犬猫150匹超える多頭飼育崩壊…神奈川県が飼い主に犬猫の所有権放棄を指導 動物愛護団体など保護へ

神奈川県・県央地区の民家で犬猫が増えすぎて、飼い主が適切に飼育できなくなる「多頭飼育崩壊」が起きたことが分かりました。これまで発覚している数は、犬97匹と猫60匹前後の計150匹余り。今回親族からの通報などを受けて同県が飼い主に対し犬猫の所有権を放棄するよう働き掛けるなど行政指導を始めたといいます。

■劣悪な環境で飼育し衰弱させるなど虐待事案・・・警察も動物愛護法違反として捜査へ

動物愛護団体「たんぽぽの里」(同県相模原市)代表の石丸雅代さんは「他のボランティア団体と協力しながらどのようにレスキューをするか行政を交えて話し合いをしつつ進めているところです。現在、一般社団法人・動物虐待インターベンションと地元個人ボランティアが毎日現場に入っており、当初保護した動物は私たち団体が運営する譲渡兼病院施設『たんぽぽあだぷしょんぱぁく』に搬送され、受診・治療などを行いました」などと、現状を説明。

さらに、崩壊現場の惨状に「犬猫たちは皮膚がボロボロで爪は伸びきり、そしてふんまみれ・・・そして、とても沈うつな表情を浮かべている子たちを見るととてもいたたまれない気持ちになりました。診察した当施設の獣医師から動物たちの所見をもとに県に対して飼い主によるネグレクトの通報を行ったほか、同獣医師が現場に立入り、劣悪な環境で飼育し衰弱させるなど虐待事案として警察にも通報。警察は動物愛護法違反などで捜査に乗り出すかと思います」といいます。

大規模な多頭飼育崩壊の発覚までの経緯をはじめ、現状や今後のことを、石丸さんや一般社団法人・動物虐待インターベンション代表の河野治子さんに聞きました。

■飼い主「崩壊はしていない」と主張、行政側が何度足を運んでも拒絶…今回親族の通報で発覚した

--神奈川県・県央地区で最大級の多頭飼育崩壊が発覚した経緯を教えてください。

石丸さん「これまでも県が再三訪問していましたが、飼い主本人は高齢犬や具合の悪い猫を保護していて看取りをしている、崩壊はしていないと主張していて、敷地内を見せてもらうことさえできませんでした。

今回ご親族の方より、相談が寄せられて実態を把握。動物虐待インターベンションさんが親族の方に招かれて現地入りし、飼い主や警察、行政との調整を始め、地元ボランティアさんを伴って動物の調査などを開始していました。現在も継続して主となり動いています。たんぽぽの里は今回、管轄保健所、県動物愛護センターや県生活衛生課と保護に関しての調整役を担っています」

--今回親族からの通報などにより、崩壊現場に入ることができたわけですね。

石丸さん「はい。親族の方は惨状を見て非常に驚かれていました。ボロボロの動物を見て素人ながら、これは動物虐待であると確信されたようです。県動物愛護センター、保健所に相談をしましたが、念には念を入れて動物愛護団体にも連絡を取られました。

これをきっかけにして、現在は神奈川県とボランティアが協力して早期解決のために協議を開始しました。所管の保健所は飼い主との話し合いを継続していて飼い主宅に残す動物以外の飼育放棄の意向を固めさせることができたようです」

■ネグレクトによる沈うつ状態と疑われる犬猫も 愛護団体代表「手放すことも愛情であることを実感してくれている」

--レスキューに入られた際の現場の様子は。

河野さん「犬も猫も状態が良くありません。ふん尿まみれで毛玉だらけ。皮膚の疾患を疑わざるを得ない子が散見されました。実際に保護をしてみてバリカンを入れて巨大な腫瘍のようなものが見つかった子もいます。多頭飼育崩壊現場に多く見られる無表情はもちろん、沈うつ状態と疑われる子もいました。

現在、飼い主の許可を得て毎日2人1組で中に入っています。代わる代わるいろんな人が来ても、『みんな優しいよ』というのが伝わるように、少しおいしいものを食べさせながら距離感を縮めるなどし、人間との触れ合いを学ぶプロセスを実行しています。あげているおやつは近い将来投薬のときに使えるものに限定しています。生活に小さな刺激を作る。毎日このあまり知らない人たちがくるとおいしいものが食べられると分かってくると、『人間というのは悪くないな』という認識に変わっていきます。このように保護後の人馴れもスムーズに進めることができるようにしたいと考えています」

--多頭飼育崩壊が起きた背景や今後について、お聞かせください。

河野さん「動物をかわいいからといってむやみやたらに飼育すると崩壊につながります。飼育というのは餌だけやっていればいいというわけではありません。動物が心地よく日々過ごせるためのケアは必要不可欠です。病気の予防と治療、ワクチン接種や健康診断、去勢避妊手術など獣医療にかけることは必須。適正な飼育のためには獣医療が要です。獣医療費が捻出できないならば、それ以上の数の動物を飼育できないと諦めなければいけません。今回の現場の大多数の犬猫たちが獣医療にかけられていない子たちばかり。典型的なネグレクトの多頭飼育崩壊です。

今、飼い主は私たちの話に耳を傾けてくれています。手放すことも愛情であることを実感してくれているので、行政と協働して飼育放棄をしてもらいながら保護を進めていく予定です」

  ◇   ◇

今回の多頭飼育崩壊に伴い、保護した犬猫たちのために支援を募っています。支援については、Twitter(@cat_hometown)のDMなどにお問い合わせください。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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