「全員お揃いになってからご入店ください」 店先の貼り紙を無視 飲食店テーブル席に居座る迷惑客が「残りは後から来るから!」と主張 どうやって退去させる?【弁護士が解説】
激しい混雑を見せる休日のランチタイム、その定食屋はいつにも増して混雑していました。しかしお客さんは入口に貼られた「全員お揃いになってからお並び・ご入店ください」と書かれた貼り紙のルールに従って、順番に入店してくれています。
そんななか、あるお客さんをカウンター席に案内した時、後ろに並んでいた中年男性が彼を乱暴に押し退け、店内に入ってきました。そして間髪入れずに男性は「4人!あとの3人は今、駐車場から歩いてきているから!」と言い放ち、空いたばかりの広々としたテーブル席に1人で強引に着席してしまいます。
店員が慌てて「皆様お揃いになってからのご案内となりますので、一旦外でお待ちいただけますか?」と促すも、「後からすぐ来るんだからいいだろ!融通の利かない店だな!もう座っちゃったんだから注文させろ!」と怒鳴り散らす始末です。
このような迷惑客に対して、店側は法的にどのような対応ができるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。
■店舗ルールに背く客の「契約」は拒否できる
ー「全員そろってから」の店舗ルールは法的に有効ですか?
はい、有効です。飲食店などの私的な施設では、誰を店内に立ち入らせ、どのような条件でサービスを提供するかを決める「契約の自由」や「施設管理権」が認められています。
したがって、店側が掲げる「全員が揃ってから並ぶ、入店する」というルールは、正当なものです。このルールに従わない客に対して、店側は入店を断ったり、サービスの提供を拒否したりすることができます。
ー退去指示を無視して居座る客は刑事罰に問われますか?
刑事罰に問われる可能性はあります。店員が「一旦外でお待ちください」と退店を促したにもかかわらず、それを無視して勝手に席に居座り続ける行為は、刑法第130条の「不退去罪」に該当します。この罪が成立した場合、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金という刑事罰が科されます。
さらに、店員を大声で威圧したり、他の客を押し退けて強引に突入したりする行為は、「威力業務妨害罪」や「暴行罪」に問われることもあります。店側は、警察へ通報して退去を求めるなど、毅然とした態度で対処することが可能です。
ー「先に座った」という理由は退去拒否の口実になりますか?
口実にはなりません。客席に物理的に腰を下ろしたからといって、その場所に居座り続ける権利がその客に発生するわけではないからです。
店と客の間の「飲食契約」は、店側が席を案内し、注文を受けるなどの合意があって初めて成立します。勝手に席を占拠している状態は、契約前の無断立ち入りにすぎず、店側の「出て行ってほしい」という意思表示に抗う正当な理由にはなりません。
ー順番を抜かされた他の客は損害賠償を請求できますか?
順番を割り込まれたり、押し退けられたりする行為は、精神的苦痛を与える不法行為(民法第709条)に当たり得ます。しかし、それによって生じた実害や精神的苦痛の度合い(慰謝料の額)を客観的に証明することは難しく、認められたとしても非常に少額にとどまるでしょう。
ただし、押し退けられた際にケガをした場合は「傷害罪」や「過失傷害罪」となり、治療費や相応の慰謝料を相手に請求することができます。
◆北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
