今、「四国の右下」に行きたくなるワケ…「世界初」の乗り物や「世界一」のコンビニがあった

 四国の右下、徳島県南部を侮ってはいけない。昨年末には道路と線路の両方を走る大谷翔平選手もビックリの”二刀流”乗り物「DMV」が世界で初めて本格営業運行を開始。さらに”四国のチベット”と呼ばれる秘境、もとい過疎地には内外のデザイン賞を総なめにした「世界一美しい」コンビニもある。その他に藍染め体験、海中旅行などのアクティビティも充実。関西から近くて遠い気がしていた「四国の右下」を味わいつくした。

 徳島と言えば、鳴門の渦潮に徳島市の眉山。それと「たたえよ池高」のある阿波池田。正直、どうしても県の南部、つまり四国の右下とは縁遠かった。思い浮かべるとしたらジャンボ尾崎さんや元阪急監督の上田利治さん、ボクシング世界チャンピオンの川島郭志さんらを輩出したことぐらい。実感として、関西方面から旅行に出掛けるとしたら近場では淡路島でこと足りるし、もう少し足を伸ばしたいなら高知まで、ということになる。

 実際、観光庁が昨年7月に発表した宿泊旅行統計調査によると、2020年の徳島県内の延べ宿泊者数は144万8780人でなんと6年連続全国ワーストだった。ちなみに最下位争いの常連は佐賀、奈良だとか。

 実は徳島に対するイメージもその昔、こんな話を聞かされ、良くなかった。初めて訪れた高知での夜。「四国4県、1万円拾ったらどうする?」という県民性をあらわすたとえ話があり、こう展開していく。

 「香川の人は半分使って、残りは貯金。愛媛の人は1万円全部飲み代に。高知?高知の人は飲んで勢いがつき、さらに自分の財布から1万円」

 では徳島は、というと「徳島の人は1万円全部貯金」とか、中には「いや違う。自分の財布から、さらにもう1万円」とまで言う人もいた。

 この後、オチは「拾ったお金は交番へ」となるのだが、そんなことはともかく、徳島ではいま一般社団法人「四国の右下観光局」を立ち上げるなどPRに躍起。実際にそれなりに強力な観光資源もあった。

 そのひとつが「未来コンビニ」だ。20年4月、徳島市内から2時間半、「四国のチベット」と呼ばれる木頭地区にこつぜんと現れると、その美しさから大反響を巻き起こす。世界三大デザイン賞「レッド・ドット・デザイン・アワード」最優秀賞をはじめ、国内外のデザイン賞、建築賞10冠に輝いた。

 これは、実業家、藤田恭嗣さんが限界集落となった生まれ故郷の買い物難民を救うために建てたもので、特産品のゆず畑をイメージしたトラス構造の柱が色鮮やか。いままで通りすぎていた場所に、多い日には県内外から1日400人以上。延べ5万5000人が来店しているという注目スポットとなった。

 「子どもたちが将来の可能性や選択肢に興味を持つきっかけになれば」という願いも込められた未来コンビニ。棚の位置をやや低くするなど、細やかな配慮も施していた。実際ひとつの重要な産業として成り立っており、他の自治体も多いに参考になるのではないか。

 さらに、今回の目玉を紹介しよう。お待たせしました。阿佐海岸鉄道が誇る二刀流乗り物のDMVがそれ。正式名称は「Dual Mode Vehicle(デュアル・モード・ビークル)」といい、ときに列車、またるときにはバスになるという斬新な乗り物だ。

 これまで欧州や北海道など国内外で試験的な運行はあったものの、ここまで本格的に通常営業運行しているのは世界初。昨年12月末から阿佐東線で運行を開始するとボンネットバスが海岸沿いの線路を走る姿が「あれは何物?」「何ともシュール」とたちまち評判になった。

 実は私も乗りたくてうずうずしており、今回夢が実現したわけ。乗ってみると、トヨタのコースターを改造していることから中は18座席の普通のマイクロバス。乗り心地はまずまずで何より乗り換えなし、というのがありがたい。

 というわけでハイライトは阿波海南駅と甲浦駅でのモードチェンジ。バスから列車へ、列車からバスへ15秒ほどで切り替わった。線路区間は全長10キロのショートトリップだったが、海岸線を走っているときなんか♪赤いスイートピーが流れているような気分になるの~、だった。

 現在導入しているのは赤、青、緑の3台。土日祝はバスモードで遠く高知・室戸の「道の駅とろむ」まで1日1往復する便がある。導入にあたっては既存の線路を活用でき、大規模なインフラ整備が不要、車体や点検などが低コストといったメリットが挙げられるが、阿佐海岸鉄道では「観光の目玉に」と救世主としても期待する。

 これに合わせ、複合施設「阿波海南文化村」内にある飲食、物販スペース「三幸館」ではその名も「DMVカレー」を提供。これは吉本興業の鉄道好き芸人、鈴川詢子がプロデュースしたもので高知ぽんかん果汁を使用した甘口カレーと、阿波尾鶏のミンチ入り辛口キーマカレーを同時に味わうことができる。

 これ以外にも日本最大級のサンゴを鑑賞したり、豪快な舟盛り(小さな子どもなら間違いなく乗れそう)と名物海賊料理の「民宿しらきや」など、五感を刺激してくれるものばかり。そうそう、全室オーシャンビューの「ホテル リビエラ」からの朝日がなんと美しかったことか。空と海を見渡せる空間での藍染め体験もシャッター街を立て直そうとするカフェの試みも、心から地方活性化を願う私には参考になった。

 春風に揺られて「四国の右下」を訪ねてみるのも悪くないのではないか。

◇今回のツアールート

 1日目=鯛塩ラーメン「麺STATION鯛太郎」→コーヒー店「カモ谷製作舎」→世界一美しい「未来コンビニ」→海賊料理「民宿しらきや」→全室オーシャンビュー「ホテルリビエラししくい」

 2日目=「海中観光船ブルーマリン」→「DMV」→「阿波海南文化村」→藍染め体験と食藍「inBetweenBlues」→「CAFEandBAR NuuN」

(まいどなニュース特約・山本 智行)

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