明るい髪色に「まともな職に就いてる?」「45畳以上のリビングが必要」…猫の譲渡会で困惑した“中傷”と“不可解ルール”

ペットショップで命を買うよりも、保護猫を迎える選択をする人も多くなった近年、全国各地の動物保護団体は保護や譲渡に力を注いでいます。動物を譲渡する時、保護団体が一番気にかけているのは虐待を防ぐこと。様々な条件を設け、里親を審査することも少なくありませんが、それは命を守るために必要なこと。しかし、一部の保護団体では里親希望者の見た目を中傷したり、現実的に難しい譲渡条件を提示したりと、「審査」を超えた見定めがなされているよう。

3匹の愛猫と暮らすanco_52さんは、そんな保護団体に見た目を中傷され、“人間都合”な条件を突き付けられました。

「単身者よりもファミリーが優遇されることは理解していますが、なぜこんなにも譲ってもらえないのかと疑問だらけでした」

■現実的に難しい譲渡条件を次々と提示された

anco_52さんにとって猫と暮らすことは、生きていく上での目標だったそう。それを叶えるため、5年前、とある譲渡会に参加しました。

anco_52さんが提示した条件は「一人暮らしでも譲渡可」のみ。

「丸顔で大きな猫だったらいいなとは伝えましたが、年齢や性別、柄のこだわりは一切なく、人馴れしているかも重視していませんでした。もともと野良猫を保護したいと思っていたので、とにかく猫ならいいと考えていたんです」

ところが、保護団体はanco_52さんの明るい髪色を見て、「そんな髪色でまともな仕事に就けるわけがない」と中傷。家を空けるのは4時間までで人並みの収入を確保するようにとの現実的に不可能な条件を提示してきました。

髪色と仕事の出来は関係がないのでは…?そう思ったanco_52さんは自分がちゃんと働いていることや具体的な年収、ペット可のマンションに住んでいることなどを伝えました。

そして、単身者OKだと言われた茶トラの兄弟猫の引き取りを希望。しかし、保護団体は「同じ柄なんて、つまらないからおすすめしない。他の猫にしたほうがいい」と却下。他の猫は単身者NGなどで条件が合わない子ばかりでした。

結局、この譲渡会では猫を譲ってもらえず。しかし、猫との生活を諦めきれなかったanco_52さんは後日、別の譲渡会に参加。同じ希望を伝えると、「1匹だと可哀想だから2匹ならOK」と言われたため、参加している猫の中から2匹選ぶことに。

すると、片方の保護主から「あの家の猫と一緒にされるのは嫌だから、譲れない」と譲渡を拒否されました。

「会場内で2匹選ぶならいいと言っていたのに…。先ほど聞いた条件が変わったのでしょうかと聞いても『無理なものは無理。とにかく、あの家の猫はダメだから他の猫にして』の一点張りでした」

猫が病気を持っているわけでもないのに相性すら確認させてもらえず、人間関係の問題で譲ってもらえないことにanco_52さんはガッカリ。その譲渡会では「45畳以上のリビングがある家以外は譲れない」とも言われたため、本当に猫を幸せにしたいのだろうか…と疑問を抱きました。

あまりのハードルの高さに心が折れたanco_52さんはその後、ネットの里親募集サイトで単身者OKと記されていた2件の里親募集にダメもとで応募。

「1件は私よりも好条件の方からの申し出があり、断られてしまいましたが、残りの保護主さんから連絡があり、猫たちの健康診断に同行させてもらえました」

この保護主さんは人柄を見てくれ、anco_52さんは2匹の兄妹猫を譲ってもらえることに。ようやく、念願の猫ライフをスタートさせることができました。

■譲渡会で猫に聞かせたくない「譲渡理由」に直面

2匹の猫と暮らす中で、もう1匹お迎えしたいと思ったanco_52さんは1年前、再び譲渡会へ。

「今回は希望する子がいましたが、その子は人気だったため、1件も申し込みがなかったハチワレちゃんを勧められました」

しかし、その時、保護主が口にした「Aちゃん(希望した子)は人気だから譲れないけれど、Bちゃん(ハチワレちゃん)は人気がないから、この子なら即決でいいよ」という言葉にanco_52さんの心は痛みました。

「そんな言い方は悲しいですし、そう思っている人のところで暮らすのは可哀想だと思ったので、引き取ることにしました」

迎えたハチワレちゃんのかわいさにanco_52さんは日々、胸キュン。

「全身に毛が生えていて、『んー』と鳴く時点でかわいい。私が行くところについてきて、用を終えるまで近くで待っていてくれます。その様子を写真に撮りたくてリビングへ戻ると着いてきちゃうので、撮影が上手くいかないところも愛おしいです」

anco_52さんは3匹が伸び伸び暮らせるよう、広い家に引っ越し。猫たちの存在は、生きる理由になっています。

「猫のためにお金を稼いで健康に暮らし、猫が危なくないように部屋を片付ける…。猫のおかけでまっとうな人間の暮らしができている気がします」

■「私の話を聞いて譲渡会への参加を諦めてほしくはない」

譲渡会でanco_52さんに突き付けられた条件や譲渡拒否の理由は、どれも理不尽なものばかり。しかし、anco_52さんは猫のために厳しい譲渡条件を設けること自体には賛成しています。

「猫を想ってのルールであれば、厳しくても納得できます。でも、私に突き付けられたものは、どれも保護主の好みや思い込みなどの私情にしか思えず、猫を幸せにしたいという気持ちは一度も感じられませんでした」

けれど、自分の話をきっかけに譲渡会への参加を諦めることはしてほしくないとanco_52さんは語ります。

「譲渡会では、驚くこともあると思います。でも、それもまた思い出だと考え、ぜひチャレンジしてほしいです」

また、自身の経験を通し、単身者への譲渡が難しい現状を変える仕組みができ、安全に猫の譲渡が進むことも願っています。

「猫に限らず、生き物を飼うって難しいことなので、最低限知っておきたいことなどをテストにし、受けてもらうのはどうかなと。生体販売しているお店も必須で行っていいのではないかと思います。合格したから虐待がなくなるわけではないけれど、学んで損はないし、命を託す・守るという意味では免許のようなものがあってもいいのではないかと」

「この人になら命を託せる」という見極めは難しく、譲渡する側は慎重にならざるを得ないのが現実。しかし、一部の保護団体や保護主が設けている理不尽な譲渡ルールによって、すべての保護団体や保護主が誤解されたり、命が紡がれにくくなったりするのは悲しいもの。

ずっとのおうちで安心して眠れる猫が増えるよう、譲渡側も里親希望者も共に小さな命との向き合い方を、改めて考えていきたいものです。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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