500万人が利用する「バーチャルで収穫した農作物がリアルな食卓へ」!? 買い物アプリ「カウシェ」が提案する新しいEC体験と家族のつながり
スマホなどのアプリ上で農作物を育て、収穫を迎えたら本物の農作物が自宅に無料で届く。育てる楽しみと共に、それを食べる喜びも提供してくれるアプリ「カウシェ」のユーザーが爆発的に伸びて500万人を超えた。物価高が続く昨今、単なるポイント還元を超える実利とデジタルを通じたコミュニケーションが、ユーザーの心を掴んでいるのだ。その仕組みを、カウシェを運営する株式会社カウシェ広報の原田七穂さんに聞いた。
■「育てる楽しみ」の後は本物の農作物が手元に届く
カウシェはもともと、楽天やAmazonのようにネットショッピングを楽しむECサイトとして2020年にスタートした。2023年からは、アプリ内で農作物を育てるゲーム機能を導入。これが、他のECサイトとは一線を画す。
アプリをダウンロードしたユーザーは、トマト、米、ナッツ、コーヒー、玉ねぎ、お茶、じゃがいも、ニンニクの中から育てたい作物を選ぶ。アプリ上で種をまいて水や肥料をやると芽を出し、少しずつ成長していく。最終的な収穫段階に達すると、その作物が実際に自宅へ配送されてくる。しかも、代金・送料は無料だという。
「必ずしもアプリで育てた同じ作物じゃないといけないわけじゃなく、他の商品を選んでいただいても構いません」
本物の作物と同じようにアプリ内でも「水」と「肥料」は不可欠で、商品ページを一定時間閲覧したりゲームに挑戦したりすると獲得できる。
「育てながら商品ページを見ていただく中で、『こんな商品や口コミがあるんだ』と気づいたり、つい欲しくなったりしたら購入していただけます。購入していただく際の手数料が、私どもの収益となるのですが、無理にご購入いただく必要はありません。つい買ってしまいたくなるような体験を提供したいと思っています」
出品されている農作物には、農家が「規格外」として弾いたものも含まれている。サイズが大きすぎたり、逆に小さかったり、あるいは中身に問題はないのに表面に少しばかりのキズがついていたり。そんな規格外の作物は、市場に出ないまま廃棄される運命にある。しかし味や品質に問題はないため、カウシェで活用することにより、少しでも食品ロスを削減する狙いもあるという。
このアプリを開発した背景には、カウシェ代表の実家である飲食店が、ストックしていた全食材をコロナ禍で破棄せざるを得なかった苦い経験と憤りがあるという。また当時、買い物に出かける際には「なるべく1人で」「なるべく短時間で」と政府から要請されていた。「やはり、買い物は楽しみたい」との想いを込めて、ECサイトを立ち上げたのが5年前。まだ、コロナ禍の最中だった。そこから機能を増やして、単独でも楽しめる農園機能が搭載された。
カウシェではアプリの普及を促すため、ダウンロードしたその場で引けるガラポン福引をして、出玉の色に応じて玉ねぎ1~5個を無料でもらえるイベントも行っている。
■バーチャル農園が繋ぐ「離れて暮らす家族」の安心感
ユーザーの拡大を後押ししているのは、そのような実利的な側面だけではない。アプリ内には互いの農園へ挨拶に行ったり、作物の成長をお互いに助け合ったりする「友達」機能がある。これが、意外な形で活用されているのだ。
「離れて暮らす実家の親御さんを友達登録して、それぞれの作物へ水やりしたり挨拶したりして、お互いの農園を訪れながら育て合うユーザーさんもおられます。『お母さんが水やりをしてくれた。今日も元気なんだな』と安否確認ができるという声を聞きます」
朝・昼・晩の決まった時間にログインすることを習慣にすれば、結果として「規則正しい生活のサイン」となる。そんな話をユーザーから聞いた原田さんらスタッフたちは、非常に嬉しい使い方だと感じたそうだ。
今後、カウシェファームで育てられる農作物の種類を増やす一方、フルーツなども加えたいという原田さん。効率化を極めようとするECの世界で、あえて「育てる手間」をかけるカウシェの試みは、単なる買い物にとどまらない価値をユーザーに届けているのだ。
(まいどなニュース特約・平藤 清刀)




