「ずっと入口で待ち続ける老犬がいる…」 保護団体が飼い主に知ってほしいこと、悪徳ブリーダーからの保護との違い

様々な事情で飼い主を失った犬、悪徳繁殖業者に繁殖され行き場を失った犬の、保護活動を行う団体は全国に多くあります。ただし、各団体とも地域性はもちろん、その役割・特徴もそれぞれ異なっていることはあまり知られていません。自然災害時にいち早く現地入りして保護活動を行う団体、カフェなどを併設しながら保護犬譲渡のサイクルに注力する団体、セミナーを開くなどし啓蒙活動を積極的に行う団体など……。

一般に保護犬団体と言っても、このようにそれぞれ特徴が異なりますが、特に老犬や障がい犬を多く保護するのが横浜にある保護犬団体・ケンの家です。多頭飼育崩壊からの保護、悪徳繁殖業者からの保護もあるようですが、「老犬」を保護する際は、元の飼い主に最後まで説得をするとのこと。どんな内容なのか担当者に聞きました。

■多頭飼育崩壊や悪徳ブリーダーからの保護よりも、かわいそうな最期を迎える老犬の保護犬

ケンの家ではコロナ禍となった2020年以降、飼い主の経済状況悪化などの理由から、数件の犬の保護依頼があったそうです。その多くは10歳以上の老犬だったとのことですが、ここでは老犬の保護を行ってきたからこそ、「『どれだけ経済的に苦しい状況だったとしても、なんとか看取るまで一緒に暮らしてあげてほしい』と説得する」と言います。この理由について担当者に聞きました。

「これまでに複数の犬を保護してきた経験上、ずっと飼い主にかわいがられてきた老犬が一番かわいそうです。かわいがられたまま年齢を重ねてきたのに、老犬になった後で飼い主から離されてしまうと、飼い主をずっと入口で待ち続けたり、なかなか新しい環境になじめなかったりと、一生を終えるまで寂しそうな様子が続くことが非常に多いからです。

そのため、仮に飼い主が経済的に苦しい状況だったとしても、諦めずに『なんとか看取るまで一緒に暮らして欲しい』と説得しています。

ここは、多頭飼育崩壊による保護や、悪徳ブリーダーからの保護と大きく違う点です。劣悪な環境の多頭で育ってきた犬たちは、ケージから出て、愛情を受けて生活できることにすぐに喜びを見出し、とても明るく毎日を過ごすことができるようになります。しかし、老犬はそうやって過ごすことができないことが多いです」(ケンの家・担当者)

■老犬や障がい犬の保護が多いことから、保護したものの、新たな飼い主が見つからないケースも…

もともとケンの家のスタートは代表者が自宅を使い、実妹とともに保護活動を始めた2001年に遡ります。活動を始めた当初は老犬を1匹引き取り世話をし最期まで見届けたところで、次の1匹を引き取るといったペースでした。しかし、老犬中心の保護団体が少ないこともあり、徐々に保護する犬の数が増え、スペースが限界になっていきます。何度かの自宅シェルター改装や引っ越しなどを経て、現在は自宅1階のシェルタースペースで25匹、第2シェルターで8匹の保護が可能になりました。

保護した犬の譲渡も行っていますが、老犬や障がい犬を多く保護していることから、譲渡が難しい犬もたくさんいるのが現状。そういった犬に対しても、命をまっとうするまで健やか・穏やかな犬生を送らせてあげるよう、出来る限りの治療やケアを行っています。

こういった保護内容を徹底する観点からも、老犬の保護依頼があった場合には、飼い主には最後まで説得をする理由もあるようです。

■人間の身勝手で行き場失う動物がいなくなることを願って

あくまでも筆者の想像ですが、保護犬や保護犬支援団体の存在が、多くの人々に知られるようになると、これに甘えるかのように、安易に団体の門を叩く飼い主も増えていそうな気もします。

犬を飼う以上一生を共にし、たとえ老犬や体を壊した犬になったとしても最後までケアするのは当然ですが、この点で挫折し安易に保護犬支援団体の力を借りようとする飼い主がいるのだとしたら、根本的な「生き物を飼う」という意識があまりに薄いように感じます。最後に担当者にも聞いてみました。

「人も犬もいつかは年老いて、命を終えるもの。『生涯ずっと健康な動物』というのは人間を含めていません。

誰しもどこかのタイミングで病気や怪我をする可能性があります。動物を飼うということは、何かがあったときに十分にケアする覚悟が本来必要なはずです。

人間の身勝手で行き場を失う動物たちがいなくなり、それぞれが大好きな家族と最期のときを迎えられる……そんな未来を願って活動を続けています」(ケンの家・担当者)

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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