今年も出産したシャムちゃん、子猫たちは交通事故に…「もう不幸な猫は増やしたくない」 そんな時に知った「スペイクリニック」の存在

三重県名張市のシャムちゃん(推定3歳)は、お外で暮らしています。毎日ご飯をくれる人はいるものの、特定の飼い主はいません。今まで3回ほど子猫を出産していますが、大きくなった子は…。今年に入っても4匹の子猫を生みましたが、生後3カ月頃に2匹が交通事故に逢ってしまいます。

1匹は足を骨折する重傷、もう1匹は見つかったのは足の先だけで、恐らく身体ごと車に持っていかれ、既に命はないでしょう。この状況を見たご飯をあげている女性は悲しみます。もうこんな経験はしたくない、不幸な子猫を増やさないようにしたい…。

そんな時に知ったのが「スペイクリニック」の存在です。避妊・去勢手術を専門に行う動物病院。名張市にはありませんが、なんと岐阜県から出張でやってきてくれるとのこと。その名も「にじのはしスペイクリニック」、髙橋葵獣医師が中心に活動をしています。

「にじのはしスペイクリニック」を呼んだのは、名張市で保護猫活動を行う奥村祥仁さん。協力は同じく名張市で活動するにゃにゃ俱楽部や個人ボランティアの皆さんです。手術車両はにゃにゃ俱楽部代表の自宅駐車場に停められ、そこが臨時の病院になりました。

この「にじのはしスペイクリニック」を呼ぶために必要なものは多くありません。手術車両が停められる場所と、術前・術後に猫を休ませる場所、器具を洗うための水道に人間のトイレ。忘れてはならないのが、お手伝いのスタッフです。これらが揃えば、全国どこへでも必要としてくれる人のもとへ行けるとのこと。

2022年11月19日、名張市で初めてのスペイクリニックが! 出張ではあるものの、麻酔もできる本格的な設備を備えています。この日、手術を受けたのは22匹。保護猫団体が捕獲した猫だけでなく、シャムちゃんのようにご飯だけ人間からもらっている猫も手術を受けます。

スペイクリニックの特徴は、一般的な動物病院よりも手術費用が抑えられる点。通常なら1万5000円~3万円ほどかかる手術費用が、オスは6600円、メスは7700円と約半額です。これなら手術費用がネックでなかなか去勢・避妊手術ができなかった人でも気軽に行えます。

奥村さんが今回スペイクリニックを誘致しようと考えたのは、この「気軽さ」を知ってもらいたいから。去勢・避妊手術をするのでも、一般的な動物病院だけでなく他にも選択肢がある。まずは「知ってもらう」ことが重要だと考えておられます。

その考えに至ったのは、多くの人からの相談があったため。増え続ける野良猫に頭を痛めているものの、対処の仕方が分からない人が多いんです。殺処分以外の野良猫対策、その中のひとつがスペイクリニックだと考えたのです。

今回の出張スペイクリニックに奥村さんは言います。

「とても助かりました。一度にこれだけの頭数をしていただいたことも助かりましたし、費用面でも助かっています。また名張市に来てもらう予定ですので、お困りの方はぜひご利用ください」

にゃにゃ俱楽部代表のsanaeさんは、こんな感想を抱きました。

「今回、私一人がお手伝いをしましたが、困った場面もありました。一人で猫を手術車両に運んだり、術後の観察をしたり。バタバタだったんです。今後協力してくださる方が複数人おられたら大変助かります」

初めて挑戦したからこそ、見えてきた課題があったよう。

さて、にじのはしスペイクリニックで手術を受けたシャムちゃんはというと、元の場所へ返されることに。お耳はキレイに桜カットしてもらいました。シャムちゃんの子猫たちは毎月第4日曜日に東町集議所(名張高校近く)で開催されている譲渡会に出て、新しい家族を待ちます。

シャムちゃんにご飯をあげている女性は言います。

「もっと早くしていれば良かったです。これからはシャムちゃんの健康にも気遣いながらお世話をしていきたいと思っています。可愛いうちの子ですから」

スペイクリニックは日本にまだ30軒ほどしかありません。もっと数が増えれば、不幸な猫は減っていき幸せをつかむ猫の数は増えていくでしょう。猫による糞害等の被害が減れば、人間の笑顔も確実に増えます。

幸せのための選択肢、スペイクリニックの存在を知ってください。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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