えっ、固定資産税が倍に?京都市が別荘税導入を検討 「別荘税」ではなく実質は「空き家税」か

■えっ?!固定資産税がなんと2倍に?

2021年3月、財政危機を迎える京都市が新たに別荘税の導入を検討していることを発表した。

導入されると、京都市内に別荘を保有している方々は、突然の増税に見舞われる。試算方法はまだ想定段階だが、例えば渡月橋のある嵐山に別荘(床面積300平方メートル・築50年)を所有しているケースだと年間12~43万円、中心部の分譲マンション(床面積100平方メートル・築5年)で年間6.5~43万円など、試算によってばらつきはあるが、概ね現在支払っている固定資産税と同額近くになるようで、わかりやすく言うと固定資産税が一気に2倍になるようなものだ。背景には近年、富裕層による市内の物件購入が増加、中心部の不動産価格が高騰し住民が住宅を購入しづらい状況が続いていることと財政難で新たな財源を確保したいという意図があり、一年を目途に導入に向け検討を進めている。

■課税の中身は別荘税ではなく…

しかし、話を聞くとどうもそう簡単な話ではなさそうだ。

一番の課題は、空き家のうち、どれが課税対象の別荘で、どれが通常の空き家なのかという区別をする作業が実に煩雑で、莫大なパワーとコストが掛かるという。これらを正確に把握し課税するとなると、徴収コストが税収を上回り、結局導入した結果、損をするという事態に陥りかねない。そこで、空き家全体を課税対象とする方向で現在検討が進んでいる。対象となる住民票のない空き家は市内に6万戸余り存在するのだが、実はそのうちの60%が市民が所有している物件であることが分かり、実は別荘税ではなく、空き家税というのが正確なようだ。

そこから町家指定を受けている家屋や賃貸・売却予定のもの、固定資産税非課税の家屋などを除き、現在想定される課税対象は1.7万戸、トータルで8~20億円の税収を見込んでいる。ただ、その金額すらコスト倒れに終わるという指摘もされている。

課税理由についても少し厳しいものがある。別荘購入者からは住民票がない為に住民税が徴収できない。しかし、ゴミ処理や道路維持などの公共インフラは利用する為、そのコストが負担されていないというのが課税理由だが、本来それこそが固定資産税の課税根拠だと言われており、二重課税になる恐れも払しょくできていない。

■課題多き新税、実装なるか?!

また、宿泊税と同じように、こうした市外在住者を対象にした課税は反対意見が少なくスムーズに導入できる(議会で反対されにくい)ケースが多いのだが、対象の大半が市民であるという状況に議会も神経を尖らせる。

加えて、昨今の社会情勢の変化に伴い、内閣府では二拠点居住についての検討がされ、「第二の市民」という考え方と第二の市民に対する税の在り方の検討がはじまっていることも、別荘税導入に対して懸念材料になっている。

一年程度の時間をかけ制度設計を進めるということだが、実現への道のりはかなり厳しく、実現の目途は立っていないというのが現状のようだ。

果たして、別荘税改め空き家税は京都の財政を救う新たな手段になるのだろうか?

◆村山 祥栄(むらやま・しょうえい)前京都市会議員、大正大学客員教授。1978年京都市生まれ。専修大学在学中は松沢成文氏の秘書を務める。リクルートを経て京都市議に。2010年、京都党を発足。2020年2月の京都市長選で出馬も惜敗。現在は大正大学客員教授。

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