28歳の愛猫 長生きしてくれてありがとう 死後、飼い主さんに奇跡のような出来事が起きた

2022年1月3日。この日、28歳のご長寿にゃんこが天国に旅立ちました。彼の名前は、とまと。飼い主のせあらさん(@burupura)にとって、とまとくんは今も大切な愛猫です。

■長寿犬猫の表彰式に選出された、とまとくん

とまとくんは、せあらさんが、まだ幼かった頃、自宅の庭に現れた子。どこにもない珍しい名前を…と思い、せあらさん自身が「とまと」という名前を贈りました。

子猫期から若猫期は警戒心が強く、家族に本気噛みをお見舞いしたことも。

「母は、何回も病院行き。私も1度左腕を噛まれ、今も痕が残っています(笑)。一言でいえば、自由な猫でした」

しかし、年を重ねるにつれ、性格は変化。腕枕で寝たり、人間家族や病気を患う同居猫に寄り添ったりする温厚にゃんこに。

「それまでは自分から寄り添うことなんてしなかったのに、同居猫が悪性リンパ腫の余命宣告を受けた時なども何かを悟ったかのように寄り添い、そばにいてくれました」

そして、動物病院へ行った後に抗議をするという、賢さを見せるようにもなりました。

「珍しく膝の上に来たかと思えば、突然おしりを向け、膝にピンポイントでおしっこ。ストーブにおしっこをかけたこともありました」

歯茎炎症はあったものの病気知らずで、初めて病院を受診したのは、なんと20歳を超えた頃のこと。

22歳の頃には猫風邪で足元がふらつき、左目をぶつけたことにより眼球に穴が空き、視力が失われてしまいましたが、病気を治し、再び猫らしい暮らしを楽しむようになりました。

「重度の膀胱炎も、薬で乗り切りました。先生から危ないと言われても、何度も乗り越えてきたんです」

26歳の頃には札幌の動物病院が行っている、長寿犬猫の表彰式に選出。 そのご長寿っぷりはSNSでも話題になり、多くの猫や猫飼いさんに希望を与える存在になっていきました。

そんなとまとくんを気遣い、せあらさんは自宅で、通り道に物を置かないことや、どこまで見えているのか分からない分、積極的に声かけをするように意識。

「耳が遠いかもしれないので、体に顔を寄せながら話しかけていました。トイレに入れなくなったら、排泄場所として選んだ板の間にペットシーツを大量に敷き、フォローしていました」

■最期は「一緒にいてくれてありがとう」と伝えられた

工夫と愛が散りばめられた自宅で、ゆっくり時を刻んでいた、とまとくん。しかし、胸水や腹水が発覚したことから、体調はゆるやかに下降。

「少し太ったと喜んでいたら、胸水や腹水があることが分かって。病院側には以前から、延命より苦しみの緩和を…と伝えていたので、水を抜くために利尿剤を飲ませることになりました。もしかしたら、院長は先が短いことを知っていたのかもしれません」

できることは、すべてやりたいと思い、せあらさんは家族と共にリンパマッサージも行うように。たくさん体に触れ、できる限り看病しました。

そうした日々の中で、心に残っているのは、もう歩けなくなったとまとくんがしてくれたイタズラ。定位置にいないとまとくんを居間で探していると、テーブルの下から「バンッ」という音が。

「とまとが、フローリングに足をついた音でした。まるで、ここにいるって言っているみたいで。私が慌てて探している様子を見ていたのかなって思うと、面白かったです。寿命が分かっていたからこそ、私にしてくれたイタズラだったのかもしれません」

そして、緩和ケア生活が2カ月ほど続いた、ある日。突然、とまとくんは何かを訴えるかのように鳴くように。

おやつをあまり食べず、歯石も多かったため、せあらさんは翌日、病院へ連れていきました。

「その時も、にゃーにゃーと何か言ってくれ、手にすり寄ってくれました。今までしなかったことを、たくさんしてくれたんです」

帰宅後、せあらさんは、いつものように、とまとくんをリンパマッサージ。前日から、失明した目の水分がなくなり、白くなってきたことが気になっていたので、目薬で必死に潤そうともしました。

しかし、連日の疲れが出て、2時間ほど仮眠。その後、再びリンパマッサージをしようと、とまとくんに触れると、身体が冷たくなっていくことに気づきました。

ゆっくりと冷たくなっていく、愛しい存在。その温もりを感じながら、せあらさんは「一緒にいてくれてありがとう」「おやつを食べてくれてありがとう」と、28年分の感謝を伝えたそう。

「年越す前までは、まだいかないで、私を置いていかないで、そばにいて一緒に年越ししようとか毎日、必死に言っていましたが、最期に、ありがとうって言えてよかった。最期の病院の帰り道に、とまとがくれた最期の言葉も聞けてよかった。あれは、2人だけの思い出です」

胸水があったものの、とまとくんの呼吸は乱れず、ほとんど苦しむことなく天国へ。

「とまとは最後まで噛むことがあり、食べ物をあげる時、たまたま私の左手まで噛んでしまったことがありました。少し鬱血した痕が、今も見える。消えてもおかしくないのに、不思議ですよね」

■あの子は未来を見据えて「死」を選んだのではないか

とまとくんを看取り、初めは「やりきった」と思えていたもの、時が経つにつれ、せあらさんの中には他の猫を亡くした時とは、また違った寂しさが押し寄せてきました。

しかし、父親の心臓手術が決定したり、大雪で動物病院への通院が難しかったりと、とまとくんの死後に起きた様々なことを目にした、せあらさんは「自分の看病をせず、この未来に私が対応できるように、あの子は旅立ったのかもしれない」と思うように。

「単に老衰で天命を全うしたのかもしれないけれど、とまとは未来を見て、あの選択をしたのかもしれないと思うんです。亡くなった後も、ずっと傍で見守っていてくれている気もします」

そんな思いを抱くのは、不思議な体験をしたから。とまとくんが亡くなって1カ月ほどした頃、なぜか、せあらさんの手の甲や指に切り傷が増加。

「疑問だったので占い師さんに聞いたら、亡くなった動物がそばにいることがあると。もしかして、とまとなのかと思い、肩に手を添えて撫でる素振りや語りかけてみたら、傷がほとんどなくなったんです」

亡き愛猫の存在を感じさせる、この現象は今も続いているようで、忙しさから、とまとくんのことを思い出す機会が減ると、せあらさんの手には再び傷がつくのだそう。

「とまと、いるの?って思ったら、また傷がつかなくなる。本当に不思議だけれど、亡くなっても、そばにいることもあるかもしれないって思っています」

そう語る、せあらさんにはとまとくんとの日々を噛みしめられる宝物が。それは、イラストレーターのCatCuts(@fightingcomic)さんに描いてもらった、とまとくんの絵。

「偶然、目に留まった素敵なイラストがあったので、なにげなく『とまとを描いて欲しい』と呟いたら、本当に描いてもらえて感動しました」

白髪や鍵しっぽなど、細部の特徴までしっかりと表現された、このイラストを、せあらさんは家宝にしています。

「長生きの秘訣は、食べることだと思います。とまとは歯石があり歯肉炎も酷かったけれど、最後まで食べることを辞めませんでした。あと、骨格が凄く綺麗で丈夫だったことが、お骨になってから分かりました。変色もしてなくて、ああ、本当に天命を全うしたんだなと思ったんです」

そう語るせあらさんは自分と同じく、愛猫を亡くすという深い悲しみを味わっている人に向け、こんな言葉を贈っています。

「愛する家族が亡くなったのだから、ペットロスは仕方ない。でも、少し経ったら、先の未来を想像したり、その子との思い出を振り返ったりしてみると、前を向いて進めるかもしれません。猫や犬だけじゃなく、例えば、お花に話しかけてもいいじゃないですか。もし、ご縁がある機会が訪れたら、それは運命。ご縁がないのも、また運命だと私は思います」

たくさんの思い出をありがとう。色々な経験をさせてくれて、ありがとう--。そんなたくさんの「ありがとう」に込めた愛は、きっと天国のとまとくんに届いているはず。

28年間、想われた長寿猫は愛が詰まったイラストの中や、せあらさんの心の中で、今もなお生き続けています。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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