グローバルリーダーだった米国は世界最大の不安定指数 懸念される国際秩序の崩壊 日本が進むべき道はバランサーだ

第二次トランプ政権の発足以来、国際社会はかつてない不確実性の渦中にある。同政権が打ち出す広範な関税措置や、ベネズエラ、イランに対する一方的な軍事介入は、従来の国際秩序を支えてきた多国間協調の枠組みを根底から揺さぶっている。

米国が「アメリカ・ファースト」を掲げ、一国主義と保護主義の路線を鮮明にする一方で、中国は自らを自由貿易体制の擁護者として位置づけ、国際社会での影響力を拡大させようとしている。このような地政学的な構造変化は、特にグローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国の対外戦略に重大な変容を迫っている。

■米国は世界最大の「不安定指数」

米国による強硬な通商政策や予測困難な外交手法は、諸外国の間に不信感と諦念を広げている。かつてグローバルなリーダーシップを発揮してきた米国が、今や世界最大の「不安定指数」と目される事態に至り、多くの国々が安全保障や経済における対米依存のリスクを再考し始めた。

対照的に、中国は経済的支援やインフラ投資を通じて、米国への反発や失望を抱く国々を取り込む動きを加速させている。中国が喧伝する「グローバル経済の守護神」という象徴的な役割が、米国の空白を埋める形で浸透すれば、国際社会における対米離反と対中傾斜の流れは不可逆的なものとなろう。

もっとも、グローバルサウス諸国の動向を一括りに論じることには慎重な分析が必要である。各国が置かれた地理的条件、歴史的背景、そして経済的利害は多様であり、必ずしも一律に中国支持へ転じているわけではない。米国との軍事的な連携を維持しつつ経済的には中国と深く結びつく国もあれば、米中双方から距離を置く「戦略的自律」を模索する国も存在する。しかし、大局的に見て、米国に対する信頼の低下が既存の同盟ネットワークや多国間枠組みの遠心力を強めている事実は否認できない。

■国際秩序の崩壊を食い止めるバランサーの役割果たせ

日本にとって、唯一の同盟国である米国との関係は外交の基軸であり、トランプ政権がいかに不安定な要素を孕んでいようとも、日米同盟の維持と強化が最優先課題であることに変わりはない。経済安保や抑止力の維持において、米国の関与は不可欠であり、日本は同政権との強固な信頼関係を構築するための忍耐強い外交努力を継続しなければならない。しかし、米国第一主義が常態化する中で、日本が単に米国の後を追うだけの外交に終始することは、国際社会における日本の立ち位置を危うくする恐れがある。

今後の日本に求められるのは、日米同盟を堅持しつつも、それとは一線を画した日本独自の外交空間を創出することである。具体的には、グローバルサウス諸国との二国間関係をこれまで以上に緻密に構築し、強化していく必要がある。米国への不信感を募らせる諸国に対し、日本は信頼できるパートナーとしてのプレゼンスを示すべきである。それは、米中の二者択一を迫るのではなく、相手国の主体性を尊重し、持続可能な開発や技術協力、法の支配に基づく秩序形成を共に進めるというアプローチである。 

日本独自の二国間外交を徹底することは、結果として日米関係を補完することにもつながる。米国が内向きな姿勢を強める中で、日本がアジア、アフリカ、中南米の諸国との橋渡し役を担うことは、国際秩序の崩壊を食い止めるバランサーとしての役割を果たすことになる。トランプ政権という不確定要素に対処しながら、同時に変化する国際秩序の現実を直視し、多層的な二国間関係を構築していくことこそが、日本が今後取るべき賢明な道筋であると言える。

◆和田大樹(わだ・だいじゅ)CEO, Strategic Intelligence Inc. / 代表取締役社長 専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障、地政学リスクなど。海外研究機関や国内の大学で特任教授や非常勤講師を兼務。また、国内外の企業に対して地政学リスク分野で情報提供を行うインテリジェンス会社の代表を務める。

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