わが子のいじめ被害、親が気づいたきっかけ 「普段は短いお風呂が長いと思ったら…」「白いTシャツにうっすら靴の跡」

わが子が「いじめ」に遭っていたとしたら?…そう思うだけで胸が痛む人が多いと思います。2021(令和3)年度の文部科学省の統計によると、小・中・高等学校および特別支援学校における「いじめの認知件数」は61万5351件。決して少ない数ではなく、いじめは子どもを持つ親にとって、身近な問題であることがあらためてわかります。なお、いじめられている子どもが、そのことを親や周囲に訴えることは、なかなかないと言われています。保護者のみなさんに「わが子がいじめられている」と気づいた“きっかけ”を聞いてみました。親の見守りや関心がどれだけ重要か、体験談が物語っています。

■体に落書きされていた我が子

▽Mさん(次男/小学4年生)

私が、子どもがいじめられていると気づいたのは、実際にいじめにあってから、だいぶたっていたと思います。というのも、子どもは普段とずっと変わらない様子でしたし、多少ふさぎこんだり、落ち込む姿はありましたが、聞いても「うん、疲れただけ~」みたいにけっこう明るく答えていたので、私もそんなもんだと思い込んでいたんですね。

そもそも、お風呂は普段、カラスの行水タイプだった次男ですが、気づくと30分以上入っていることもあり「最近お風呂長いなぁ」と思ったのが半年以上前です。それでふいにお風呂場に行って扉をあけたら、ちょうど背中を向けて体を洗っている次男を見て固まりました。

腕のところに油性マジックか何かで「バカ」とかおかしな言葉が書かれていて、それを次男は必死にタオルで落としているところだったんです。ビックリして「ナニそれ!」と大声で怒鳴ってしまいました。

その後、お風呂から出た後に子どもに聞き出すと、泣きながらいろんなことを語りだすではありませんか。

・半年くらい前の体育の着替え時間、先生がいない時にA君にマジックで「バカ」と書かれた。

・その後エスカレートし、毎回ではないが、先生がいなくて水泳の授業の着替えなどでも、数人の子に押さえられて腕に落書きをされた。

本当に驚くと同時に怒りがわき上がり、帰宅した夫にすぐに相談しました。それまで気づかなかった自分に対する怒りも大きかったです。

   ◇   ◇

…聞いていても胸が締め付けられるような体験談です。体にマジックで落書きされる子どもの屈辱感、それを隠れてお風呂で必死に落としていたこと…。親としては耐えられない出来事です。

このママは気づかなかったことを非常に悔やんでいましたが、子どもの性格によっては本当に日ごろと態度が変わらない子もいますし、そもそもいじめられていることを隠そうとする子の方が多いので、注意深く見守っていないと見過ごすことは決して少なくありません。

■いじめの連鎖という問題

▽Yさん(長女/小学3年生)

子どもがいじめられていると気づいたのは、洋服からです。普段は赤や青といった色柄ものの服がほとんどなんですが、この時は白いTシャツを着ていました。

学童から帰宅するとスグにお風呂、脱いだ服は脱衣所の大きなカゴに入れて、そのままバサっと洗濯機にいれるのが常なんですが、たまたま1枚手にとって洗濯機に入れようとして、子どものTシャツにうっすらですが靴で踏まれたような跡がついていたんです。

「着替えの時落として誰かに踏まれたのかな」とその時はあまり気に留めませんでした。ただ何となく「ひっかかる」ものはあって、その後は洗濯する時に子どもの洋服をちょっと見るようにしていたんですね。するとやはり、他の服でも靴底の跡(ゴムの上履き靴の跡だとわかりました)がついていました。

もしかして、誰かに蹴飛ばされたり、踏まれているようなことがあるのかも?と急に思い立ち、あわてて子どもに問いただすと口を閉ざしてしまいました。でも何も言おうとしないことで「ああ、誰かに何かされてるんだな」とようやく本当に気づいたんです。

紆余曲折を経てわかったのは…

・男子で「バイキン」といじめられている子がいる。

・その上履きを「バイキン回し」といって一部の男子・女子が投げたりしていた。

・いじめに加担していた女子グループが、その上履きを使って、着替えで脱いだ服を叩いたり、「バイキンハンコ」と言って靴を洋服に押しつけたりしていた。

いじめの前にすでに別のいじめがあったとわかり、呆然としました。

   ◇   ◇

…まったく、いじめというのは思わぬ連鎖で広がるものです。大人の常識が通用しない、子どもの世界が垣間見えてきます。悪質で読んでいるだけでも怒りを覚えますが、こうしたいじめが実際にあるという事実から目をそらすわけにもいきません。

わが子がいじめの被害に遭うこともあり得るし、あるいは加害者になる、そして傍観者でいる場合は本当によくあることだからです。

洋服の汚れは見落としがちですが、誰かが何らかの力を加えたり、この体験談にあるように意外なことが原因で足跡がつくこともあるわけです。

実際に周囲でもいじめ・あるいはいじめに近い前兆の段階で「服がやけに汚れてる」「いつも転んだかのようにスカートに泥汚れがついている」こんなことを発端にして親が気づくことは比較的多いようです。

1度だけならともかくとして、何度も、あるいは一定の期間をあけて繰り返し「服を汚して帰ってくる」ようなら、一度きちんと子どもと話す時間を持ちたいですね。

■こんな時に気づいた!子どもたちの「いじめ」サイン

▽Uさん/小学2年生

授業参観で、うちの子が何か言うと押し殺したように周囲が笑う場面が何回かあった。あまりいい雰囲気の笑いではないように思ったので、その後、参観日でない日にいきなり学校へ行き廊下から見ていたら、完全にうちの子はバカにされ、先生がいない休み時間には笑うだけでなく、わざと机を倒したり、後ろから近づいて頭をこづいたりしては数人で大声で笑うのを見た。これはいじめでは?とすぐに担任に相談した。

▽Aさん/長男・小学3年生

よく行く店のおじさんが、下校中の子どもを何度か見かけていたようで「数人に囲まれてはやしたてられたり、何かこづかれたりしているみたいだけど大丈夫?」と言われ、初めて気づいた。おじさんは少し遠慮がちに私に話している感じがしたので、翌日会社を早退し、下校時を見守っていると、ひとりで帰ろうとする子どものランドセルを後ろから鷲づかみにして倒そうとしたり、手に持っている体操着を取り上げて道路に投げたりしていた。その場で怒鳴りつけ、学校と親に連絡した。

▽Tさん/長女・小学5年生

とにかくモノがなくなる。消しゴムとか鉛筆、体育着の帽子、絵の具セットの筆。たいしたモノではないがあまりに頻繁なので子どもに聞くと「貸した」「落とした」「わかんない」しか答えない。結局、担任と話したが今ひとつらちが明かず、業を煮やして学年主任と教頭先生に連絡し面談。結局、ウチの子だけではなく、女子グループのリーダー格が取り巻きに命令、おとなしい子数人を的にしていじめていたようです。他にやられている子の親と共に対応しました。ただ、その後「言いつけた」として、ウチの子はさらにいじめを受けました。いじめは発見しても、そう簡単に始末がつかない。その間、何より子どもの気持ちに寄り添いたいのに、なかなか上手くいかないことに本当に悩みました。

■親が、周囲が、いじめに関心を持って注意していくこと

いじめは「初期の段階で気づくのが大事」と言われます。でも実際には、いじめられている事を隠す子の方が多いですし、高学年にもなると悪質で見えないいじめも出てくるので、親としては大変に難しいところです。

いじめの問題は学校全体で取り組んでいたり、地域に相談窓口がある所もあります。また駆け込み寺のような団体組織もあります。しかし、いじめの解決方法は「特効薬」があるわけではありません。それでも諦めず、親子で模索しながらでも「いじめ」をやめさせなくてはなりません。わが子に関係がないこと…などと思わず、いじめに関して常に関心を払い、子どもを見守ることも大切です。

【協力】

▽株式会社マモル(いじめのサインを見逃さない、こどもを守るサービス)

(まいどなニュース/BRAVA編集部)

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