「コロナウイルス感染は自業自得」と考える人の特徴→非常時に政府の行動制限に賛成 阪大研究者らが分析

新型コロナウイルスの流行を巡り、「感染は自業自得」と考える人の割合は、欧米に比べ日本は突出して高いことが大阪大などの調査で分かっています。その後、研究者たちは日本における「感染は本人のせい」と考える人の特徴を探りました。見えてきたのは、非常時における政府の行動制限に賛成する人ほど、新型コロナ感染は自業自得と思う傾向でした。

大阪大学感染症総合教育研究拠点の村上道夫特任教授(常勤)、三浦麻子教授(大阪大学大学院人間科学研究科、感染症総合教育研究拠点兼任)らの研究グループは、2020年8月時点のオンライン調査のデータ(20-69歳の1207人)を踏まえ、感染流行早期において自業自得と思う人の特徴を明らかにしました。研究成果は英国・米国の科学誌「PeerJ」(オンライン)に掲載されました。

その結果、最も強く関連するのは、非常時における政府の行動制限に賛成することだとわかりました。「平均的な日本人が新型コロナに感染する可能性は低い」と思う人や若年者、男性が自業自得と思う傾向がありましたが、その関連は弱いものでした。また、回答者の居住地域、居住地域の人口密度、学歴、職業は関連がありませんでした。

新型コロナの流行以降、感染者への差別的言動や特定職業に対する偏見の顕在化などの問題が生じました。特に流行早期には 外出や営業などに関する行政からの自粛要請に応じない人や店などに対し、私的に取り締まる、いわゆる自粛警察といった行動が見受けられました。今回の研究の成果について三浦教授に聞きました。

ー自業自得に至る経緯、例えば、行動制限に賛成→がんばってルールを守る→「感染者はルールを破ったに違いない」と思うことで、自業自得という思いに行きつくのでしょうか

「この研究は、両者の関連を示しているだけで、それに至るものを特定するわけではありません。ただ、自業自得に至る思考という流れで考えるとそうだろうと思います」

ー自業自得という考え方がエスカレートすると、感染者に無関心になったり排他的になるのでしょうか

「この研究からはわかりませんが、感染者に寄り添うような行動には向かいにくいでしょうね」

ー「感染した人は自業自得」と考える人が、不幸にも感染した場合、気持ちのもっていきどころが難しいように思います。「責められたらどうしよう」と過剰に不安になったり、感染を隠ぺいする恐れも考えられるのでしょうか

「そうです。感染を自業自得と思うことは、感染したら自分が差別対象になってしまうかもしれないという危惧につながり、質問のような公衆衛生上の問題が生じかねません。私たちは、感染禍が始まった当初からそのことを繰り返し申し上げてきたつもりです。今はもうコロナ感染を自業自得という人は少なくなっているでしょうが、ポイントは、再びこういう危機事態に陥った時に同じようなことが起こらないために何をすればよいか、ということです。本研究で『とにかくルールは遵守すべき』という思いとの関連が見いだされたことは、大きな手がかりとなりそうです」

■欧米との比較では

2020年3月に慶応大、大阪大、広島修道大などの心理学者が日本、米国、英国、イタリアで実施したウェブ調査では、(1)感染した人がいたとしたら本人のせいだと思う(2)感染する人は自業自得だと思う-という二つの質問に、まったく思わない▽あまり思わない▽どちらかといえば思わない▽どちらかといえば思う▽やや思う▽非常に思う-の選択肢を設定。各国で約400人から回答を得ました。

 質問(1)で、「どちらかといえば-」から「非常に-」までを含めた「思う」は米で計4.8%、英で計3.5%でしたが、日本は計15.3%で本人に原因を求める傾向が強く、伊も同様でした。質問(2)では、「思う」は他国が計1~2%台でしたが、日本は計11.5%と際立って高いものになりました。また、質問(2)に対して、米は72.5%、英は78.6%が「まったく思わない」と強く否定しましたが、日本では29.3%にとどまりました。

(まいどなニュース・竹内 章)

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