カニの足のように広がる「かにクレーン」 おもちゃで知られる姿の裏側 大型クレーンが入れない現場の切り札【製造メーカーに聞いた】
カニのような細い足(アウトリガ)で小さめの胴体を支える姿がユニークな「かにクレーン」は、大型クレーンが入れないような狭い場所で力を発揮する小型のクレーンです。SF作品に登場しそうな近未来的な形状が特徴のクレーンで、トミカやカプセルトイなどで目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
そんな「かにクレーン」の特徴と実際の用途について、開発製造及び販売事業をおこなっている前田製作所の販売促進課に話を聞きました。
■アンコールワット・アンコールトムの遺跡修復工事で使用
─かにクレーンとはどのようなクレーンですか?
アウトリガが特徴的なクレーンで、カニの足のようにアウトリガを広げることで機体を安定させることができます。(海外ではスパイダークレーンとも呼ばれます。)
走行時は、最小モデルで60㎝とコンパクトで軽量なため、エレベーターから搬入することも可能です。これらの特性により、起伏がある場所での使用も可能で、最大約8tまで吊ることができます。
また、機体が小さいことに加え、分解できる分割仕様もあることから運搬しやすく、スペースが限られた狭い現場を得意としています。
─なぜ開発され、いつ頃発売されたのですか?
もともと、大きな重機が入ることのできない墓地での墓石設置の需要に対応して開発されました。狭い車幅を生かして墓地に進入し、多方向にアウトリガを張り出すことで墓石を吊り上げることができます。
かにクレーンの初代のモデルは1988年に発売されました。現在販売しているモデルには、ジブ(クレーンの本体から斜め前方に突き出た腕/アームの部分のこと)が折れ曲がることで差込作業や据付作業が可能なものや、完全電動バッテリー仕様で排ガスゼロ・低騒音のものなど多様な種類があります。
また、2025年4月にはモデルチェンジにより安全性能が向上した「MC305C-5」「MC405C-5」が発売され、5月には大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載した「MC305CWMB-5」が登場しました。
環境変化や様々な現場に対応できるよう、お客様のご要望に耳を傾け、サービスや製品の改良に日々努めています。
─どのような現場や用途で活用されているのですか?
狭く不安定な通路が多い墓石建立の現場や山岳土木、高層ビルのカーテンウォール据付け工事、美術品やガラスの据付けなど、コンパクトな機体と豊富なラインナップを生かし、大きなクレーンが入れない山間部・狭所・屋内での作業で活躍しています。
世界遺産であるアンコールワット・アンコールトムの遺跡修復工事で使用されたこともあり、国内外問わずあらゆる現場を支えています。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)





