「姉妹なんだから支え合って」と言われても…精神障害のある姉を10年支えてきためぐみさんの決断

ストレスや環境の変化によって、うつ病や不安障害など精神的な病気が起こることがあります。症状が重かったり、長く続いたりすることもあるようですが、患者を支える家族はどのようなことを思い生活をしているのでしょうか。精神障害のある姉を10年ほど支えた経験のあるめぐみさん(40代・東北在住)にお話を伺いました。

■うつ病と診断された姉

姉のAさんとめぐみさんは年子で、父親の仕事の都合で引っ越しの多い暮らしをしていました。高校卒業後はお互い進学のため実家を離れ、めぐみさん自身が結婚するまで姉であるAさんと一緒に暮らしていたそうです。当時、料理はできるが掃除は苦手で天然気質のAさんと、お互いが苦手なところを補いあうようにして生活していたそうです。

めぐみさんが結婚した1年後にAさんも結婚し、お互い子どもを育てる母となりました。めぐみさんはその後未就学児の子どもたちを抱えて離婚。実家に戻って暮らしていました。ちょうど両親は遠くで働いていて不在だったこともあり、子どもと穏やかに過ごしていましたが、思わぬ事態で生活は一変します。

「数年後に県外に嫁いだ姉の夫婦関係がうまくいかなくなってしまって。一時別居となって姉だけが実家に戻ってきました。また一緒に生活をするようになりましたが、姉の様子はそれからどんどん変わっていってしまって…大変でした」とめぐみさん。

別居という形で帰宅してきたAさん。子どもと一緒に暮らしたいと2年半かけて法定で争いましたが、裁判の判決の結果、Aさんが親権を得ることはできませんでした。

「離れて暮らす子どもといつか一緒に生活したい!」と言っていたAさんでしたが、職場の人間関係がうまくいかず転職や失業を繰り返していました。判決で気持ちが切れてしまったことも影響し、ついには働けない状態に。Aさんはうつ病と診断されました。

自分のこともうまくできなくなってしまったAさんを、両親不在の中、めぐみさんはできる限りサポートしていました。しかし、Aさんの状態は悪化する一方で、めぐみさんが攻撃を受けることも増えていったそうです。

■「姉妹なんだから支え合って」

Aさんから毎日聞かされる過去のことに対する愚痴や、めぐみさんに対する罵倒・被害妄想は、めぐみさんの子どもたちがいてもお構いなしで続いていたそうです。時には暴力を振るうようなこともあったそうで、めぐみさんは「もう限界だ、少しでいいから家族だけの時間が欲しい」と思い、引っ越しを決めたと言います。

「怠けているわけではないことはわかっているんです。でも、私も一人の人間ですし、ずっとサンドバッグのように愚痴や罵倒を受けることには耐えられませんでした。その頃、長男も小学校に上がるタイミングで、このままじゃ子どもたちも巻き込まれると思い、姉と離れる決意をしました」と、めぐみさんは苦しい表情で当時の決断を振り返ります。

実家から離れためぐみさんは、子どもたちとの時間を最優先する日々を送っていたのですが、Aさんは情緒が不安定になるとLINEや電話、突然めぐみさんが住むアパートへ訪問などをしてきたそうです。引っ越しをしたことも「私を捨てた」、子どもを育てていることも「お前ばっかりずるい」と言われ続けたそうです。

それでもAさんとの関係を絶たなかったのはなぜだったのでしょうか-。めぐみさんは「『家族だから』というのが一番大きいと思います」と話します。

「その後に姉は再婚し、新たなパートナーと暮らすようになりました。両親が実家に帰ってきたら、姉の面倒は代わりにみてもらおうと思っていて、安定した状態で“バトン”を渡せるよう、姉とはなるべく連絡を取って、接点を持ち続けていました」と話します。

しかしその後、実家に戻ってきた両親に、めぐみさんは「これからは自分の子どもたちのためにすべての時間を使いたい」と姉の面倒を見るように頼んだそうですが、一筋縄ではいきませんでした。両親は「Aちゃんがかわいそう」「姉妹なんだから支えあって」と言い出しました。そしてめぐみさんが断ると、Aさんだけでなく両親までもが一緒になって、めぐみさんのことを罵倒し始めたそうです。

その後、AさんからSNSを通して誹謗中傷を受ける日々がはじまったそうです。書かれている内容は事実無根だったそうですが、「SNSで障害のある姉を捨てた妹、いつも妹ばかりずるい、と発信するんです。どんどん投稿が増えていくと、精神障害があるからしょうがない、では片づけられない苦しい気持ちになりました」と言うめぐみさん。ある日ついにストレスで左耳が聞こえなくなってしまったのです。

■両親とAさんの双方と距離を置くことに

気がつけばうつ病となった姉をサポートしはじめてから、10年ほどが経とうとしていました。「これ以上は無理だ」と思っためぐみさんは、両親とAさんの双方と距離を置くことにしたそうです。距離を置くと2カ月ほどで耳の状態は回復したそうです。

その後もAさんの情緒は安定せず、精神障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を取得しました。また再婚生活は2年で破綻し、両親が住んでいた実家へ戻って来たのだといいます。最近母親から一方的に連絡があったそうですが、めぐみさんは「そう」とだけ返事をし、あまり関わらないようにしているそうです。

「家族だから、何かあったら助ける気持ちはあるんです。でも、こちらばかり頼り続けられると私にとって一番大切な存在である子どもたちを守れなくなってしまいます。ですので、はたから見たら冷たいかも知れないけれど、一定の距離感を保った関係が私にはちょうどいいんです」と話すめぐみさん。

精神障害者手帳を取得した現在も、両親はAさんが障害者になったことを認められず、福祉のサービスの利用を拒んでいるといいます。支援を受けてこなかった中で、両親が過剰な期待を寄せてきたのがめぐみさんでした。

「障害がある姉を家族やみんなで支えなければ、という気持ちはわかります。でも、障害者だからなんでも許されるわけではないということもわかってほしいと感じています。私の人生は姉の面倒をみるためにあるわけではないんだと、姉にも両親にもわかってほしいんですけどね」とめぐみさんは話しています。

(まいどなニュース特約・長岡 杏果)

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