発達障害児の成長を“道産子”がサポート 日本初・ホースセラピーに取り組む放課後デイ その効果とは

和種馬によるホースセラピーで発達障がい児の成長を支援する放課後等デイサービス「tenba」が1月にオープンした。日本では初めての試み。特定非営利活動法人「MUKU」(大阪市平野区、福井宏昌理事長)と、和種馬保護に力を入れている「和種馬ホースランド」(大阪府柏原市・横山雅始代表)が共同で運営する。その背景とは。

■発達障がい児の成長支援×和種馬の保護

ぶどうやワインの産地として知られる大阪府柏原市で画期的な取り組みが年明けとともにスタートした。和種馬のホースセラピーによる児童発達支援・放課後等デイサービス「tenba」がそれ。子どもたちの情緒の安定や心身の成長を促しながら、それと同時に絶滅寸前の和種馬を救うウインウインの関係を築く試みだ。特定非営利活動法人「MUKU」を運営する福井宏昌理事長が言う。

「大切なのは子どもたちに様々な機会や場所を提供すること。自分の好きなことや得意なことに触れ、自分の可能性を最大限にいかせられるようになればと今回、ホースセラピーをいかした取り組みを始めることになりました」

発達障がいとは発達の凸凹が顕著であることをいい、さまざまな特性などにより一部の授業を別教室で「通級指導」を受ける小中高生は2021年度で全国に約18万4千人との報告がある。

福井さんは大阪市平野区で「運動療育」に特化した障がい児通所支援事業所も運営。発達障がいと診断を受けた子どもたちと関わる中で「自分の好きなことや得意なことでは十分できることを知りました。発達障がいと言われる子どもたちに障がいがあるというより、むしろ、一人ひとりの違いに対する理解やそれをいかせる環境が十分に整っていない社会の方に障がいがあるのではないでしょうか」と警鐘を鳴らす。

■2人の思いが交わり、とんとん拍子で進展

一方、横山雅始さんが代表を務める一般社団法人「日本在来馬振興会」では和種馬の保護育成と、活用方法の研究を主な目的として大阪府柏原市に乗馬クラブ「和種馬ホースランド」を開設。ここでは日本では珍しいウエスタン馬術のトレイルが体験できたり、和装コスプレ騎乗も実施していることから注目度も高く、多くのメディアにも取り上げられてきた。

そんななか、海外での生活も長かった横山さんの脳裏からはフランスのテレビニュースで観たワンシーンが離れなかったという。それは1頭のよく手入れされた馬が介護施設らしき建物の部屋を訪問。男性が横たわるベッドの側に行き、鼻を男性の顔に寄せると、男性は手でゆっくりと馬のたてがみをさすっていた。

「まるでファンタジーの一コマを観るような気分でした。馬が人間の部屋に入って友達同士のように親しくする。日本では考えられない光景だった」

実はこれは英語ではEquine assisted therapy (エクイン アシステッド セラピー)と言われる馬介在療法で、日本ではホースセラピーと呼ばれている。欧米では1960年ごろから始まり、動物介在療法の一種として確立され、運動機能の回復促進や情緒や精神の安定に寄与している。

そこで横山さんは人懐っこくて優しい和種馬ホースランドの馬たちをホースセラピーにいかせないかと思いついたが、確信はなかったことから獣医でホースセラピーの権威でもある東京農大の川嶋舟准教授に相談。和種馬ホースランドを訪れた際に「ここの馬たちは十分ホースセラピーに使えますよ」という、お墨付きをもらったという。

これを受けて横山さんは早速、放課後等デイで発達支援を行う事業所を複数経営する福井さんに「和種馬ホースランドの近くで事業所を開設し、ホースセラピー特化型の放課後等デイのサービスを行いませんか」に提案。福井さんもホースセラピーに興味を持っていたことから話はとんとん拍子に進み、今回の事業所を和種馬ホースランドの徒歩圏内で開設する運びとなった。

■ホースセラピーのカリキュラムは?

「私たちのホースセラピーは、馬の餌やりや馬の観察、乗馬などを通じて情緒の安定や精神と身体の機能向上を目指すものです」と横山さん。主なカリキュラムはこんな感じだ。

▽馬とご挨拶(コミュニケーションの取り方)

▽餌やり(ニンジンなど)

▽ブラッシング

▽シンプル乗馬レッスン(引き馬での騎乗可能な方のみ)

▽馬とお散歩(スタッフの補助でリーディングが可能な方のみ)

▽描いてみよう、今日の馬たち(クレヨンなどで触れ合った馬の印象を描きます)

「馬に餌を与えたり、馬の世話や観察をすることで優しさや思いやりが芽生え、情緒の安定にも繋がります。また馬に乗ることでバランスの取り方を覚え、自然に全身の筋肉強化を行うことができます。馬を観察して絵に表現することで、注意力、集中力の向上と情緒の安定をはかります」

現在、和種馬ホースランドにいるのは道産子6頭で、うち2頭の子馬は大阪生まれだ。

「馬と触れ合い、絵を描くことによって会話の機会も増えますし、何より子どもたちの表情や目の輝きが違ってくる。心身のケアをすることができれば、馬も人もハッピーになれる。今後は道産子以外の和種馬とも関わって、彼らの活躍の場を広げて絶滅を防ぎたい」と横山さんは話している。

◇児童発達支援・放課後等デイサービス「tenba」

大阪府柏原市円明町11-17-401

電話:072(959)5768

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