統合失調症の27歳息子、工賃は月1万7000円 62歳母の不安「親亡き後、この子はどこで誰と暮らすのか」 グループホームの費用と探し方【社会福祉士が解説】

中村さん(仮名・62歳)は、27歳になる息子・翔太さん(仮名)と2人で暮らしています。翔太さんは18歳のときに統合失調症と診断され、現在は就労継続支援B型の事業所に通いながら、毎月1万7000円ほどの工賃を得ています。精神障害者保健福祉手帳2級を取得しており、日常生活の多くは自分でこなせるものの、金銭管理や通院の手続きには中村さんのサポートが欠かせません。

夫と死別してから10年、「自分に何かあったとき、この子はどこで誰と暮らすのか」という問いが頭から離れません。グループホームという言葉は耳にしたことがありますが、費用がいくらかかるのか、どうやって探せばいいのか、まったくわからないまま時間だけが過ぎていきます。

「親亡き後」という言葉が示す不安は、障害のある子を持つ親に広く共通するものです。しかしその解決の入口となるグループホームの費用や手続きについて、わかりやすくまとめられた情報は多くありません。費用の全体像と入居までの流れを整理します。

■なぜグループホームの費用は「わかりにくい」のか

障害者グループホーム(正式名称:共同生活援助)は、障害者総合支援法に基づいて運営される福祉サービスです。障害のある人が少人数で共同生活を送りながら、夜間の見守りや生活支援を受けられる住まいの場です。

費用がわかりにくい最大の理由の一つは、「家賃・食費・光熱費などの実費」と「障害福祉サービスの利用料」という性質の異なる費用が混在しているうえ、地域・施設・所得状況によって金額がまったく異なるためと考えられます。さらに補助制度も複数あるため、実際の自己負担額は「調べてみないとわからない」という状態になりがちです。

こうした構造は、個人の情報収集力の問題ではなく、制度設計上の複雑さに起因しているといえます。

また、深刻な問題として「空きがない」という現実があります。2024年にNHKが実施した調査では、全国の施設やグループホームの待機者が延べ2万2000名以上にのぼることが判明し、厚生労働省も実態解明に乗り出す事態となっています。「動こうと思ったときには手遅れ」にならないよう、早めに動き始めることが何より重要です。

実際に空きが出るまで、数カ月から数年単位の待機が生じるケースも珍しくありません。「申し込んだが2年以上待った」という事例も報告されています。希望するエリア・条件を絞りすぎると選択肢がさらに狭まるため、複数の施設に並行して打診・見学を進めることが現実的な対策です。

■費用と手順を整理するためのポイント

1. 月額費用の全体像を把握する

グループホームの費用は大きく2種類に分かれます。

① 障害福祉サービス利用料(月額)の負担上限額

障害福祉サービスの利用に対して発生する費用で、所得に応じた上限額が設定されています。

・生活保護受給世帯・低所得(市町村民税非課税)世帯:0円

・一般1(市町村民税課税世帯、所得割16万円未満):9300円

※グループホーム利用者の場合は0円

・一般2(上記以外):3万7200円

ここで注意したいのは、一般1の9300円という金額は、居宅介護などの他の障害福祉サービスに適用される負担上限額であり、グループホーム利用者については0円となる点です。つまり、翔太さんのように単身者世帯でグループホームへの入居を検討している場合、所得が一般1の区分に該当する世帯であっても、サービス利用料の負担は発生しません。

翔太さんのように障害基礎年金と少額の工賃のみの収入であれば、多くの場合は低所得世帯に該当するため、いずれにしてもサービス利用料は0円となる可能性が高いといえます。

② 生活実費(月額)

実際の生活にかかる実費を施設に直接支払います。目安は以下のとおりです。

・家賃(月額):約3万~5万円(都市部では6万~8万円程度になる場合も)

・食費(月額):約2万~3万6000円(※1食400~600円程度が目安、事業所により異なる)

・光熱費(月額):約1万~2万円

・日用品費(月額):約5000円前後

合計すると、月6万~12万円程度が一般的な相場といえます。都市部では家賃が高くなるため、上限に近くなる場合もあります。

なお、初期費用(敷金・礼金)は不要または低額な場合が多いものの、事業所によっては数万円程度の保証金や入居準備費が必要となることもあります。

ただし、世帯判定には注意が必要です。グループホーム入居者が、親の住民票に入ったまま(同一世帯)であっても、18歳以上であれば、福祉サービス上の判定においては「本人と配偶者」だけの住民票外の世帯認定が行われます。これにより、親に一定の収入があっても、本人が非課税であれば利用者負担は「0円」となるケースが一般的です。ただし、親の所得が考慮されるのは、入居前の特定のサービス(例:施設入所支援)を利用していた場合の経過措置などに限られます。

2. 家賃補助「特定障害者特別給付費(補足給付)」を確認する

生活保護受給世帯または市町村民税非課税世帯の人は、「特定障害者特別給付費」、いわゆる補足給付と呼ばれる家賃補助を受けられます。月額1万円を上限に、グループホームの家賃から差し引かれる仕組みです(家賃が1万円未満の場合はその実費分)。

この給付金は本人には直接渡らず、グループホームが代理で市区町村から受け取り、家賃請求額から差し引く形で処理されます。申請先は居住する市区町村の障害福祉担当窓口です。

さらに自治体によっては、独自の上乗せ補助を設けているところもあります。例えば東京都内の一部自治体では、国の補助に加えて月1万4000円以上の上乗せ補助が出るケースもあります。

【シミュレーション① 地方在住・低所得世帯の場合】

・家賃(月額):3万円 → 補足給付1万円を差し引き → 実質2万円

・食費(月額):2万5000円

・光熱費・日用品費(月額):1万5000円

・サービス利用料(月額):0円

合計:月約6万円

障害基礎年金2級(月約7万600円・2026年度)と工賃1万7000円を合わせると、月の収入は約8万7600円となり、グループホームにかかる費用を差し引いても約2万7600円が残る計算です。ただし、医療費や交通費、通信費、衣類代などは別途必要になるため、実際の生活費は個別に確認しておく必要があります。

【シミュレーション② 都市部在住・低所得世帯の場合】

・家賃(月額):7万円 → 補足給付1万円+自治体独自補助1万4000円を差し引き → 実質4万6000円

・食費(月額):3万円

・光熱費・日用品費(月額):1万5000円

・サービス利用料(月額):0円

合計:月約9万1000円

この場合、障害基礎年金2級(月約7万600円・2026年度)と工賃1万7000円を合わせた月の収入約8万7600円では、グループホームにかかる費用だけで月約3400円不足する計算になります。さらに医療費や交通費、通信費なども必要になるため、自治体独自の助成や各種手当の有無、本人の収入状況を含めて、事前に市区町村の窓口や相談支援専門員に確認することが重要です。

※障害基礎年金の金額は毎年度改定されますので、最新の金額は日本年金機構のホームページでご確認ください。

3. 受給者証の取得手続きを確認する

グループホームを利用するには、市区町村から「障害福祉サービス受給者証」の交付を受ける必要があります。申請先は市区町村の障害福祉担当窓口で、申請から支給決定までおおむね1~3カ月程度かかる場合があります。

4. 空き情報の探し方を知る

グループホームの空き状況は、一般的な賃貸住宅と異なり常に逼迫しています。以下の方法を組み合わせて探すことが有効です。

・市区町村の障害福祉担当窓口:地域の事業所一覧や空き状況を把握している場合があります

・相談支援専門員に依頼する:グループホーム探しの専門家で、本人の状況に合った施設を一緒に探してくれます。サービスは無料です

・インターネットの空き情報サービス:さまざまなウェブサービスで全国の空き情報をまとめて検索できます

・エリアを広げて探す:特定の市区町村のみに絞ると選択肢が極めて少なくなります。隣接する自治体まで視野を広げることが有効です

体験入居を実施しているグループホームも多く、実際の生活環境を確認してから入居を決めることができます。なお、グループホームは施設によって支援体制・夜間対応・医療連携の水準に大きな差があります。職員が夜間も常駐するタイプ(夜間支援体制加算あり)と、緊急時のみ対応するタイプとでは、安心感が大きく異なります。また、通院同行や服薬管理のサポートが可能かどうかも施設ごとに異なるため、見学時には必ず確認しましょう。

   ◇   ◇  

中村さんは相談支援専門員に相談したことで、翔太さんの障害支援区分の申請から受給者証の取得、近隣自治体のグループホームの見学まで、一つひとつ確実に前に進めることができました。「費用の全体像がわかっただけで、こんなに気持ちが楽になるとは思わなかった」と中村さんは話します。

「親亡き後」への備えは、決して後ろ向きな準備ではありません。それは翔太さんが自分らしく暮らし続けるための、前向きな選択肢を広げる行動です。「動こうかな」と感じた今が、最初の一歩を踏み出すタイミングです。

費用の詳細や空き状況は地域・施設・時期によって異なります。まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口、または相談支援専門員・基幹相談支援センターにご相談ください。

【出典】

・厚生労働省「障害者の利用者負担」

・厚生労働省「障害者総合支援法」

・日本知的障害者福祉協会「2021年度全国グループホーム実態調査報告」※最新データは同協会の最新調査報告をご確認ください

・福祉新聞「障害者施設待機者の実態解明へ 厚労省『定義調べる』」(2024年8月)

・NHK調査「『受け入れ施設 空きがない』障がい者 延べ2万2000人待機」(2024年7月)

【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症2型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。    

(まいどなニュース/もくもくライターズ)

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