アパレル店員「今日中に3万円!」達成した売り上げを同期が横取り? ノルマに追われる職場で見つけた数字より大事なこと【漫画】

多くのアパレル業では、接客において個人の売上目標が設定されます。その『数字』に追われてばかりでいると、身内同士で揉め合うリスクもあるようです。

漫画家で、元アパレル店店長でもあるぼのこさんの作品『アパレる』の176話以降の一連のエピソードでは、アパレル店において、売上目標に囚われすぎた同僚の姿が描かれています。同作はX(旧Twitter)に投稿されると、約2100ものいいねが寄せられました。

アパレル店の店員である主人公・桜木春子は、元々百貨店の店員ですが、現在は本店と掛け持ちで働いています。春子と同期のウジタは、売上目標達成まで残り3万円ですが、残り1日で達成できるかどうか焦っていました。ただ、自身と同じように焦る春子に対し、ウジタは「(百貨店と本店の)兼任なんだからいいじゃん」と小さく呟き立ち去ります。

次の日、春子とウジタは同じ遅番となります。閉店直前でもギリギリ売上目標を達成できていないウジタは、イライラした様子で春子にゴミ出しを頼みました。すると春子は、お客様を引き連れて店内に戻ってきたのです。

春子も売上を達成できていませんでしたが、この突然の来客でなんとか目標を達成したはずでした。しかしウジタは、「あのとき私がゴミ捨てに行っていれば…私の売上だったのに!」と呟き、レジを操作しはじめたのです。

次の日、春子は店長から売上を達成できていなかったと怒られてしまいます。おかしいと思った春子は昨日のレジを見てみると、昨日の最後の売上が反映されていませんでした。春子はまさかと思いウジタを見ると、ウジタは目を背けます。

そしてウジタは近付き「なに見てたの?」「昨日の売上でしょ」と春子に詰め寄りました。春子は思わず「私は全然気にしないよ!」と言うと、ウジタは「そうやっていつも自分だけ涼しい顔して!余裕ありますみたいな顔して!私のこと下に見てるんだ!」と思いを叫び立ち去ってしまいます。

次の日、春子はウジタのことで悩みます。春子が「全然気にしてない」と言ったのは、ウジタをかばってあげたいと思ってのことでした。しかしその行動が、ウジタから『上から目線』と受け取られてしまったのです。

後日、春子が出勤すると、同僚たちはイライラしている様子です。話を聞くと、ウジタは手当たり次第に客に声をかけ、ほかの同僚に「私が先に接客したから私の売上で」と圧力をかけていたようでした。そのうえリーダーが注意しても、反抗的な態度で改善が見られないようです。

なぜウジタの行動がエスカレートしていったのか、それはウジタが抱く春子への感情が原因でした。かつてウジタは後輩としての役割を率先しておこなっていましたが、同期である春子が本店に来たことで、ウジタは自分の役割を完全に奪われたと感じていたのです。

次の日休憩室にて、同僚たちはまたウジタに売上を横取りされたと愚痴を言い合っていました。同僚たちは春子に、ウジタになにかされてないか尋ねるも「今のところは…特になにも思いつかないです」と答えます。

なぜ先日の件を春子は言わなかったのか、それはみんなに言いふらすのは違うと感じたことと、会社の個人売上はあくまで目標扱いであり、明確な違反とは言えないと考えたからでした。しかし、そのときちょうどウジタはこの話を聞いており、春子とウジタは2人きりとなります。

ウジタは春子に「言えばよかったじゃん 私が売上とったって」と言うも、春子は「なんであんなことしたのか…まずウジタさんの話を聞いてみるべきだと思ったから」と答えました。ウジタに手を差し伸べようとする春子に、ウジタは「全部恵まれている桜木さんなんかに 私の気持ちなんてわかるはずがないんだ!」と突っぱねます。

そんなウジタに対し、春子は「私がなんの苦労も努力もせずに ただ恵まれているからここにいるって…本当にそう思うの?」と尋ねました。春子は続けて、今のウジタは自分の不満を周りのせいにして逃げているようにしか見えないこと、自分を正当化するために私を使わないで欲しいと言い、立ち去ろうとします。

そのとき、ふとウジタはかつての自分を思い出します。元々ウジタがアパレル店に入社したのは、商品を作りたいからでした。しかし「販売の経験からスタート」と言われ、人と話すのが苦手なウジタは苦労します。なるべく人と話したくないウジタは、雑用に時間をかけており、それは先輩にすぐバレてしまいました。

先輩はそんなウジタに対して、雑用するにしてもなぜこんな業務をするのか、誰に喜んでもらえるのか、そして「与えられた『仕事』も『環境』もむしろ自分の成長のために利用してやるのよ」と語っていました。

ウジタはあのときの先輩の言葉が、今の春子の言葉でようやくわかった気がしたのです。ウジタは立ち去ろうとする春子を呼び止め、「本当に 本当にごめんなさい」と深く謝りました。

その日、ウジタは体調不良を訴え売り場に立つことはありませんでした。それから春子とウジタはシフトが合わず、春子の本店への応援業務が終了となったため、結局顔を合わせないままとなってしまいます。

後日、ウジタは店長のもとへやってきます。ウジタは店長に頼み、書き換えてしまった春子の売上を元に戻してもらったのです。店長は「たった3万円の売上のためだけに、これまで築いてきた信頼を失ったのよ その重みがわかる?」とウジタに言います。

信頼とは、作るときより修復するときのほうがよっぽど難しいものです。しかしウジタは逃げずにがんばると意を決し、「これから自分自身の行動で証明していきます!」と宣言するのでした。

読者からは「春子も店長もやさしい!」「こういうことって誰にでも起こり得そう…」などの声が寄せられています。そこで、作者のぼのこさんに話を聞きました。

■お客様を仲間から奪うのではなく、価値を生み出すことに軸を置ければ

-同作において、とくに伝えたかったテーマを教えてください

今回のお話では、「売上目標」というプレッシャーにより視野が狭まり、仲間である同僚を競争相手として捉えてしまう危うさを描きました。

同じ組織で働く以上、スタッフ同士は協力し合う関係が理想ですが、個人目標が強く意識される現場ではそれが難しくなることもあります。数字に振り回されるのではなく、数字を「成長の指標」として捉え直す重要性を伝えたいと考えました。

-ぼのこさんがアパレル店に勤めていたころにも、ウジタさんのようなケースはありましたか?

私自身も同期の活躍に悔しさを感じた経験がありますし、店長時代にもスタッフ同士の関係に歪みが生じるといった場面に何度か遭遇したことがありました。

一方で、こうした心理は誰にでも起こり得るものだと感じていて、たとえ成績が評価に直接影響しない(課程も評価の対象)と伝えても、結果として可視化されている以上、競争心は自然と生まれてしまうのが現実です。とはいえ競争心は成長の刺激にもなるため、なくすわけにもいかず、モチベーションの調整が難しいと感じる日々でした。

-『個人の売上目標』はアパレル業界に限らず、さまざまな業種にあるものだと思います。目標に追われるなかでも接客の本質を見失わないためには、どのような心がけが大切だと思いますか?

おっしゃる通り、アパレルに限らず働く中で数字を求められるといった場面は数多くあります。個人売上の目標が求められると、どうしてもパイを取り合う発想になりがちですが、接客は決してゼロサムゲームではありません。

向き合い方次第で価値を広げられるプラスサムの仕事だと考えています。たとえばお客様のニーズを深掘りし提案を重ねることで客単価を高められるように、仲間から奪うのではなく価値を生み出すことに軸を置ければ、よりやりがいを持って働けると考えます。

(海川 まこと/漫画収集家)

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