死んだと思って「神社にお返し」した子猫が、1カ月後玄関に現れた!? 迎えた猫と築いた「女の友情」

女の友情なんてないといわれていますが、それは若いころのこと。年を取ってオバチャンになると、なんとなく「同志」になってくるものではないでしょうか。富山県のEさんも同志を得た一人です。その相手は、なんと猫なのです。

その猫の名前は「おば」といいます。今年で13歳の立派な熟女。夜中にEさんと一緒に飲む冷蔵庫の水が大のお気に入り。これ、Eさんの夫や息子が入れた水ではダメ。Eさんが注いでくれた冷たいお水が大切なようです。

おばちゃんとEさんの出会いは13年前にさかのぼります。ある日のこと、中学3年生の息子が夜の7時頃に慌てた様子で帰宅します。

「道路に猫が倒れている。お母さん、一緒に来て!」

実はEさん、猫が苦手なので「嫌だな」と思ったのですが、可愛い息子のためです。ついていきます。自宅近くの工場の前の道路、息子が言う通り猫が倒れていました。生後半年ぐらいでしょうか。鼻から血を出し、そばをバイクが通り過ぎてもぴくりとも動きません。これは…。

不安そうにEさんの顔を見る息子に、言いました。

「もう死んでいるよ。神様にお返ししよう」

Eさんは持って来たバスタオルで倒れている猫をくるむと、近くの神社の境内に安置します。この日はスコップ等を持ってきていなかったので、埋めることはしませんでした。

次の日、Eさんはすっかり猫のことなど忘れていました。その次の日も次の日も。忘れたまんま1カ月ほどが過ぎた頃、玄関に来客の気配がします。何だろうと扉を開けると、1匹の猫がちょこんと座っているではありませんか。

「あの時の?!」

Eさんはビックリです。このまま追い返しても良かったのですが、折しも台風の予報が出ている日、このまま返すのは忍びない。その場で保護して動物病院へ急行です。検査をしたり予防接種を打ったり。その場で避妊手術も受けました。

動物病院から帰ってくると、息子が帰宅していました。息子もビックリ。

「ついてきたのかも」

よくよく話を聞くと、あの日の翌日から様子を毎日見に行っていたとのこと。給食で余った牛乳やパンを、猫のために運んでいたんですって。すっかり元気になった猫は、息子のあとをつけてきたよう。

さあ、この猫をどうしよう。動きも鈍くて、なんだかオバチャンっぽい。これでは外で生きて行くのは大変だろう。それに、猫を見殺しにすると、一生恨まれるかもしれない。仕方なく、家の子にすることにしました。名前は「おば」になりました。

というのは表向き。Eさん、玄関におばちゃんが現われた瞬間から、あまりの可愛さに心が奪われていたのです。「うちの子にしたい」と強く思ったのだそう。その思いがおばちゃんにも通じたのか、すぐ保護されてくれたのでしょう。

それでもこのおばちゃん、やっぱり一番懐いていたのは息子です。家の中をストーキングしていました。息子が女友達を連れてきたらヤキモチを妬いて、「シャー!」って言うこともあったんですよ。男友達にはそんなことしないのに。

だからか、息子が選んだ結婚相手は、猫アレルギーの女性。一度もおばちゃんには会っていません。帰省でおばちゃんと会う時は一人で来ますから、まだ独身だと思っているかも。ある意味、騙していることになりますが、その方が平和かも知れません。

大好きな息子が独立してからは、Eさんにべったりのおばちゃん。先述した夜中のお水だけでなく、2人の時間を大切にしています。一緒に年を重ね、一緒に家庭を守り続けた同志ですから。

これからも女同士、仲良くやっていきたいとEさんは言います。おばちゃんも、きっと同じ思いでしょう。命の恩人のお母さんがEさんなのですから。

(まいどなニュース特約・ふじかわ 陽子)

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