あのジョブズも魅了された!100年前の新版画がいま刺さるワケ 神戸ファッション美術館で特別展「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」

最先端を走り続けたスティーブ・ジョブズ。その美意識の原点は日本の「新版画」にあったー。

2026年2月に出版された『スティーブ・ジョブズ1.0の真実』(佐伯健太郎著)では、新版画とジョブズの深い関係が一冊にまとめられています。

100年前のアートが、いま面白い。その魅力をまとめて体感できる展覧会が、3月29日まで神戸ファッション美術館(神戸市東灘区)で開かれています。

「AIで画像が一瞬で作れる時代だからこそ、逆に“手で摺ったもの”が新しく見えるのかもしれません」

そう話すのは、渡邊木版美術画舗三代目の渡邊章一郎社長。テレビ番組「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士としても知られる、“本物を見抜くプロ”です。最近は、その鑑定団でも新版画の出品が増えてきたそうです。

「祖父が販売した作品が出てくることもありますよ」

ただし、自分で評価するのは控え、同じ鑑定士の安河内眞美さんに任せることもあるとか。そんなエピソードからも、「いま来てる」感じが伝わってきます。

では、新版画って何がそんなに面白いのか。大正から昭和初期にかけて生まれた、日本の木版画。渡邊社長の祖父・庄三郎氏が、新しい流れとして広めていきました。浮世絵木版画の技を受け継ぎながら、より“芸術作品”として進化させたもの。いわば、エンタメからアートへシフトした木版画です。

そしてこの美しさ、実はかなり“手間のかたまり”。絵師、彫師、摺師、版元。それぞれのプロが協業し、一枚を仕上げていきます。しかもこの世界、すぐにできるものではありません。基礎を身につけるのに10年。さらに10年かけて腕に磨きをかけていきます。

色の重ね方、ぼかしの加減、にじみの出し方。どこまでやるか、どこで止めるか。すべてに意味があり、すべてに知恵と技術が必要です。より良い表現を目指して、細部まで工夫を重ねていく。その積み重ねが、静かな画面の中にぎゅっと詰まっています。

新版画は最初から「美術作品」としてつくられてきました。当時はすでに印刷技術が発達していて、大量に安くつくることもできた時代。それでもあえて、手間のかかる木版画で、数を絞りながら質を高める道を選んだんです。一枚一枚の完成度をとことん突き詰める。その姿勢が、最初から貫かれています。

でも、難しくはありません。むしろ、日本的な余白や構図に、どこか西洋的な色や感覚も混ざっていて、意外とスッと入ってくる。「なんかいいな」といった感覚で十分です。

会場には、およそ170点が並びます。同じ版木で作られた作品でも、朝と夜、春と秋でまったく違う表情。見比べると、「こんなに変わる?」と、ちょっと楽しくなってきます。まずは一枚に、足を止めてみてください。

スマホで画像を流し見するのに慣れていると、一枚と向き合う時間は、ちょっと特別です。シンプルに見えるものほど、奥には緻密な仕事が積み重なっている。

その構造は、無駄を削ぎ落としながら、見えない部分にこそ価値を置いたジョブズのものづくりに、どこか重なります。

彼が何に惹かれたのか分かりません。でも、その感覚、会場でちょっと分かる気がします。

■「THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦」

開催期間:2026年01月31日~2026年03月29日

開催時間:10:00~18:00 (入館は17:30まで)

開催場所:神戸ファッション美術館

住所:神戸市東灘区向洋町中2-9-1 神戸ファッションプラザ 1F

料金:一般:1,000円(800円)/神戸市外在住65歳以上・大学生:500円(400円)/神戸市内在住65歳以上・高校生以下:無料、( )内は有料入館者30人以上の団体料金

電話番号:078-858-0050

(まいどなニュース・神戸新聞)

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