「いつか膝の上に乗ってほしい」 視力が悪い猫、人に警戒心が強いが…「尚更愛おしい」

ギンジロウくん(6歳・オス)は、野良の母猫が連れてきた子猫だった。見た目は可愛かったが、警戒心が強く、保護した後も激しく抵抗した。“狂暴”なので里親を募集できずにいたが、保護主の娘さんが飼うことになった

■実家に現れた親子猫

富山県に住む山田さんは、母親が捕獲した親子猫のうち子猫を飼うことになった。2015年2月頃、実家に出入りしていた猫にTNR(T=TRAP「つかまえる」N=NEUTER「不妊手術する」R=RETURN「元の場所に戻す」)しようと、エサをあげていた。しかし、その猫はかなり警戒心が強く保護できないまま時が過ぎ、9月下旬頃のある日、子猫4匹を連れて庭に現れた。

山田さんの母親は、保護する方法をネットで調べ、ボランティア団体の捕獲器を借り、10日間ほどかけて捕獲器に慣れさせ、10月30日、ようやく親子5匹を保護した。子猫3匹と母猫は比較的すんなりと保護できたが、子猫1匹が警戒してなかなか捕獲器に入らなかったという。その子が、後に山田さんが引き取ることになるギンジロウくんだった。

保護した直後は、山田さんの母親が勤務していた会社の物置にしていた空き家で4匹の子猫を飼い、母親と同僚が世話をした。人慣れをさせて、2匹は実家で飼い、1匹は里親のもとに行った。ギンジロウくんだけはまったく人慣れせず、そこで4か月ほど暮らした。野良時代に見た印象は、白くてフワフワの可愛い子猫という感じで、いつも母猫にくっついているようだった。しかし、かなり凶暴で威嚇しながら飛びかかってくるので、ごはんをあげるのもトイレ掃除も本当に大変だったという。

■猫は大丈夫だが、人間は嫌い

人のいない間は人間の声に怯えないように、ラジオを聴かせた。同僚のが献身的に世話をしたため、やがて飛びかかってくることも威嚇することもなくなった。山田さんの家にはすでに2匹の先住猫がいたので、3匹を1人で世話をすることはできないと思っていたが、里親が見つからなかったため引き取ることにした。最初に付けた名前は「シモン」くんだった。白い猫だったので「シモン」が似合っていたが、連れて帰る頃には、少し銀色っぽく見えたのと高貴な感じが似合わないようにみえたので、ギンジロウくんという名前にした。

ただ、先住猫たちとの相性はよく、すぐに仲良くなった。人間はまったくダメで、山田さんが近くを通るだけで逃げた。それでも3匹でべったり仲良くなったので、ほっと胸をなでおろした。

■目が見えにくい恐怖で不安だった

警戒心が強く人慣れしないので、距離をとりながら暮らしていたある日、遊びに来ていた山田さんの母親が、ギンジロウくんの目の眼震(眼球がけいれんしたように動いたり揺れたりすること)に気づいた。ガラス戸にぶつかったり、おもちゃへの反応がいまいちだったり、そこで初めて視力が悪いことが分かった。

「子猫時代、母猫から離れなかったのも、かなり凶暴だったのも、怖くて不安だったのかと思うと愛おしくなりました。徐々にですが、少しずつ触らせてくれるようになり、3年ほど経った頃から甘えることもできるようになりました。本当は甘えん坊なのだと思います」

はじめはブラッシングも嫌いだったが、今はブラッシングの気持ちよさを覚え、催促することもある。爪切りは今でも大嫌いで、爪切りを持つ気配だけで逃げていく。爪切りをするとしばらく距離を取る。

「今まで飼っていた子たちが全員甘えん坊だったので、猫は人懐っこいのが当たり前と思っていましたが、懐かないギンジロウと暮らすうちに、懐かない猫の魅力にも気づきました。どんなにかわいくても無理強いしないことが大切です。みんな、個性があってかわいいです。特に、懐かない子は愛情表現が下手なので、尚更愛おしいです」

時間はかかるし、この先もどうなるか分からない。しかし、山田さんは、いつかギンジロウくんが膝に乗ってくれる日を夢見ている。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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