです。返還まで見通して進路を考えることで、親子ともに納得した選択につながります。

ー奨学金以外に活用できる教育費の準備・軽減方法にはどのようなものがありますか。

国の「高等教育の修学支援新制度」では授業料や入学金の減免と、返還不要の給付型奨学金をセットで受けられます。対象者は住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯です。一方、2025年度からはじまった多子世帯を対象とした授業料と入学金の減免制度には所得制限はありません。

家庭での備えとしては、学資保険でコツコツ積み立てる方法や、NISAを使って長期で積み立てる方法などがあります。NISAは運用益が出れば、少ない元本で目標額を準備できる可能性があり、家計の負担軽減にもつながります。児童手当も活用しながら、子どもが生まれたら早めに積立を始めるとよいでしょう。

◆前田菜緒(まえだ・なお) ファイナンシャルプランナー(CFP・1級FP技能士)

大手保険代理店での勤務を経て独立し、子育て世帯向けに住宅購入、教育費準備、資産形成を中心としたライフプラン相談を行う。自身の子育て経験から、子育て世帯の不安や負担に寄り添いたいという想いを大切にし、子どもが寝てからでも相談できる体制を整えている。家計の黒字化支援を得意とし、「経済的理由で進学をあきらめる子をなくしたい」という想いのもと、離婚に迷っている人のライフプラン相談にも取り組んでいる。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)

(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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