ガムを噛むトレーニングで予防可能 「口老化」は要介護リスク2倍以上 

東京科学大学の水口俊介名誉教授
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 加齢とともに噛む力、飲み込む力、話す力といった口腔機能が低下する状態「口老化(オーラルフレイル)」が、全身の衰えにつながり、要介護リスクや死亡リスクが2倍以上に高まるという研究結果が、このほど明らかになった。

 千葉県柏市において実施された大規模フレイル予防研究において、65歳以上の人たちを対象に追跡調査したところ、調査の開始時に口の機能の衰えが認められた人は、口の健康を維持していた人と比較し、2~4年後のリスクにおいて身体的フレイルが2・4倍、要介護は2・4倍、総死亡リスクは2・1倍も高まることが判明した。

 また、咀嚼能力・舌口唇機能(滑舌)と有害健康イベント(全死因死亡、心血管疾患、認知症など)の発生率との関連を3年間追跡調査した研究では、咀嚼能力・滑舌機能が低いほど、有害健康イベントの発生率は高いことが示された。

 「噛むこと健康研究会」の理事を務める東京科学大学の水口俊介名誉教授は「これらの臨床研究は、疫学研究なのでメカニズムがはっきり分かっているわけではありません。ただ、口の機能が衰えると食欲の低下や栄養摂取のバランスが崩れてしまい、全身の虚弱や低栄養などを引き起こし、最終的には要介護状態や運動障害さらには様々な疾患の引き金になってしまうことは十分考えられる」との見解を示した。

 ほかにも、高齢者を平均3・5年間追跡調査した大規模研究においても、噛む力が低いと心血管疾患や脳卒中など循環器病の新規発生リスクが高くなることが判明している。

 ただ口老化は、日ごろの噛むトレーニングで予防が可能という。水口名誉教授は「オーラルフレイルは、硬いものをよく噛む、定期的に歯科健診を受ける、噛むトレーニングをする、など意識的なアプローチによって回復が可能です。まずはご自身の状態をチェックリストで確認してみて下さい」と呼び掛けた。

 また水口先生らの研究グループによると、高齢者が1日3回ガムを噛むトレーニングを2カ月間続けたところ、噛む力が向上したことが確認されたという。

 「ガムを噛むトレーニングのみで口の衰え全てを解決できるわけではありませんが、噛む力や舌の力を改善させることや唾液の分泌を促すことは分かっています。口老化は予防しようと思えば確実に予防できます。大事なのは衰えないようにしようと意識すること。口の老化だけでなく体全体の老化を防ぐためにも、幾つになっても働いたり、社会とのつながりを持ち続ける意識を奨励したいと思います」と説いた。

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