絵本「おれは待っている」…飼い主を亡くした保護猫が幸せになるまでの話が「泣ける」 制作者の思いを聞いた 

「飼い主を亡くした保護猫が幸せになるまでのお話。」

そんなつぶやきとともに、絵本を紹介する投稿がツイッターで話題になりました。絵本の題名は「おれは待っている」(作・飛田俊、絵・ Miké、歌・eLe)。動物保護団体「Reef Knot(リーフノット)」(大阪府箕面市)の保護施設であった実話を元に描かれたものです。主人公カズマくんという保護猫が施設に迎えられてから、里親さんと出会って幸せになるまでのストーリー。12枚にわたる絵本を読んだ人たちから「感動した」「涙が出ました」と、たくさんのコメントが寄せられています。

 「悲しい境遇の子たちもいると思いますが、ステキな出逢いをして、温かい生活を送って、優しい笑顔で暮らして欲しいと思います。」

「切なくなりました…取り敢えずウチの子達より元気に長生き出来る様に健康に気を付けようと思いました。」

「成猫には成猫の良さが沢山あるので、譲渡の際には是非候補に入れて欲しい。素敵な作品をありがとう。」

「泣きました!うちの子達も、自分達が出逢いたかったのはこの人だって…思ってくれているかな?」

「今すぐ家に帰って我が子を抱きしめたくなった」

「迎え入れる時が来たら絶対大切にする!」

投稿したのは、「Reef Knot(リーフノット)」代表の飛田俊さん(@reef__knot)。12枚の絵本画像は4月にもYouTubeに公開されたものです。公開から4カ月以上たった9月、飛田さんが何げなくツイッターに投稿したといいます。思わぬ反響に「驚いた」という飛田さん。制作しようと思ったきっかけや絵本を通じて伝えたいことなどを伺いました。

■絵本"第一号"の主人公「カズマくん」 飼い主さんが亡くなり保健所にいた猫

サラリーマンから動物保護事業に携わるようになったという飛田さん。運営する施設には、飼育放棄や多頭飼育崩壊、虐待などさまざまな事情で保護されてきた猫たちがいます。そんな施設にやって来た猫たちのことを1人でも多くの方に知ってもらいたいと、絵本の制作に乗り出したといいます。

絵本"第一号"の主人公であるカズマくん。元の飼い主さんが亡くなり保健所に収容された猫です。12歳のとき、保健所から施設に迎えられました。当時飛田さんが保健所に引き取りに行った際はとても威嚇されたそうです。

「私は譲渡会で一番もらい手がつかなそうな子を保健所から引き取ることにしているのですが…案の定、カズマは保健所の職員さんたちもなでることができないほど警戒心の強い子でした。施設にいたころは、カズマはいつも怒っていましたね。何がそんなに気に入らないの?とこちらが悩むぐらい。周りに猫がいると目を合わせず『にゃむにゃむ~!』と怒りながらドコドコと歩いていた記憶があります。ただ、猫同士の取っ組み合いはすることなく、棚の上から他の子の様子を眺めていました。ボス猫のような存在でしたね」(飛田さん)

■怒りん坊だったカズマくん 幸せになっていく施設の猫を何度も見送ってきた 

施設ではいつも怒っていたというカズマくんを、絵本の主人公にしようと思った経緯をこう振り返ります。

「絵本の中の描写にもありますが、人が好きでアピール上手な子は希望者さまの目に止まります。でもカズマは自分から近寄りません。お尻を触られると怒ってしまう子でした。他の猫ちゃんの飼い主さんが決まり手続きをしているとき、ふと横を見るとカズマがこっちを見ていることがあって。自分より後に施設にやって来た子が自分より先に卒業していく光景をカズマはどんな気持ちで見ているのだろうと、考えるようになりました。『いいなぁ』と思っているのではないかと…」(飛田さん)

他の猫たちが幸せになっていく光景を何度も目にしてきたカズマくん。飼い主さんへ正式譲渡となったとき、そのカズマくんの“気持ち”を絵本にしたいと思い立ったそうです。

   ◇   ◇

■「待っていた人」との運命の出会い…1年4カ月で施設を“卒業” した

1年4カ月を施設で暮らしてきたカズマくんを、13歳のときに迎えた飼い主さん。カズマくんとの初めての出会いを語ってくれました。

「もともと施設のホームページを見てカズマを気に掛けていました。施設のお世話係さん(飛田さん)にそのことを伝えると、とても驚かれて。『少し難しい性格で、施設に一番長くいるけど誰からも声がかかったことがないんですよ』と言われたんです。『こんなにも可愛いのに!?』とびっくりしました。また年齢も10歳を超えていてシニア猫だと伺いましたが、私は全く気になりませんでした。

カズマと初対面の日。お世話係さんから『かまれるかもしれないから触るときは気を付けて』と言われたのですが…施設に入ると、カズマの方から寄ってきてくれて。手を伸ばすと顔を擦り寄せて、ペロペロとなめてくれたんです!」(飼い主さん)

飼い主さんは、カズマくんにとってまさに待っていた“運命の人”でした。現在、14歳になったカズマくんは、大好物のちゅーるをもらったり、夜は同じ枕で飼い主さんと一緒に寝たりと幸せに過ごしているそうです。また、飼い主さんは音楽活動をしており、YouTube版絵本動画のテーマソングも手掛けました。

こうした協力も得ながら完成した「おれは待っている」。今回手掛けた絵本を通じて、今動物と暮らしている人やこれから動物と暮らそうと考えている人に飛田さんは次の4つのことを知ってもらいたいといいます。

・保護施設にいる子は一度はつらい経験をしている子たちであるとともに、家族を必要としているということ。

・飼い主が先に死ぬ可能性も考えて迎え入れる決断をしてほしいということ。

・ここ(保護施設)がついのすみかであってはならない、ここ以上に大きな幸せが待っているということ。

・おうちの子を目いっぱい愛してほしいということ。これから迎え入れる子を目いっぱい愛してほしいということ。

飛田さんの手掛けた絵本をきっかけに、保護施設で暮らす猫たちの“思い”に触れていただけたら。また、YouTube版絵本動画のほかに書籍(2180円税込)も販売中。書籍などの売上は、同施設の動物にかかる費用や運営費にあてているとのことです。

   ◇   ◇

飛田さんによると、第二弾の絵本を制作予定とのこと。「Reef Knot(リーフノット)」の絵本を広めるために「READY FOR」でクラウドファンディングにもチャレンジします。プロジェクト「絵本の力でひとつでも多くの動物たちの命を救いたい!!」は、21日18時からスタート。絵本やプロジェクトなどの問い合わせは(rk@reef-knot.net)まで。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス