ゴメス、ゆっくりおやすみ 学生や教職員から愛された神戸大の名物猫 「小さな体でも大きな存在でした」

学生や教職員、地域の住民から愛された神戸大学の名物にゃんこのゴメス(メス、三毛)が8月9日、虹の橋を渡りました。20歳とも24歳ともされるゴメスは人間ならば96歳以上という長寿猫。生前、よくひなたぼっこをしていた学生会館前のベンチには遺影や骨壺が置かれ、日傘の下には花束や猫用おやつが手向けられています。大学広報課の公式アカウントも追悼し、記者の取材時には手を合わせる学生がいました。ここまで愛されるゴメスはどんな猫だったのでしょうか。

馬術場を拠点にしていたゴメスは、10年ほど前から大学生協やサークル部室のある学生会館周辺で生活するようになりました。数多くの学生に愛され、ゴメスも人間とのやりとりを楽しむかのようなそぶりを見せ、その様子は今年2月に放送されたNHK「岩合光昭の世界ネコ歩き」(神戸編)で紹介され、学内外で話題になりました。

ゴメスを語る上で欠かせない人がいます。神戸大生協職員の一瀬洋司さんです。ここ10年間、ゴメスの朝昼晩のごはん、学生会館横に寝る場所を準備し、暑さが厳しい時期や台風が接近した時などは自宅に連れて帰るなど世話をしてきました。1995年の阪神・淡路大震災では、神戸大学の施設にペットの猫の飼い主が避難しましたが、大学に猫を置き去りにした人もいました。一瀬さんは猫にえさを与えるだけでなく、避妊手術をするなど、猫と人間が共生する活動を個人で続けています。現在も自宅に3匹の猫を飼っており、ゴメスとのかかわりもそうした背景がありました。

■「少し歩いて横になって…」

ゴメスが息を引き取ったのは8月9日午前10時ごろ。暑さを避けるため、数日前から一瀬さんの自宅で過ごしていましたが、流動食を受け付けない日が続いていました。獣医師に診てもらいましたが、脱水状態にならないよう点滴を施すしかできませんでした。これまで見せたことがない衰弱に、一瀬さんは別れを予期したといいます。

「ソファーで寝ていたゴメスはふと立ち上がって2、3歩いて横になりました。それが最期でした」と一瀬さんは振り返ります。「あと2、3年生きられたのではないかと後悔しています。ゴメスを可愛がってくれる皆さんに申し訳ない気持ちです」。

居場所だったベンチに死を知らせる貼り紙を張り、骨壺を置きました。夏休み期間中で通りかかる学生は限られますが、花束や猫用おやつ、キャットフードが次々に供えられました。ゴメスの写真を収めたミニアルバムも置かれています。「入学前の3月初めて会った時のゴメスです」「あくびをするゴメス。可愛い」と思い出を振り返っています。

骨壺は10月末までベンチに置くといいます。「ゴメスから癒されたり励まされたり、思い出がある学生は大勢いると思います。1人でも多くの学生がお参りに来てくれたら」

■「小さな体、でも大きな存在」

神戸大学 ゴメス bot(@kobe_gome2)さんは、ゴメスの日常を写真に撮り発信しています。

入学時の教科書販売の場でゴメスを知りました。コロナ禍の影響でキャンパスから学生の姿が消え、ゴメスを知らない人も増える中、「新入生にもゴメスやゴメスの魅力を知ってほしい」とゴメスbotを開始。「研究に行き詰った時、ゴメスを眺めたり触れ合って元気をもらっていました。その場に居るだけで癒しをくれる存在でした」と振り返ります。

botの活動などで2年ほど平日はほぼ毎日ゴメスの元を訪れましたが、意外なことにあまり懐いてくれませんでした。なでようとして引っかかれたこともあったそう。「ですが、一瀬さんから連絡をいただき、亡くなる1週間前にゴメスに会った時、体調が良くないにもかかわらず足元まで歩いてきてくれました。その時のことが忘れられません」

ゴメスの死から10日後の19日、もう使われることのない学生会館横のゴメスの寝場所の写真をアップしました。「大学が寂しくなったなと思います。ゴメスは小さな体ですが大きな存在だったんだなとあらためて感じています」と話します。

■キャットフードを差し入れた研究者

国際文化学研究科准教授の辛島理人さんは、2016年10月に神戸大に着任後、学生会館にあった書店に頻繁に行っていたこともあり、ベンチで学生の隣にいるゴメスをよく見かけていました。「生協の方が面倒を見ているのだろう」と、海外出張の際に買ったキャットフードを差し入れたのが縁で、一瀬さんと知り合いました。

一瀬さんからの連絡を受け、9日夜に訪ねると、その日午前に息を引き取ったゴメスはまるで眠っているようでした。辛島さんにとっての思い出は、NHKの「岩合光昭の世界ネコ歩き」で共演したこと。カメラが回り始め、辛島さんがベンチに座ると、ゴメスはすぐに膝に乗って目を細めました。「一発OKの名演技でした」。

「コロナ禍でキャンパスに学生がいないとき、ゴメスは寂しそうに見えました。対面授業が再開した時、ベンチでいきいきしていた姿が印象的です」と辛島さんは晩年の姿を振り返ります。「ゴメスの好物だったキャットフード、また差し入れしないとですね」

(まいどなニュース・竹内 章)

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