消えぬ亡き愛犬への思い 葛藤する夫婦を動かした言葉 「最初はお空の先住犬の代わりでいいんですよ」「ゆっくり家族になってください」

2023年の秋に茨城県の動物愛護センターに収容されたテリアの血が入ったミックス犬のオスのベッカムと、ダックスの血が入ったミックス犬のメスのブリトニー。同じ環境で過ごしていたとおぼしきワンコです。ブリトニー同様、ベッカムも「一緒じゃないと不安」とばかりに怯えた表情でした。かわいい2匹が仲良く楽しい犬生をおくる。そんな幸せな環境を以前の飼い主はどうして与えられなかったのでしょうか。

ベッカムとブリトニーを同時に引き出すことにした、犬保護団体restartdog LIEN(以下、リアン)。スタッフは2匹に適切な医療ケアを施した後、それぞれが幸せな第二の犬生をつかんでくれることを願い、お互いが依存するベッカムとブリトニーをあえて別々の預かりボランティアさんに託しました。

■持病治療のため思い切って丸刈りに

ベッカムは推定5歳。テリア種特有の明るく美しい長毛ですが、皮膚の状態が悪く、獣医師によれば「膿皮症が疑われる」とのこと。また、脂っぽい皮膚状態のワンコだと雑菌が繁殖しやすく、衛生面で好ましくありません。治療と衛生面を優先させりため、被毛を刈り上げました。少々寒そうですが、預かりボランティアさんは「カッコ良いね!」と声をかけました。

ブリトニーと別々の預かりボランティアさんの元で暮らすことになったベッカム。当初こそ不安そうでしたが、程なくして環境に馴れ心を開いてくれるように。本来のベッカムの性格は、人間も他のワンコも大好き。散歩も大好きで、散歩中に会う初対面のワンコともコミュニケーションをとろうとするお利口さんでした。

持病は完治していませんが、「この性格の良さなら、すぐに里親さんが見つかるだろう」と預かりボランティアさんは考えていました。その予感は的中し、「ベッカムに会ってみたい」という夫婦から連絡が入りました。しかし、迎え入れるには少々迷いがある様子。話を聞くと、夫婦の家庭では数カ月前に先住犬が虹の橋を渡ったばかりでした。

■「旅立った先住犬の代わり」でも十分幸せ

「正直を言えば、まだ先住犬との思い出がぬぐえず、心にポッカリ穴が空いている」と夫婦は言います。預かりボランティアさんはその思いに寄り添いながらも、そうであっても「ベッカムにとってはこの上なく良い出会いだ」と、こんな話をしました。

「私たちが保護するワンコには『本当の家族』がいないばかりか、中には長い期間寂しい思いをしてきたワンコもいます。ですので、最初は『旅だった先住犬の代わり』で良いのです。私たちが保護したワンコたちにとってはそれだけでも十分幸せだと思うからです。そして、『お空組』のワンコの存在を重ねながら、保護犬を迎え入れ、ゆっくり時間をかけて本当の家族になってもらえれば、きっと『お空組』のワンコも『お家がないワンコを自分の代わりに迎えてくれたなんて嬉しい』と喜んでくれるはずだと思います」

この言葉に夫婦は勇気づけられました。そして、一定期間のトライアルを経てベッカムはこの夫婦のもとで「ずっとのお家」をつかむことになりました。

ベッカムはもちろん、「お空組」の先住犬もきっと喜んでくれていることでしょう。優しく誠実な夫婦のもとで、ベッカムがいつまでも幸せに過ごしてくれることを願うばかりです。

犬保護団体restartdog LIEN

https://restartdoglien.jimdofree.com

リアン・インスタグラム

https://www.instagram.com/restartdoglien/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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