文字サイズ

幼稚園の倉庫にいた、目も耳も開いていない子猫 甘えん坊だった先住猫はまるで「お母さん」のように寄り添った

SUNくん(生後6か月・オス)は、幼稚園の倉庫の中にいた。まだへその緒がついていて、生まれたばかりのようだった。千葉県に住むSさんが引き取ったが、Sさん宅には2匹の先住猫がいたので、先住猫が受け入れてくれるかどうかSさんは心配した。

■先住猫とうまくやっていけるのか

2020年10月3日、千葉県に住むSさんは、娘が通う幼稚園の先生から、「倉庫で生まれたばかりの子猫を見つけて保護した。誰か飼える人を知らないか」という相談を受けた。Sさんは猫を2匹飼っていたので、誰かあてがあるのではないかと思われたようだった。しかし、Sさんもすぐには思い浮かばず、家族で子猫を見に行った。その場で家族会議を開き、子猫を飼うことにした。名前はSUNくんにした。

ただ、Sさんは2匹の猫を飼っていた。そうくん(推定4歳)とふくくん(1歳)、どちらも保護猫だった。

「2匹の反応が心配でした。私たち人間が飼うと決めても、先住猫が拒否したら、その時は里親を探すことも考えなければならないと思っていました」

そうくんはそれほど心配ではなかったが、ふくくんはとても甘えん坊。どこに行くにも一緒で、お風呂の中にまでついてくるような猫だった。SUNくんにやきもちを妬いたり、ストレスを抱えたりしないか心配だった。

SUNくんを迎えた日、そうくんはSUNくんのにおいを一通り嗅ぎ、その後はいつもと変わらずゆったりと過ごしていた。ふくくんは、ずっとSUNくんの側を離れず、とても心配そうに見ていた。2時間おきに授乳する時も排泄の世話をする時も片時も離れず、SUNくんが鳴くとSさんを呼びに来た。

Sさんは、そうくんとふくくんの姿を見て「これならSUNが我が家の家族になっても大丈夫だ!」と確信した。

■母猫のもとに返したほうがいい?

SUNくんは、保護された時、まだへその緒がついていた。

「本当にびっくりするほど小さくて、少しでも力を入れたら壊れてしまいそうなほどでした。目も耳も開いておらず、ここまで小さな子猫を見たことがなかったので、扱い方も世話の仕方も分からず、不安もありました。インターネットで調べたところ、とにかく保温することが大事と書いてあったので、ホッカイロや湯たんぽで常に温かい状態を保ちました」

保護当日、一度は飼うと決めたものの、「生まれたばかりの子猫とはぐれてしまって、母猫はどう思っているのだろう」と、Sさんは心配になった。

「子猫を探しているのではないか。子猫だって母猫のおっぱいで育ててもらうのが一番幸せなのではないか。そうした気持ちが拭いきれませんでした」

その日の夜、Sさんと家族は、幼稚園の周りに母猫がいないか子猫を連れて探しに行った。1時間ほど探し、そろそろあきらめようと思っていた時、倉庫裏に1匹の猫がいた。暗くてよく見えなかったが、直感で母猫だ!と思った。Sさんの子供たちは、「子猫と別れたくない」と泣きじゃくった。子どもたちを説得し、子猫を母猫の近くに置いて、離れた場所から見守った。母猫は、一度子猫の匂いを嗅ぐと、さっとどこかへ行ってしまい、その後戻ってくることはなかった。

「子猫に人間の匂いがついてしまったため母猫が警戒したのか。もともと育児放棄をしたのか。原因は分かりませんが、その光景を見て私は、SUNを飼う決心をしました」

■悪戦苦闘、辛いとは思わなかった

Sさんは、ネットの情報や獣医師のアドバイスを参考に、2時間おきに授乳し、排泄の世話をした。最初は小さすぎて、哺乳瓶の乳首をくわえるのが難しく、苦戦した。上手に飲めなければスポイトを用意しようと思ったが、一度くわえると上手に飲んでくれた。

「最初の頃は、ちゃんと息をいているかどうか本当に心配で、ほとんど寝ることができませんでした。でも、小さな身体で一生懸命生きようとしている姿に、本当にたくさんパワーをもらいました。少し体重が増えるだけで涙が出るほど嬉しくて、辛いと思ったことは一度もありませんでした」

SUNくんはだんだん大きな声で鳴くようになり、立てるようになり、目が開き、爪が伸び、耳が開いた。

「ひとつひとつ成長をこの目で見るたびに、貴重な経験をさせてもらっているなあと、幸せを感じました」

数日後、SUNくんの左足の付け根部分(左腰の辺り)が腫れていることに気付き、急いで病院に連れて行き先生に診てもらった。しばらく治療が続き、「もしかしたら上手に歩けないかもしれない」と言われた時は少しショックを受けた。しかし、意外にも「もしそうだとしても、それはSUNの個性だ!歩けないなら私が手伝えばいいだけ!」とすんなり受け入れることができたという。

「私にできることは何でもしてあげたい、ただそれだけでした」

SUNくんは、最初は左足がすぐに折れ曲がってしまい、よく転んでいたが、成長するにつれてちゃんと歩けるようになった。

「今でも座ると左足が少し横に出てしまってお姉さん座りみたいになってしまうのですが、その座り方がとっても可愛くて。SUNの素敵な個性です」

■何を慌てているの?

SUNくんは、まさに末っ子気質。家族みんなに甘やかされて育っているので、わがままで自由奔放なところがある。噛みついたかと思えばゴロゴロ甘えてきたり、構うと嫌がるのにSさんの姿が見えなくなると、すごく悲しそうな声で鳴いたりする。

大好きなおもちゃを投げると走って取りに行き、ちゃんとSさんのところまで持ってくる。2階の寝室でSさんが寝ていると、1階からおもちゃを持ってきて「遊ぼう」と言うこともある。

ある日、Sさんが買い物から帰ってくると、SUNくんの姿が見当たらないことがあった。名前を呼んでも出てこない。どこを探しても見つからず、Sさんは、「どうしよう、どこに行ったんだろう」と心配した。SUNくんは、猫用ベッドで寝ていたふくくんの下にすっかり入り込んで寝ていた。Sさんの心配をよそに、SUNくんはすごく眠そうに「何を慌てているの?」と言いたげな顔をしていた。Sさんはホッとして、思わず笑ってしまったという。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

関連ニュース

    ライフ最新ニュース

    もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス