愛猫には障がいが…でも「この子の存在価値は変わらない」 障がい猫の魅力を伝える“写真展”を開く飼い主の思い

「障がい猫の魅力を伝えたい」…障がいがある猫ちゃんたちの写真展「オンリーにゃんず」が6月1日から1カ月間、千葉県浦安市のオリエンタルホテル東京ベイ市民ギャラリーで開かれます。写真展は昨年10月にも同所で開かれ、今回が2回目。

写真展を主催するピノワルド工房の武山真人さん(千葉市在住)は「いまや猫をテレビやネットなどで見ない日はないほど、“家族”として飼う人は増えています。猫の写真展は特に人気が高く、SNSでもかわいいの声をよく聞きます。けれど、障がいを持つ猫は飼い主さんがSNSで写真を掲載すると、非難されたり、心ない言葉を投げられたりすることもあって…。

自身も目の見えない猫を飼っていますが、私はこうした状況を変えたい。障がいがあってもその子の存在価値は変わらないことを伝えたいと思い、今年も写真展を開きます。コロナ禍ではありますが、マスク着用など感染予防をしていただきながら足を運んでもらい、障がい猫たちのありのままの姿をご覧ください」などと呼び掛けています。

■両目を失明した三毛猫「つむぎ」ちゃんとの出会い

真人さんは会社員の傍ら、写真展活動をはじめ、ハンドメイド作家として活動をしながらチャリティーグッズを製作。売り上げの一部を保護猫団体に寄付する活動を行っています。目の見えない猫「つむぎ」ちゃんを奥さんの志帆さんとともに我が子のようにかわいがっているといいます。つむぎちゃんは三毛の女の子です。

「7月で4歳になるつむぎ。出会ったのは2017年10月、保護猫ボランティア団体の里親募集のブログを見て参加した譲渡会でした。そのときつむぎは生後3カ月ほどで、4姉妹のうちの1匹。保護される前に鳥に目をつつかれて失明したようだと聞きました。障がいがあったのはつむぎだけ。

当時、私たちは目が見えない猫がいることに衝撃を受けたものの、妻がつむぎにひと目ぼれ…私から見てもとてもかわいくて、つむぎに決めたんです。ボランティアの方からは『本当にこの子でいいですか?』と驚かれました。後から聞いた話ですが、障がいや病気のある猫は譲渡会で人気がないとのこと。私たちからしたら、何の違和感もありませんでした」と真人さん。

おうちに迎えられた際のつむぎちゃんについて「初めて猫だったんですけど、とてもしつけられていてトイレもできたし、目が見えなくても自由に歩けるし。子猫のころからほぼ自力でできないことはなく、手の掛からない子でしたよ。のんびりやさんで、目が見えないせいか動きはゆっくりとしていました」と振り返ります。

■東日本震災で被災…うつ病に 仕事を辞めて療養生活

つむぎちゃんを飼った当初、うつ病を患っていたという真人さん。もともとは生まれ故郷の宮城県石巻で福祉関係の仕事に携わっていました。2011年3月11日、東日本大震災に遭い、被災者支援などに奔走。精神がい者の方々の心に寄り添ったり、不妊治療に挑戦したものの子宝に恵まれず心を痛めたりしていたところ、ご自身も体調を崩してうつになったといいます。そこで心機一転、2016年4月に仕事を辞めて、大好きな“ディスニー”がある千葉県に引っ越して療養を始められたそうです。

「引っ越したばかりのころは、妻が外で働いて私は家に引きこもっていました。ウサギを飼っていたので、ウサギのロッキーとのんびり余生を過ごそうなんて思っていたのですが…夫婦で猫を飼ってみたいと思い立ち、つむぎを家族に迎えたんです。つむぎが来てから数週間後、ロッキーが9歳半で亡くなりました。まるで入れ替わるかのように…不思議です。目が見えないのに他の猫と同じように自力で動けるつむぎを見ていると、生きる勇気をもらえて。僕はとても癒やされました」(真人さん)

■つむぎちゃんとの出会いが転機 障がい猫の飼い主と交流

つむぎちゃんとの出会いが大きなきっかけとなり、真人さんの病も改善に向かい、前向きな行動を起こせるように。翌年の2018年1月ごろからご自身のTwitterにかわいいつむぎちゃんを多くの人に見てもらおうと写真を投稿するようになったといいます。

「つむぎの写真を載せるようになってから、『うちも障がい猫がいます』『昔、目の見えない子を飼っていました』とコメントが付いたり。Twitterを通じて、障がい猫の飼い主さんたちとの交流が少しずつ始まりました。初めてプチバズったのが、つむぎが室内の階段をすごい勢いで上る動画。なぜか、階段の上り下りだけはスピードが速くて(笑)『目が見えないなんておもえないですね』などと反響がありました」(真人さん)

■障がい猫がメンバー「オンリーにゃんず」結成、写真展を開催

さらに、真人さんはハンドメイドにもチャレンジ。クッションやバッグなど猫グッズを作るようになり、「ピノワルド工房」を立ち上げました。2019年12月には、Twitterでつながった障がい猫ちゃんの集まり「オンリーにゃんず」を結成。翌年の2020年3月、千葉市内のカフェでグループ展に参加して、「オンリーにゃんず」のメンバーの写真を初めて展示したそうです。

そこでさらに「障がい猫の魅力を広められたら良いな」と思い立った真人さんは、ついに10月に単独展「オンリーにゃんず」を大好きなディズニーリゾートの周辺ホテルで開催しました。

「『オンリーにゃんず』を結成して何かチャリティーイベントを実現できないかと考えていたところ、写真展を思いついたんです。猫の写真展はこの世に多くあるのに障がい猫を題材にした写真展はなんでないんだろうって。だったら、私たちがやろうと思いました。

1カ月間開催したところ、県内外からたくさんの方々にご来場してもらい、『日常の可愛い部分を見せていただけたのはとても嬉しい体験』『オンリーにゃんずの猫さんたちはみんな天使』などとたくさんの反響をいただいたんです。このほか、Twitterユーザーの方々からも『全国でやってほしい』『社会的使命感を持って行ってほしい』、また会場のギャラリーを管理・運営するNPO法人からも『ぜひ毎年やってほしい』との要望もあり、まずは今回2回目を同じ場所で開くことにしました」と、目を輝かせながら語る真人さん。

■全国開催に向け、クラウドファンティングで支援者を募集中

とはいえ、継続となると負担は大きく、今回はクラウドファンディングで支援を募りました。既に、第2回の写真展に必要な15万円に達成。現在、今後全国各地で開催するための支援金を集めるため、目標額100万円にチャレンジ中です(4月25日まで)。また、CAMPFIRE上の活動報告にて、クラウドファンディングの進捗状況などを紹介しています。

第2回の写真展には、33匹の障がいを持った猫ちゃんが参加される予定です。真人さんによると、これまでは視覚や聴覚に障がいを持った猫ちゃんの参加が多かったとのこと。今回は、生後間もなく虐待を受けて左前脚に6カ所の複雑骨折を負っていたところを保護された猫ちゃんや、交通事故を受けて障がいを持った猫ちゃんなどの写真も展示されるそうです。

開催期間は6月1日から6月29日まで。時間は10時~21時。入場無料です。

お問い合わせは、pinowaldkoubou@gmail.com「ピノワルド工房」武山さんまで。

■Twitter:ピノワルド工房 @pinowald

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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