韓国第2の刺客「Kia」の電動商用バン「PV5」が日本上陸 ハイエースやNV200のライバルになるか?
韓国の自動車メーカーであるKiaが再び日本市場に参入した。日本に導入されるPV5には、商用モデルの「PV5バン」と乗用モデルの「PV5パッセンジャー」の2タイプが設定されている。本記事ではKiaの概要と導入されるPV5について紹介する。
■満を持して韓国Kiaが日本商用車マーケットに参入!
Kiaは、BEV(バッテリー電気自動車)の商用バン「PBV」シリーズ第1弾モデルとなる「PV5」の発売を発表した。あわせて、Kia PBVジャパン直営第1号店となる「Kia PBV 東京西」をオープンし、2026年5月15日に営業を開始している。
PV5パッセンジャーの新車価格は679万~769万円、PV5バンの新車価格は619万~679万円に設定された。
Kiaは、世界第3位の自動車グループであるヒョンデ傘下の韓国第2位の自動車メーカーだ。スタイリッシュなデザインとリーズナブルな価格設定を特徴とし、世界各国で高い支持を集めている。
▽2026年度販売目標1000台は野心的か? 勝算は?
再び日本市場への参入を果たしたKiaは、2026年度に1000台という意欲的な販売目標を掲げている。
この目標が意欲的といわれる理由は、同じ韓国メーカーであるヒョンデの2025年度販売台数が約1300台だからだ。ヒョンデは2022年の日本再参入以降、店舗を持たないオンライン販売を中心とする独自の販売手法を展開し、ようやく年間販売台数が1000台を超える水準に達した。
一方、Kiaが日本市場で投入するモデルは、現時点ではBEV商用バンのPV5のみである。さらに、販売拠点は開設予定を含めて全国7店舗にとどまる。この条件を踏まえると、年間1000台という目標はかなり高い水準に設定されているといえる。
しかし、Kia PBVジャパンには、この目標を達成するための明確な勝算がある。その大きな要因が、親会社である双日の存在だ。
双日は、日本を代表する総合商社のひとつであり、幅広いネットワークと高い営業力を有している。Kia PBVジャパンは、その強みを生かしながら法人向け(フリート)販売を主体に事業を展開する方針だ。そのため、初年度となる2026年度の販売目標1000台は十分に現実的な数字と考えられる。
販売を後押しするのがLEVO補助金の存在である。PV5カーゴの場合、最大196万4,000円の補助金が支給される予定だ。これにより、PV5カーゴの実質的な車両価格は約483万円となり、国産商用バンに近い価格帯で導入できるようになる。
また、BEV商用バンを導入することで、企業は環境配慮への取り組みを対外的にアピールしやすくなる。環境対応を重視する取引先から評価される可能性も高まるだろう。
さらに上場企業の場合は、環境への取り組みが企業価値向上につながるケースもある。こうした点も、PV5導入を検討する企業にとってメリットのひとつといえる。
こうしたBEV商用バン市場は、軽商用車を除くと国産メーカーのラインアップが手薄なカテゴリーである。一時期、日産はBEV商用バンのe-NV200を販売していたものの、販売台数が伸び悩み、2019年に販売を終了した。
そのため、Kiaはこうした市場環境にも勝機を見出したと考えられる。
PV5パッセンジャーもまた、国内市場ではユニークな存在だ。スライドドアを採用したミニバンタイプのBEVは、現時点で国産メーカーのラインアップには見当たらない。
日本市場ではスライドドア車の人気が高く、PV5パッセンジャーの認知が進めば注目を集める可能性は十分にあるだろう。
一方で、ミニバンタイプでありながら3列目シートを備えていない点は気になるポイントだ。多人数乗車を重視するユーザーにとっては、購入を検討する際の判断材料になるだろう。今後、3列シート仕様の追加設定にも期待したい。
■PV5の最長航続距離は528km!
日本に導入されるPV5には、商用モデルの「PV5バン」と乗用モデルの「PV5パッセンジャー」の2タイプが設定されている。
ボディサイズは全グレード共通で、全長4695×全幅1895×全高1925mmだ。
PV5バンは前席のみを備えた2名乗車仕様。一方、PV5パッセンジャーは2列目に3人掛けのベンチシートを備えた5名乗車仕様となっている。
グレード構成は、PV5バンが1グレードのみ。PV5パッセンジャーは「ベーシック」と「プラス」の2グレードが用意される。
各グレードの航続距離(WLTCモード)、バッテリー容量、モーター出力は以下の通りだ。
【PV5バン(ロングレンジ)】
・バッテリー容量:71.2kWh
・航続距離:528km
・最高出力:120kW
・最大トルク:250Nm
【PV5バン(スタンダード)】
・バッテリー容量:51.5kWh
・航続距離:379km
・最高出力:89kW
・最大トルク:250Nm
【PV5パッセンジャー プラス(ロングレンジ)】
・バッテリー容量:71.2kWh
・航続距離:521km
・最高出力:120kW
・最大トルク:250Nm
【PV5パッセンジャー プラス(ロングレンジ)】
・バッテリー容量:51.5kWh
・航続距離:377km
・最高出力:89kW
・最大トルク:250Nm
【PV5パッセンジャー プラス(ロングレンジ)】
・バッテリー容量:51.5kWh
・航続距離:377km
・最高出力:89kW
・最大トルク:250Nm
■PV5のライバル車は? 前輪駆動のみで大丈夫?
PV5の航続距離(一充電走行距離・WLTCモード)は、バンであれば51.5kWhバッテリー搭載車でも377kmを確保しており、商用用途としては十分なレベルにある。
実際の航続距離は積載重量の影響を大きく受けるものの、実航続距離をカタログ値の70%程度と見積もっても260km以上の走行が可能だ。配送エリアが比較的コンパクトな地域であれば、大きな支障はないだろう。
一方で、気になるのは航続距離よりも最大積載重量かもしれない。PV5バンの最大積載重量は、ロングレンジが550kg、スタンダードが650kgとなっている。
最大積載重量を基準にすると、国産車ではトヨタ タウンエースバンや日産 NV200バネットが競合車として挙げられる。ただし、PV5はこれらのモデルよりひと回り以上大きなボディサイズを持ち、BEVであることから価格も高めに設定されている。
また、PV5バンの駆動方式は前輪駆動(FWD)のみだ。タウンエースバンやNV200バネットも前輪駆動を基本とするが、降雪地域向けに4WD車が用意されている。4WD設定のないPV5バンは、降雪地域では販売面で不利になる可能性がある。
PV5バン最大の魅力は、低床フロアにある。床面地上高419mmのリヤステップは低く、荷物の積み下ろしがしやすい。これは日々の業務におけるドライバーの負担軽減にもつながる。
さらに、運転席への乗り降りもスムーズだ。国産ミニバン並みの優れた乗降性は、一般的な国産商用バンとの大きな違いといえる。
バックドアには観音開き式を採用しており、この点はユーザーによって評価が分かれそうだ。左右のスライドドアは手動式となる。また、Kiaはバンユーザーの用途に合わせた架装やアクセサリーの拡充にも力を入れていくとしている。
一方、PV5パッセンジャーでは、51.5kWhバッテリー搭載車の航続距離は日常利用には十分なものの、長距離移動ではやや心許なく感じる場面もありそうだ。そのため、遠出を前提とするのであれば71.2kWhバッテリーを搭載したロングレンジ仕様がおすすめとなる。
実航続距離を同様にカタログ値の70%程度で見積もると、約360kmの走行が可能な計算だ。これだけの航続距離があれば、長距離移動時も急速充電を活用することで比較的余裕を持って移動できるだろう。
商用バンなのに充実の標準装備!
パッセンジャーの上級グレードである「プラス」は、装備の充実度が高い。
運転席・助手席シートヒーターやステアリングヒーター、人工皮革シート、左右電動スライドドア、ワイヤレス充電機能などを標準装備している。さらにオプションのコンフォートパッケージを選択すると、運転席・助手席パワーシートや電動ランバーサポート、シートベンチレーションが追加され、快適性はさらに高まる。
なお、パッセンジャーのバックドアは、バンの観音開き式とは異なり、跳ね上げ式を採用している。
バンとパッセンジャーは共通して、BEV専用プラットフォーム「E-GMP.S」を採用する。これはヒョンデグループが開発した商用車向けプラットフォームで、乗用BEV向けの「E-GMP」をベースに商用用途へ最適化したものだ。
また、「E-GMP.S」は「IMA(統合モジュラーアーキテクチャ)」の思想に基づいて設計されている。主要コンポーネントを共通化することで、多様なボディタイプや仕様への展開を容易にしている点が特徴だ。
装備面で注目したいのは、バンとパッセンジャーの双方に充実した機能が標準装備されていることだ。
BEVのメリットを生かすV2LやV2Hを全車に標準装備。車両に蓄えた電力をさまざまな用途で活用できる。また、回生ブレーキコントロールパドルも全グレードに標準装備されており、運転しやすさの向上にも貢献している。
先進運転支援システム(ADAS)も充実している。歩行者や自転車を検知する自動ブレーキをはじめ、車線中央維持支援機能、スマートクルーズコントロール、ブラインドスポットビューモニター、リヤビューモニターなどを装備。商用バンとしては高水準の予防安全性能を備えている。
さらにパッセンジャーには、後側方衝突防止アシストや後方交差車両衝突防止アシストなどを追加装備し、安全性能を高めている。
こうした装備をバンでもオプションで選択できる点からも、Kiaの安全性能に対するこだわりがうかがえる。
■PV5の個性を際立たせる「タイガーフェイス」
PV5のユニークさを際立たせているのが、その個性的なデザインだ。
なかでも象徴的なのがフロントフェイスで、Kiaはこのデザインを「タイガーフェイス」と呼んでいる。名称から虎を連想するのはやや難しいものの、獲物を狙う虎のような精悍さや力強さを表現したデザインといえるだろう。
とくに印象的なのは、縦長のシャープなLEDデイタイムランニングライトだ。Kiaではこれを「スターマップ・シグネチャーライティング」と呼び、ブランドを象徴する新たなデザインランゲージとして採用している。
バンとパッセンジャーでフロントフェイスのデザインはほぼ共通だ。一方、サイドビューではパッセンジャーのガラスエリアが、バンではパネルに変更されている。また、リヤまわりは観音開き式と跳ね上げ式という違いはあるものの、コンビネーションランプをはじめ全体のデザインテイストは共通している。
バンは業務用途が中心となるため、デザインだけで購入を決断するユーザーは多くないだろう。しかし、レジャー用途を想定したパッセンジャーであれば、この個性的でスタイリッシュなデザインに魅力を感じる人も少なくなさそうだ。
インパネデザインは、バンとパッセンジャーで共通となっている。
ダッシュボードは水平基調のシンプルなデザインを採用し、余計な装飾を抑えたすっきりとした仕上がりが印象的だ。そのため運転席からの視界も良好で、運転のしやすさを視覚的にも感じさせる。
メーターパネルには7インチの液晶メーターを採用。センターコンソール上部には12.9インチの大型タッチディスプレイを配置しており、視認性にも優れている。
日本市場で大きな可能性を秘めるPV5
Kia PBVジャパンが日本市場に投入するPV5は、これまで選択肢が限られていたBEV商用バン市場に新たな選択肢をもたらす存在だ。
一方で、日本では商用車の電動化がまだ本格的に進んでいるとはいえず、車両価格や充電インフラ、運用面など乗り越えるべき課題も少なくない。
それでも、PV5はBEVならではの実用性や先進装備に加え、商用バンと乗用モデルの両方をラインアップすることで、幅広いニーズに対応できる可能性を秘めている。
PV5が日本市場でどのような評価を受けるのか、そしてBEV商用バン市場の拡大にどのような影響を与えるのか、今後の動向に注目したい。
■「Kia PBV 東京西」概要
・店舗名:Kia PBV 東京西
・所在地:東京都西東京市田無町7丁目19-25
・敷地面積:2292平米
・ショールーム面積:377平米
・常時展示台数:4~6台
・サービスベイ数:3ベイ+検査ライン
(まいどなニュース/norico)
