画びょうやピンの穴、家具による床のへこみ、冷蔵庫設置による壁焼け 賃貸物件からの退去時に支払わなくてもいいのはなーんだ?

2月から3月は引越しシーズンですが、「退去費用にまつわるトラブル」が毎年話題に上ります。株式会社LIFULL(東京都千代田区)が運営する不動産・住宅情報サービス『LIFULL HOME'S』がこのほど発表した「この退去費用は入居者負担?間違えがち項目ランキング」によると、入居者が負担しなくて良い(貸主負担とされる)費用について、間違えが最も多かったのは「ポスター等を貼ったことによる画びょうやピンの穴」でした。一方、入居者が負担しなければならない(借主負担とされる)費用として間違えが多かった項目は「専用庭の雑草処理」だったそうです。

調査は、5年以内に賃貸物件から引越しをした1075人(不動産業を除く)を対象として、2023年12月にインターネットで実施されました。

はじめに、「賃貸物件の退去費用について納得はいきましたか」と聞いたところ、全体の51.6%が「納得がいかなかった」と回答。なお、そのうちの10.9%の人は「納得がいかず交渉をして減額となった」と回答しています。

国土交通省は賃貸物件の退去時における原状回復をめぐるトラブルを未然に防ぐことを目的に、原状回復の費用負担のあり方などをまとめた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(以下、ガイドライン)」(※)を公開しています。

賃貸物件を借りると、入居者(借主)には「原状回復」義務が生じます。ガイドラインでは「貸借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、貸借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による消耗・毀損を復旧すること」と記載されており、わざと壊したり、不注意で傷をつけたり、掃除を怠ったりしてできた汚れなど、入居者の使い方に問題があったことでできた汚れや傷の修繕費用を入居者が負担すると定義されています。

(※)国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改定版)

https://www.mlit.go.jp/common/001016469.pdf

そこで、「原状回復の意味として適切だと思うもの」を選んでもらったところ、適切な意味である「故意や不注意によってできた汚れ・傷について元の状態に戻すこと」(42.7%)と答えた人は半数に満たなかった一方で、半数近くの人が「借りた当初の状態に戻すこと」(48.2%)と誤った解釈をしていることが分かりました。

次に、「入居者が負担しなくて良い(貸主負担とされる)費用」について、間違いが多かった順にみると、「ポスター等を貼ったことによる画びょうやピンの穴」(正解率33.4%)と「家具を設置してできた床やカーペットのへこみや跡」(同39.6%)が上位を占めたほか、「冷蔵庫設置による壁焼け」(同43.9%)、「エアコンを設置したことでできた穴や跡」(同46.1%)、「水漏れが発生したエアコンの修理・交換代」(同46.9%)などで正解率が半数を割り込みました。

同サービスは、「ポスターやカレンダー等の掲示は、通常の生活において行われる範疇のものとされ、壁の下地にまで達しない画びょうの穴は通常の損耗と考えられます。一方で、釘やビスなどを壁に打ち込んだ場合の補修費用は、入居者負担になります」と説明。

一方で、「水漏れが発生したエアコンの修理・交換代は貸主負担ですが、それにより床や壁が腐敗した場合の修繕費は入居者が負担する義務がありますので注意が必要です」とも述べています。

反対に、「入居者が負担しなければならない(借主負担とされる)費用」について、間違いが多かった順にみると、「専用庭の雑草処理」(正解率27.8%)、「雨の吹き込みによる床の色落ち」(同38.0%)といった項目のほか、「(物件構造に起因しない)結露によるカビ・シミ」(同41.0%)、「エアコンの水漏れによる床の傷み」(同41.4%)、「水回りの水垢やカビ」(同48.2%)などの項目で正解率が半数を割り込みました。

同サービスは、「『雨の吹き込みによる床の色落ち』『結露によるカビ・シミ』『エアコンの水漏れによる床の傷み』いずれも放置したことで拡大した被害を賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合等はすべて賃借人(入居者)の負担とされています。なお、明らかに物件の構造に問題がある場合などは退去費用を払う必要がない可能性もあり、被害を見つけた際には早急に貸主に報告を行うことが重要と言えそうです」とコメントしています。

※費用負担は契約内容によって変わる可能性があります。賃貸契約時・退去時には必ず契約書をご確認ください。

   ◇  ◇

調査を実施した同サービスは、「トラブルの多くは、退去時の費用に納得できないことで起こることから、つい退去時の問題と思いがちですが、実は入居時から始まっている問題でもあります。入居時に既にある傷や損耗などを撮影して記録に残しておいたり、原状回復に関する不明点をしっかり質問し、双方が納得したうえで契約を結ぶようにしたり、入居時の対応次第で防げるトラブルは多くあります」と述べています。

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