旧統一教会、韓国ではなぜ関心薄い ソウル市民「宗教団体というより普通の企業のイメージ」 

 安倍晋三元首相が凶弾に倒れた事件をきっかけに、日本では旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の実態や政治家との関係が連日、トップ級の扱いで報道されている。8日には安倍元首相を国葬にする理由が岸田文雄首相から語られ、統一教会と関係があった自民党国会議員が179人いたことも公表された。しかし、日本に比べると発祥の地・韓国では、ほとんど話題になっていないし、実際に現地で取材しても関心が薄かった。なぜか。そこには、こんな理由があった。

 安倍元総理大臣暗殺の一報は韓国でも大きな衝撃を持って迎えられた。在任中は韓国に対し、強気な姿勢を崩さず、それゆえに韓国では「NO Abe」と反発が強まり、日本製品の不買運動にまで発展したのは記憶に新しいところ。しかし、事件の背後に韓国生まれの統一教(トンイルギョ)の存在があったと伝えられても、なぜ、この両者が結びつくのかほとんどの人が理解できていない。名門、高麗大出身でソウルに住む知人(50代男性)がこう話す。

 「安倍さんは韓国でも非常に関心の高い政治家だったので、演説中に撃たれたと聞いて驚きました。しかし、その後に犯人は統一教に恨みを持つ人間だと知って、調べると母親が多額の献金をして一家が崩壊したというではありませんか。私がまず思ったのは理性的な日本人がなぜ、そこまでカルト的な宗教にだまされてしまうのか。不思議でした」

 疑問点はこれだけではなかったようで、さらに、こう続けた。

 「それともう一点。保守派の安倍さんと韓国で生まれたいかがわしい宗教が裏で結びついていたのも不思議。残念ながら人は弱い生きもので、分かっていてもカルト宗教にのめり込んでしまうんでしょうね。それと、政治家は票をくれるなら誰にでも魂を売ってしまうことが分かり、悲しい気持ちになりました」

 そもそも、私のような50代後半の平均的な日本人が統一教会と聞いて真っ先に思い出すのは霊感商法と人気アイドル歌手だった桜田淳子さんの合同結婚式だろう。合同結婚式という言葉もそのとき初めて聞き、見ず知らずの人となんで結婚するのか理解できなかった。

 さらに、洗脳されていたということでは新体操のスターだった山崎浩子さんや女優の飯星景子(本名・飯干恵子)さんの名前も頭に浮かぶ。特に飯星さんの場合は父で作家の飯干晃一さんが記者会見を開き、娘の脱会を願い、涙ながらに訴えていた場面が印象的。調べると1992年10月のことだった。

 統一教会は1954年、韓国・ソウルで文鮮明(ムン・ソンミョン)によって創設され、日本では1964年に宗教法人として認められた。その後はアメリカにも進出している。一時は韓国でも合同結婚式が話題になったというが、いまではイメージが変化している。どうやら統一教会は韓国では宗教団体として一部の人にしか認識されていないようだ。先ほどの知人が言う。

 「統一教は1970年、80年代の韓国が貧しかった時代に勢力を拡大し、合同結婚式でも話題になった。しかし、その後は表だった宗教活動はしていないんじゃないですか。ソウル駅近くに世界日報というメディアを持ったり、学校や飲料メーカーなどを経営していて、韓国での認識はいまでは宗教団体と言うよりも普通の企業のイメージがある。たぶん、韓国の人には日本の統一教会と韓国の統一教が結びついていないんじゃないでしょうか」

 教義のひとつに「エバ国家日本はアダム国家韓国に贖罪するべし」というものがあり、普通の人が聞くと「なんだ、それ」と思いそうだが、これをもとに日本の信者からの献金などを正当化してきたとされる。しかし、韓国でも日本でも一般人は当然のことながらそんなことは知らない。日本に留学経験のある別の友人(50代男性)が言う。

 「韓国はキリスト教徒が6割ほどいて、たくさんの宗派に分かれている。統一教もそのひとつですが、早くから異端と認定されていて、ほとんどの人が怪しいと思っているんです。だから全く相手にされていません。今回、日本向けに誤解を解くようなデモがソウルであったみたいですが、規模としても小さく、だれも気に掛けてませんよ」

 それにしても、ふに落ちないのは「嫌韓」の保守政治と日本をさげすむような教義を持つ統一教会の深い結びつきだろう。しかし、このねじれこそが問題ではないだろうか。日韓の事情に詳しい大阪・鶴橋に住む在日2世(60代男性)がまとめてくれた。

 「統一教会は韓国では、変なを意味するサイビ宗教とみなされていて、明らかなカルト宗教団体です。ただし、彼らは自分たちの目的を達成するためなら政治を利用し、政治に食い込み、ネットワークビジネスを展開し、資金を稼いでいる。以前とは違って、お金を集める方法も巧妙に進化しています」

 今後、自民党は統一教会との関係を断つと言っているが、姿形を変えて接近し、政治家も薄々気づきながら利害が一致すれば、再び手を握るかもしれない。

 「政治はお金が掛かるし、選挙になると人も必要。落ちればただの人ですからね。票がほしい政治家と、政治家のお墨付きがほしい宗教団体とはウインウインの関係、ギブアンドテイクの関係になりやすい。しかし、一国の首相が殺されたことをもっと強く受け止めてほしい。悪いところがあったのに、ここまで放置していたのが良くなかった。この際、膿は全部出し切るべきでしょう。あと宗教は救いであってほしいし、政治家はもっと志を高く持って、政策で戦ってほしい」

 法整備を急ぐ必要がある。

(まいどなニュース特約・山本 智行)

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