茨城・介護施設殺人の衝撃 サービスを使う家族は声を上げよう 対応に問題感じたら「ノー」といえる勇気を

 茨城県古河市の介護老人保健施設で昨年7月、入所していた当時76歳男性の体内に空気を注入し殺害したとして、今月8日、元施設職員だった35歳の女が殺人容疑で逮捕された。介護施設で入居者に対する事件が相次いでいることを受け、「夜回り先生」こと教育家の水谷修氏は「介護施設や訪問介護を利用している家族のみなさんへ」と題し、その対応に問題があれば、介護する側への「負い目」を感じないで指摘すべきであり、そのことが介護される側の高齢者のためになると呼びかけた。

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 茨城県古河市の介護老人施設で入所者が、職員に空気を注射され殺害されるという事件が起きました。このほかにも、介護施設における職員による入所者への暴力等の事件や訪問介護での事故等が多く報道されています。

 私は、先日、高校時代の仲間たちと、Zoomを利用した同窓会をしました。そこで主な話題となったのが、親の介護の問題でした。私たちもすでに65歳、親たちは、90代を迎えています。多くの仲間たちが、この問題で苦しんでいました。多くの仲間たちから、現在施設で受けている介護の在り方や訪問介護に来てくれている人たちに対する不満が語られました。

 私が、そんなに不満があるなら、きちんとそれを伝えるべきではないかと言うと、みんなは、本来自分が介護しなくてはならないのに、預かってもらったり、手伝ってもらっている。とても申し訳なくて、そんなことは言えないと答えました。

 そんなとき、一人の仲間が、語り始めました。彼は、93歳の父を家で介護し、91歳の認知症の母を介護施設に預けています。彼は、みんなに言いました。ケアマネージャーにきちんと伝えるべきだと。介護施設の介護の在り方や施設の在り方に問題があれば、それをきちんと伝えて改善してもらうべきだし、訪問介護に来てくれる職員の介護の仕方に問題があれば、それを伝えて職員を変えてもらうべきだと。

 自分は、それで、母親の施設を変えてもらい、今は、温かい処遇をしてもらっているし、父親の訪問介護の職員も三度代えてもらい、今は、素晴らしい職員が来てくれている。なぜ、遠慮するのか。職員たちにとって、介護は彼らの仕事であり、その仕事をきちんとできていなければ、変更されて当然のことではないのか。それを、勝手に負い目を感じ、我慢する。そんな君たちの体質が、介護施設での多くの事件や訪問介護での事件、自己の原因となっているのではないか。

 なにより、そんな扱いを受けて一番苦しんでいるのは、親たちなのではないか。親たちの方が、君たちよりはるかに苦しい思いをしているのではないか。介護で、施設や人の手を借りることは、恥ずかしいことではなく、それに対してきちんと対価を支払っているビジネスなんだ。

 私をはじめ、多くの仲間たちが、彼の意見に賛同しました。今、介護施設や訪問介護を利用しているみなさんにお願いです。決して負い目を感じないこと。高齢者たちは、長い年月、この国を支え、私たちを守り育ててくれた人たちです。その人たちが、幸せで温かい環境で、人生最後の日々を過ごすことを守ることは、私たち全員の責務ですし、国の当然の義務でもあります。どうぞ、我慢することなく、きちんと感じた問題を伝えていきましょう。それが、高齢者の命と幸せな日々を守ることとなります。

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