「つながらない権利」勤務時間外の連絡、無視してもいい? ルールを設ける企業は1割のみ…7割が「時間外に連絡」
みなさんは、仕事が終わった後も職場からの連絡が気になり、プライベートの時間が落ち着かないと感じたことはありませんか。企業信用調査などを手がける株式会社帝国データバンクが実施した「つながらない権利」に関する企業の動向アンケートで、勤務時間外の連絡に関する対応ルールを設けている企業はわずか11.6%にとどまる一方、ルールの有無にかかわらず勤務時間外に従業員へ連絡を行っている企業は70.0%に達することが明らかになりました。
この調査は、株式会社帝国データバンクが休日や休暇日を含む勤務時間外に、仕事上の連絡を拒否できる「つながらない権利」の法制化に向けた議論が進むなか、企業の実態を把握することを目的として、2026年3月にインターネット上で実施したもので、1232社から有効回答を得ています。
■対応ルールのある企業は約1割、ない企業が9割近くに
勤務時間外の連絡に関する対応ルールの有無を尋ねたところ、「ルールはなく、勤務時間外に連絡することがある」(60.3%)と「ルールはないが、連絡することはない」(26.3%)合わせて86.6%の企業はルールを設けていないことがわかりました。
一方で、「ルールがあり、勤務時間外に連絡することはない」(1.9%)、「ルールはあるが、連絡することがある」(9.7%)合わせて11.6%という結果になりました。
■大企業ほどルールと時間外連絡の両方が多い傾向
続いて、規模別に見ると、「大企業」はルールがある企業の割合が13.9%と全体平均(11.6%)を上回る一方、勤務時間外に連絡をする企業の割合も79.8%と全体平均(70.0%)を大きく上回っており、ルールを設けているにもかかわらず時間外連絡が常態化している実態が浮き彫りとなりました。
対照的に、「中小企業」および「小規模企業」ではルールがない企業の割合が全体を上回るものの、勤務時間外に連絡しない企業の割合も全体を上回っており、大企業とは異なる傾向が見られました。
■ルールを持つ企業・持たない企業、それぞれの事情
ルールを設けている企業からは、次のような声が寄せられました。
・「管理職者以外は社用の携帯電話を持って帰らせていない。個人レベルでLINEで繋がっていても、業務の連絡はさせていない」(輸送用機械・器具製造)
・「緊急を要する場合、連絡をすることがあると周知している」(出版・印刷)
・「基本は時間外連絡はしないことにしているが、業務上確認が必要なことが発生した場合は、チャットで連絡を取れるようにしている」(その他サービス)
一方で、ルールを設けていない企業の事情も複雑です。
・「24時間稼働の工場のメンテナンスを行っており、頻度は少ないが緊急時には電話で呼び出さざるを得ない」(電気機械製造)
・「朝7時台より職人からの連絡、担当現場監督とのやり取りが発生してしまう現状がある」(建設)
・「電話ではなく、メールやLINEでの必要事項のみの伝達にしている」(運輸・倉庫)
■推進に必要な取り組みは「ガイドライン策定」と「意識改革」
「つながらない権利」を推進するために必要な取り組みとしては、「明確なガイドライン策定」が49.3%でトップとなりました。次いで「管理職への意識改革・研修」(44.1%)、「従業員への意識改革・研修」(40.6%)と、意識改革・研修に関する項目が上位を占めました。また、「緊急連絡ルートの一本化」(35.7%)や「属人化の解消」(35.6%)も3割を超え、業務の共有化を進める重要性も認識されています。
・「属人化を解消し、DX化により進捗状況が社内の誰でも閲覧できるようにする」(自動車・同部品小売)
このような取り組みは、「つながらない権利」の推進にとどまらず、組織全体の業務効率化にもつながると期待されます。
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今回の調査から、「つながらない権利」に関する対応ルールの整備はまだ緒についたばかりであることが明らかになりました。緊急時の連絡や業種特性への対応など、一律にルールを設けることの難しさも浮き彫りになっています。しかし、働き方改革やワークライフバランスへの関心が高まるなか、社内の意識改革をきっかけに、業務の属人化解消や連絡体制の整備を進める企業は今後さらに増えていくとみられます。いつでもどこでも連絡できる時代だからこそ、業務とプライベートを切り分けるための議論と取り組みが、より一層求められています。
【出典】
株式会社帝国データバンク
