「最悪、脚を切断することになります」 狩猟用のくくり罠にかかった野犬 保護団体スタッフに獣医師は告げた

行き場を失ったワンコの保護・譲渡活動を通じて、「殺処分ゼロ」を目指す保護団体・ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。その本拠地である広島県は、かつて犬猫の殺処分ワースト1でした。

広島には温暖な気候で野犬が身をひそめる山野があり、街や人里には食べ物が豊富です。栄養状態が良くなれば繁殖を繰り返してしまうため、地元の動物愛護センターに保護される野犬は一向になくなる気配はありません。

ピースワンコでは、2022~2023年の冬の終わりにも、動物愛護センターから15頭のワンコを引き出すことにしましたが、そのうちの3頭はトラバサミ、くくり罠といった狩猟用の罠にかかったせいで足をけがしていました。中には、深い傷を負いうまく歩けなくなっているワンコもいました。

大けがをワンコも行き場のない中で必死に生きようとしていました。この姿を見たスタッフは「絶対に助ける!」と決意しました。

■もがき苦しみ自分の脚を噛みちぎるワンコも

罠にかかりけがをしたワンコの中で特に重傷だったのはハイビルというメスのワンコ。右前肢の深い傷により、脚が2倍に膨れ上がっている状態でした。

スタッフによると、くくり罠はあちこちに仕掛けられており、かかった野犬は瀕死の状態で保護されることも少なくありません。もがき苦しんで自分の足を嚙みちぎる野犬もいるそうです。

聞くだけで胸が痛くなりますが、今回引き出したハイビルだけはなんとかけがを治してほしいとスタッフは引き出し後、すぐに獣医師に診てもらうことにしました。傷が痛むのでしょうか。ケージを移し替えた際、ハイビルは右前脚をかばいながらゆっくりと歩いていました。その姿は本当に苦しそうで、見ているこちらも辛くなりました。

獣医師からの診察中、ハイビルは暴れることもなくじっと耐えていました。脚の神経が麻痺している訳ではないので、治療中でも傷口が痛むはずなのですが、それでもハイビルはじっとおとなしくしていました。スタッフに顔の周りをなでられても威嚇をしないどころか、むしろ安心するような表情を見せました。人馴れしていないはずの元野犬ですが、人間の気持ちを瞬時に感じ取ってくれたようです。まるで、「助けてくれてありがとう」とでも言っているかのように。

■「最悪脚を切断する可能性がある」

診察に当たった獣医師はこう言いました。「傷口が腐っている部分がある。かなり状態が悪いので、最悪脚を切断する可能性がある」と。

肩を落とすスタッフに、獣医師は「皮膚を寄せて縫合手術をする」と説明しました。獣医師による懸命な手術、そしてハイビルの強い生命力が通じたのでしょうか、最悪の事態を免れ、少しずつ良くなっていきました。

■経過観察中ながら、回復傾向にあるハイビル

手術から約1カ月後、ハイビルはまだまだ経過観察中で、脚のけがの完全な回復には至っていません。しかし、傷口は当初よりもかなり良くなったそうです。

喜ぶスタッフでしたが、同時に以下のような話もしてくれました。

「ハイビルが脚を失わずに済んだのは、全国のたくさんの支援者の方々がピースワンコを支えてくれているおかげです。これからも、活動を支援してくださっている方々と共に、多くのワンコたちを助けていきたいです」

ハイビルは野犬として過酷な生活を送り、さらに仕掛けられた罠で大けがを負いましたが、それでもピースワンコのスタッフや獣医師のことを信じてくれました。傷が完全に癒えたら、様々な人馴れトレーニングを行うそうで。そして、幸せな犬生をおくれるよう、新しい家族とのマッチングをしたいとも……。

ハイビルの治療は現在も治療は続いています。

ピースワンコ・ジャパン

https://peace-wanko.jp/

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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