「元気なうちに旅行や好きなことを」 同級生の訃報に接した65歳女性 船旅パンフを取り寄せたものの…老後が不安で貯金を使えません【FPが解説】

65歳女性のAさんは昨年、勤めていた会社を定年退職しました。若いころから堅実な性格で、家計簿を欠かさずつけ、旅行も国内の格安ツアーを選んできました。投資にも早くから取り組み、老後資金はある程度貯まっています。

そんなある日、高校時代の同級生の訃報が届き、Aさんは「私も死が近い年齢なのか…」と強い衝撃を受けました。そして葬儀の帰り道、「元気に旅行したり、好きなことをしたりできる時間は、思っているより短いのかもしれない」と感じるようになりました。

その日を境に、海外旅行や船旅などのパンフレットに興味をもちましたが、いざ申し込もうとすると「こんなお金の使い方をして、将来困らないだろうか」という不安が先立ち、結局申し込みボタンを押せずにいます。

65歳から老後資金を楽しみのために使うことは、家計面で本当に問題ないのでしょうか。貯めたお金を守りながら人生を楽しむための考え方について、ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太さんに聞きました。

■老後、後悔しないお金の使い方とは

--65歳から「老後資金を楽しみに使う」ことは、家計面で問題ないのでしょうか。

65歳は年金の受給開始と重なる方も多く、収入の見通しが立てやすい時期でもあるため、必要なお金を分けて確保できているなら、残りをそのまま使わずにいるのはもったいないかもしれません。

ただし、思ったより長生きした場合や、物価上昇による生活費の増加も踏まえておく必要があるため、使う金額は一度に決めきるのではなく、時々見直していくと安心です。

--老後資金を使ってよい金額は、どのように考えればよいですか。

今後の生活費と、医療や介護など不測の事態に備える予備費を試算し、それ以外を使ってよいお金として考える方法があります。

目安として、平均余命から今後の生活年数を見積もり、生活費や予備費を差し引いた金額を残りの年数で割ってみましょう。1年あたりに使える金額のイメージがつかみやすくなりますよ。

さらに、退職金や年金の受給時期・金額を確認しておくと、資産の減り方をより具体的にイメージできます。

--旅行や趣味にお金を使う場合、優先順位はどう決めればよいでしょうか。

まずは、体力や気力を使うものを優先するのがおすすめです。海外旅行や登山のように身体を動かす活動は、年齢を重ねるにつれて難しくなることもあるため、今だからこそ楽しめることを先に計画してみてください。

読書や園芸のように、体力の影響を受けにくい趣味は、少し後回しにしても楽しむことができます。やりたいことを紙に書き出して、体が元気なうちにしかできない順に並べてみると、「今、何にお金と時間を使いたいか」が見えてくるかもしれません。 

--老後にお金を使いすぎて後悔しないために、事前に確認しておきたいことはありますか。

生活費や医療・介護の予備費として絶対に手をつけないお金を先に決めておくことです。その線引きさえできていれば、残りのお金は思い切って楽しみのために使いやすくなります。

また、年金の受給額や退職金の使い道を早めに確認しておくと、収入の見通しが立ち、不安を感じにくくなります。使いすぎが心配な場合は、旅行や趣味にあてる年間の予算をあらかじめ決めておくのもおすすめです。

守るところは守る、楽しむところは楽しむというメリハリをつけることが、後悔のない使い方につながります。 

◆伊藤亮太(いとう・りょうた) ファイナンシャルプランナー

慶應義塾大学大学院商学研究科経営学・会計学専攻を修了。在学中にCFPを取得する。その後、証券会社にて営業、経営企画、社長秘書、投資銀行業務に携わる。2007年11月に「スキラージャパン株式会社」を設立。現在、個人の資産設計を中心としたマネー・ライフプランの提案・策定・サポートなどを行うかたわら、資産運用に関連するセミナー講師や講演を多数行う。著書・監修本に『図解即戦力 金融業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)、『ゼロからはじめる!お金のしくみ見るだけノート』(宝島社)、『図解 金融入門 基本と常識』(西東社)など多数。

(まいどなニュース特約・八幡 康二)

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