コンビニで、ホットのつもりが……ボタン押し間違えた! コーヒーマシンで操作ミス、返品していいですか?【コーヒー専門家が解説】
都内で働くAさんは、通勤前に立ち寄ったコンビニでコーヒーを買おうとしました。後ろに行列ができていて慌てた結果、ホットを選ぶつもりだったのに「アイス」のボタンを押してしまったのです。
どうにか取り消しができないだろうかと考えるAさんでしたが、無情にもアイスコーヒーの抽出が始まります。「本当はアイスじゃなくてホットなんだよ…」と心の中でつぶやいても、後の祭りです。注がれていくコーヒーを見つめる時間のなんとも言えない感覚は、押し間違えを経験した人ならわかるでしょう。
完成のブザーが鳴って完成したコーヒーを見たAさんは、店員に掛け合ってみるも返品や交換はできないと言われてしまいます。そのためAさんは、結局は「飲むしかない」と覚悟を決めるのでした。カップに氷を入れていなかったため、出来上がったコーヒーは濃くて苦く、Aさんは思わず顔をしかめます。
実際に主要コンビニエンスストアのコールセンターで話を聞いたところ、コーヒーマシンの押し間違いについての対応は各店舗に任せている状態でした。またいくつかの店舗に問い合わせてみたところ、返品・交換は不可としている店舗が多い状態です。
自身が間違えた結果であるため余計に気になるのかもしれませんが、同じ豆を使っているはずなのに味の印象が変わるのはなぜなのでしょうか。実際の検証結果をもとに、コーヒー専門家の柳隆晴さんに話を聞きました。
■ホットとアイスで味が変わるのは“抽出条件”と“人間の味覚”のせい
ー セルフマシンでは、ホットとアイスでどのように抽出条件が違うのですか?
温度・湯量・抽出時間がそれぞれ異なります。温度が高いほどコーヒーの成分が溶けやすく、低いと薄くなりがちです。逆に高すぎると雑味が出て「えぐみ」につながります。湯量や抽出時間も大きな要素で、時間が短ければ薄く、長ければ苦みが強く出る傾向があります。
実際にセブンカフェで検証した結果、ホットの方が約50ミリリットル多く、アイスの方が濃く苦みが強い仕上がりになりましたが、理論的にも妥当な結果といえます。
ー 同じ豆を使っているのに、ホットとアイスで味の印象が違うのはなぜですか?
人間の味覚は温度に左右されます。冷たいものは苦みを強く感じやすく、体温に近い温度では甘みを感じやすいといわれます。そのためホットではまろやかさが前に出て、アイスではキリッとした苦みが際立つのです。
ー アイス用に抽出されたコーヒーを氷を入れずに飲むと、なぜ重く苦く感じるのでしょうか?
アイスコーヒーは氷で薄まることを想定して、濃く抽出される場合が多いです。そのため氷を入れないまま飲むと、通常のホットよりも濃度が高く、苦みや重さが目立ちます。
ー セルフコーヒーをもっと楽しむために、知っておくと役立つ知識はありますか?
コンビニごとに抽出方式や豆の設計が違います。たとえばファミリーマートはバリスタ監修の豆を採用していたり、また「ドリップ式」か「エスプレッソ式」かによっても風味が変わります。こうした違いを知った上で選ぶと、自分好みの一杯に出会えるかもしれません。
◆柳隆晴(やなぎ・たかはる)/元コーヒー嫌いのバリスタ
バリスタとして仕事をしながら、年間300件弱カフェ巡りをしています。本業がコーヒーで、これだけカフェ巡りをしている人はほとんどいないと思っています。元々コーヒーが苦手だったので、コーヒー初心者の気持ちに寄り添えるのが強みです。コーヒー初心者の方に「誰にでもわかりやすい言葉でコーヒーの楽しさを伝える」をモットーに、SNSなどで発信活動をしています。1人でも多くの方が、コーヒーに少しでも興味を持ってもらえたらうれしいです。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
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